政策金利の予想水準を下方修正した9月の米国FOMC(連邦公開市場委員会)。緩和環境の長期化を確認した金市場では1300ドル方向への下押し圧力は後退することになった。むしろ年末に向けた上値追いの可能性を筆者は指摘する。

FOMCが金利見通しを切り下げる一方で上値追い気配の金価格

英国のEU(欧州連合)離脱確定後の騒乱相場の中で、1300ドル台に本格的に突入したNY金先物価格。その後、米国の利上げ観測は強弱を繰り返す。さらに先物市場では、ファンドの過去最大規模への買い建ての増加(価格は上昇)と、その後の売り戻しによる調整局面を経る中で、1300ドル大台を維持してきた。総じて底堅い展開は、10 月号で指摘したように、今回の上昇相場が特定の材料に反応したものでなく、米国を中心に主要中央銀行の金融政策や世界的に広がる政治リスクなどを背景にしたマクロ型上昇相場ゆえのこと。したがって息の長い相場へとつながっている。

そのマクロ環境の中での金市場への影響という点では、やはり米国FRB(連邦準備制度理事会)の政策スタンスがある。9月のFOMCでも利上げは見送られた。6週に1度の間隔で開かれるFOMCの中でも、3月、6月、9月、12 月は参加メンバー全員による無記名の経済予測が公表される特別会合である。金価格の先行きを見るうえでの今回のポイントは、利上げの有無よりも、むしろこの予測の内容だった。とりわけ将来の金利水準をどのように捉えているかがポイントになる。

実は、このところ発表ごとにその予測水準が切り下げられている実態がある。米ドル金利の上昇が悪材料となる金にとっては好都合というわけだ。金利水準の下方修正は、そのまま利上げ回数の減少を意味する。今回も下方修正された。前回6月との比較で利上げ回数は年内2回から1回に、2017年も従来の3〜4回から、2〜3回に引き下げられた。年内に利上げを見込まないというメンバーも3名登場して話題を呼んだ。

総じて言うならば、FRBは成長率自体にこの先もスピード感が出ないことを懸念し始めている。9月の声明文では年内の利上げを強く示唆したが、仮に引き上げられたとしてもその先、つまり来年は当面見合わせるということになりそうだ。したがって 12 月に引き上げられるなら、当面は犧猯曾仗圓し〞ということで、金市場はむしろ動きやすくなると思われる。懸念されるのは、過去最高値圏にあるニューヨーク株式市場株と過去最低利回り圏にある米国債だろう。いざ利上げに動いたとなると、値動きが大きく波乱は避けられそうにない。では年内の利上げができなかったら、どうなるのか。来年の利上げはさらに難しくなることが予想される中で、 ニューヨーク金先物価格は年末に年初来高値を更新するのではないかと推測する。

マーケット・ストラテジィ・ インスティチュート代表
亀井幸一郎
KOICHIRO KAMEI

中央大学法学部卒業。山一證券に勤務後、日本初のFP会社であるMMI、金の国際広報・調査機関である WGCを経て独立し、2002年より現職。市場分析、執筆・講演など幅広く活躍中。