自力ではやめられない「覚醒剤地獄」(写真はイメージ)

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【ねほりんぱほりん】(Eテレ)2016年10月19日(水)
「元薬物中毒者」

訳ありで「顔出しNG」のゲストがブタの人形に、進行役のお笑い芸人・山里亮太とタレントのYOUがモグラの人形に、それぞれ扮するトーク番組。今回登場するのは「元薬物中毒者」のエリさん(仮名)だ。

現在29歳で9歳の子どもがひとり。過去の薬物遍歴はすさまじい。

「やせる」と言われて軽いノリで手を出した

エリさんは13歳で初めてマリファナを吸った。先輩に「米国のタバコ」と言われ、すっかり信じたという。「断ったら仲間から外される」と、手に取った。本当はマリファナだと告げられたのは、吸った後だった。厳しい親に隠れて「悪いことをやっている」という意識はあったと話す。

覚醒剤に手を出したきっかけは、些細なことだった。アルバイト先の友人に「やせるから」と勧められた。エリさん曰く「軽いノリ」で、「2、3日で5キロは簡単に体重が減る」と聞かされ、魅力に感じてしまった。

今日では、薬物は簡単に手に入るとエリさん。「クラブで、手で合図してくる」「タバコのフィルターに(覚醒剤を)仕込んで、吸わせる」といった手口もあるそうだ。

番組では、エリさん以外の元薬物中毒者にも話を聞いた。「仕事上のイヤなことを忘れたい」「勧められて...断ると相手に悪いし」「学校で『やってはいけない』と言われて逆に好奇心が高まった」といった理由で始めていた。

エリさんが覚醒剤を使ったときの体験が、強烈だ。例えば、カラオケボックスに2日以上滞在し続けた。延長を問う電話が受付から部屋にかかってきているはずだが、返事をしたことすら本人が気づかない。会計の際、あまりの高額に驚いたという。大手ディスカウントストアでも、昼から翌朝5時の閉店時までずっと居続けた。商品をひとつひとつ、手に取っては見ていたそうだ。こうした「異常行動」が、薬物中毒者の特徴だ。エリさん以外にも、「食べ物がおいしく感じて、ピザを際限なく食べ続けた」「見るものが何でも面白く、道路を走る自動車を見て爆笑していた」という証言があった。

子どもすら言い訳の材料にする

だが薬物を続けるうちに、体にはさまざまな悪影響が出る。築地市場で7年働いてきた男性は、ある日包丁を持つ手が震え出し、「事実上のクビ」を宣告された。幻覚や幻聴に悩まされる人、禁断症状で、薬を求めて延々と外を走り回る人と、正常な状態ではないことが分かる。

常習性も恐ろしい。

エリさん「1回吸ったら、多分やめられない」

初めて覚醒剤を吸った瞬間が「人生で最もいい場面」と感じるほどの快感なのだと話す。だから、子どもがいるのに自制できなかったと明かす。しかも当時、離婚後に交際していた男性が薬物の「売人」だったため、自宅には薬物があふれていた。「子どもが泣いてもイライラしないように吸おう」「子どもの世話のため、覚醒剤を使えば寝ないで済む」と、子どもすら言い訳の材料にしていた。薬の効果が切れると、「インフルエンザの一番キツいときの感じ」、つまり高熱が出て布団から起き上がれないほど体調不良に陥る。そこから脱しようとして、また覚醒剤使用を繰り返す。そのうち、子どもを託児所に預けたまま忘れたり、家事がおろそかになったりと生活に支障が出た。

そして23歳の時、ついに逮捕された。自宅に警察官がやって来た際、エリさんは意外にも「ありがとう」「助かった」という気持ちになったという。自力ではやめられない「覚醒剤地獄」から、ようやく抜け出せると感じたからだ。

その後、薬物依存のリハビリ施設「ダルク」で2年間過ごし、現在は社会復帰して販売員として働いている。ダルクには、エリさんと同じように薬物中毒だった人が集まっていた。そこでは「なぜ薬物に手を出したのか」といったテーマで、体験談を話し合ったという。お互いが自らの話を口にすることで、気持ちが楽になっていくそうだ。

さらにエリさんは、ダルクでボランティアをしていた男性と出会い、交際に発展した。ダルクを出て社会に戻るうえで、この男性が大きな心の支えとなった。何より「二度と薬物に手を出さない」と固く心に誓えたのも、薬物の誘惑にブレーキをかけられるのも、男性の存在のおかげだという。