「最低賃金改定は消費の回復につながらない」半数以上の企業が回答――帝国データバンク調査で判明

写真拡大

◆最低賃金は過去最大の上げ幅

 10月1日から各都道府県で最低賃金が改正されている。これまで全国平均798円だった最低賃金が823円にまで上昇し、全国で最低賃金がもっとも高い東京都も平均907円から932円にまで見直されることが決まった。

 先月26日の所信表明で、安倍首相も「本年中に最低賃金を1000円まで引き上げることを目指し、社会全体の所得の底上げを図ります」と述べた、この政策。最低賃金が時給で決まるようになった’02年度以降、「過去最大の上げ幅」と言われ、これで全国すべての都道府県の最低賃金が700円を上回ったことになる。

 その結果、収入増加による消費活性化などが期待される一方で、特に中小企業においては、賃金引き上げによる人件費の膨らみ、企業収益の悪化、人手不足などの不安視されている。

 実際のところ、各企業で最低賃金の見直しはどの程度進んでいるのか。民間の調査会社である「帝国データバンク」は先月下旬、「最低賃金の引き上げに対する、各企業の見解」について調査を実施。今回の改定を受けて、給与体系を「見直した(検討している)」と答えた企業は35%に上ることが明らかとなった(※調査対象=2万3710社、有効回答企業=1万292社)

◆小売業界を中心に「見直し」に積極的

 まず給与体系を「見直した(検討している)」と回答した企業について、業界別に見ると、もっとも多いのが「小売」業界の 48.9%、続いて「運輸・倉庫」が43.4%、「製造」が41.0%と、それぞれ4割を超えた。帝国データバンクは、「非正社員の雇用割合が高く、最低賃金の引き上げが直接的に給与体系の見直しにつながっている様子がうかがえる」と、その背景を分析。一方で、「金融」業界が1割台の18.1%にとどまるなど、業界間で大きく対応は異なっていた。

 また、従業員を実際に採用するときの最も低い時給について尋ねたところ、全体平均で約958円と、改定後の最低賃金である823円を135円上回った。

◆改定前後の差額が大きいのは西日本

 都道府県別の比較では、改定された最低賃金と採用時の平均時給の差額が最大だったのは「東京都」で165円。しかし、以下に「島根県」の162円、「沖縄県」の161円、「鹿児島県」の159円、「福岡県」の156円と、西日本が上位を占めた。

 また、今回の引き上げ額については、「妥当」と考える企業が40.5%で最多。11.6%の「高い」、18.1%の「低い」を大きく上回り、総じて今回の最低賃金の引き上げが企業側に受け入れられている様子が伺えた。

◆2割超の企業が引き上げは「マイナス」

 自社の業績に対する影響では「影響はない」が57.9%で最多。他方で「プラスの影響がある」は1.7%にとどまった一方、「マイナスの影響がある」は21.7%と2割を超えるなど、最低賃金引き上げが自社の業績に与える影響を懸念する声が多く挙がった。この傾向は、引き上げ額が「高い」と感じている企業ほど顕著で、とりわけ「飲食店」や「家具類小売」「飲食料品小売」ではっきりと表れた。

 そして、今回の最低賃金の引き上げは今後の消費回復に効果があるかと、尋ねたところ、「ある」と回答した企業は10.2%だった。一方で「ない」は53.7%と半数を超え、最低賃金の引き上げが消費の回復に結びつくかについては懐疑的な企業が目立った。主な声は以下の通り。

「家計の収支構造が変化しているなか、一概に所得を増やしたからといって消費活動が好転するとは言えない」(自動車車体・付随車製造、北海道)

「非正規雇用者の増加に歯止めがかからない状況で、最低賃金の引き上げだけで今後の消費回復に効果があるとは考えられない。根本的な雇用対策、生涯賃金レベルが改善されなければ意味がない」(農業協同組合、大阪府)