■2016−2017シーズン展望
@イースタン・カンファレンス編

 10月25日(日本時間26日)、2016−2017シーズンのNBAがいよいよ開幕する。昨季は、ゴールデンステート・ウォリアーズに1勝3敗と追い込まれたクリーブランド・キャバリアーズが奇跡の逆転劇でNBAファイナルを制した。はたして、初優勝を遂げたキャブスの連覇はあるのか――。まずはイースタン・カンファレンスの戦力から見ていきたい。


 NBAファイナルの第7戦。シーズン史上最高勝率を叩き出したウォリアーズに93対89で勝利した瞬間、それはキャブスがチーム創設46年目にして初優勝を遂げた瞬間であり、2014年に故郷のクリーブランドに復帰したレブロン・ジェームズ(SF)が、「戻ってきたのは、オハイオ州に優勝をもたらすためだ」と、地元ファンと交わした約束を果たした瞬間でもあった。地元ファンの歓喜の大きさは、優勝パレードに130万人が詰め掛けたことが物語っている。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 レブロンは自身3つ目のチャンピオンズリングを手にし、オフにはナイキと10億ドル(約1037億円)を超えると言われる生涯スポンサー契約も結んだ。今年12月で32歳となるが、あと数年はトップフォームを維持するだろう。今季もカイリー・アービング(PG)やケビン・ラブ(PF)が健在で、さらにJ・R・スミス(SG)との再契約にも成功。昨季のスターターがそのまま残り、イースタン不動の大本命であることは揺るがない。

 ただ、栄光も名誉も、そして富をも手に入れたレブロンは、はたしてモチベーションを維持できるのだろうか? だが、その心配は無用のようだ。報道陣にレブロンはこう答えている。

「モチベーションは、ある幽霊を追いかけること。その幽霊は、かつてシカゴでプレーしていた」

 もちろん、その幽霊の名はマイケル・ジョーダン。つまり、レブロンはジョーダンの優勝回数「6度」を目標としている。少なくとも、あと3度優勝するまでモチベーションに陰りは見えないだろう。

 キャブスは今オフ、ベテランシューターのマイク・ダンリービー(SG)を獲得。ティモフェイ・モズコフ(C/ロサンゼルス・レイカーズ)の放出でインサイドの高さに多少の不安を残すが、それでも戦力はイースタンで他を圧倒している。視線は早くも、東を跳び越え西へ――。NBAファイナルで対戦する可能性の高いウォリアーズやサンアントニオ・スパーズに向いているだろう。

 キャブスを追うのは、昨季球団史上最多となるシーズン56勝を挙げてイースタン2位となったトロント・ラプターズだ。リオ五輪でも活躍したデマー・デローザン(SG)とカイル・ロウリー(PG)の「2枚看板」がチームを牽引し、昨季はケガでフル稼働できなかったヨナス・ヴァランチューナス(C)、デマール・キャロル(SF)がシーズンを通して働けば、56勝以上の成績も見込めるだろう。それでも、「キャブスを倒せるか?」と聞かれれば、パンチ力不足は否めないが......。

 昨季イースタン3位のマイアミ・ヒートは、13年間在籍した生え抜きのドウェイン・ウェイド(SG/シカゴ・ブルズ)を放出。さらに9月、血栓の見つかったクリス・ボッシュ(PF)がメディカルチェックをパスできず、事実上の引退状態となっている。チームは再建期に突入しており、今季の苦戦は必至だ。まずは、新エースとなるハッサン・ホワイトサイド(C)がどれくらいの成績を残すかに注目したい。

 昨季イースタン4位のアトランタ・ホークスは、アル・ホーフォード(C/ボストン・セルティックス)を失った代わりに、ヒューストン・ロケッツからドワイト・ハワード(C)を獲得した。オールラウンダーのホーフォードに対し、インサイドに特化するハワード。まったくタイプの異なるビッグマンの加入により、これまでの戦術を一変させる必要があり、期待よりも不安の声が大きい。今季の上位争いは厳しそうだ。

 キャブス以外の昨季上位チームが足踏みするなか、今季大きく成績を伸ばすだろうとの評判が高いのが、ボストン・セルティックス(昨季イースタン5位)とミルウォーキー・バックス(同12位)の2チームだ。

 セルティックスは、ホーフォードの加入でインサイドの核ができた。アウトサイドにはオールスター選手にまで成長した175cmの小兵アイザイア・トーマス(PG)がおり、今年のドラフト全体3位で入団したジェイレン・ブラウン(SF)はプレシーズンゲームでふたケタ得点を連発する活躍を見せている。昨季の48勝を大きく上回ると予想されており、台風の目となりそうな存在だ。

 ジェイソン・キッドHCが率いて3年目となるバックスは、211cmながらポイントガードもできる21歳のヤニス・アデクトンボ(SF)、2014年のドラフト全体2位で獲得した21歳のジャバリ・パーカー(PF)、216cmを誇る19歳の新人ソン・メイカー(PF)と、若き才能が集結している。

 9月にエースのクリス・ミドルトン(SG)が左太ももの筋断裂で全治半年と診断されたのは痛いが、「若手のプレイングタイムを増やせる」と前向きに考えることもできる。ミドルトンがレギュラーシーズン中に復帰できる可能性は高く、プレーオフも視野に入れていいだろう。昨季、ウォリアーズの開幕からの連勝を24で止めたのがバックス。今季はプレーオフでの大物食いを予感させる。

 一方、状況次第では大勝も大敗もあり得るのが、シカゴ・ブルズ(昨季イースタン9位)とニューヨーク・ニックス(同13位)ではないだろうか。

 ブルズはデリック・ローズ(PG/ニューヨーク・ニックス)を放出し、完全にジミー・バトラー(SG)を中心としたチームに方向転換。オフにドウェイン・ウェイド(SG)とレイジョン・ロンド(PG/前サクラメント・キングス)、さらに開幕直前になってバックスから2014年の新人王に輝いたマイケル・カーター=ウィリアムス(PG)も獲得した。

 アウトサイドに人材が偏っているものの、その爆発力はイースタンNo.1。我の強いロンドが「このチームはバトラーのチーム。次にウェイド、3番目に俺」と発言しているが、実際に彼がコートでどう振る舞うかによっては、躍進も凋落もどちらもあり得る。

 3季連続でプレーオフ進出を逃しているニックスは、このオフにチームの大改革を行なった。デリック・ローズ(PG)、ジョアキム・ノア(C/前シカゴ・ブルズ)、ブランドン・ジェニングス(PG/前オーランド・マジック)、コートニー・リー(SG/前シャーロット・ホーネッツ)らビッグネームを次々と獲得している。

 このメンツにエースのカーメロ・アンソニー(SF)、昨季ルーキーシーズンながらリーグに衝撃を与えたクリスタプス・ポルジンギス(PF)が並ぶロスターは、キャブスと比べても見劣りしない。ジェフ・ホーナセックHCの手腕次第では、いきなりイースタンの頂点に立つ可能性すら見えてくる。とはいえ、ポルジンギス以外は絶頂期を過ぎた選手ばかり。看板倒れに終わる可能性も十分にある。

 最後に、注目すべき選手にも触れておきたい。今季もチームの成績は芳(かんば)しくないだろうが、フィラデルフィア・76ersのジョエル・エンビード(C)とベン・シモンズ(SF)の2選手は、ぜひ注視してほしい。

 エンビートは2014年にドラフト全体3位で指名されながら、ケガのため公式戦の出場が一度もなかった選手。今季はプレシーズンゲームでも好調を維持し、過去にスパーズでアシスタントコーチだった経験のあるブレット・ブラウンHCに、「ティム・ダンカンに劣らぬポテンシャルの持ち主」と言わしめる22歳だ。いきなり大ブレイクしてもおかしくない。

 シモンズは今年のドラフト全体1位指名選手。マジック・ジョンソンに「レブロン以来のオールラウンダー」と評され、実際にサマーリーグではルーキーとは思えないプレーを披露している。特に視野の広いアシストパスは、期待を抱かせるに十分だ。残念ながら9月に右足を骨折して全治3ヶ月と診断されたが、年明けにはコートに戻って新人王争いに加わってくるだろう。

 イースタン・カンファレンスは、今季もキャブスが圧勝してしまうのか。それに待ったをかけるのは、セルティックス、バックス、もしくは......。多くの期待を膨らませながら、2016−2017シーズンのNBAが開幕する。

水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro