トランプの新ホテル、名称はトヨタが捨てた「サイオン」に ブランド崩壊の回避策か

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大失敗に終わりそうな米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプの選挙活動が直面する現実は、ある犠牲者を生み出した──トランプの「ブランド」だ。不動産王トランプはこれまでの方針を転換、新たに展開するホテルには、自身の名を付けないことに決めた。

トランプがミレニアル世代を主なターゲット層としてオープンする新たなホテルは、「サイオン(Scion、名門の子孫、の意味)」と命名された。トヨタが「若者向け」ブランドとして立ち上げ、先ごろ廃止を発表したラインと同じ名前だ。

ブランド化やブランド再構築は、戦略として理にかなったものであり、名称の変更も悪い試みではない。現在70歳のトランプが事業を息子や義理の息子たち徐々に引き継がせていることをみても、「サイオン」という名は納得がいくものでもある。

また、この「サイオン」という名称の使用については、トヨタがブランドの廃止を決めていなかったとしても、商標権侵害の問題にはなっていなかったと考えられる。異なる分野で事業を展開する限り、複数の企業が同じ商標を使うことは認められており、GMの高級車ブランド「キャデラック」とドッグフードの「キャデラック」が共存できるのはそのためだ。今後、「トランプ・ドッグフード」が登場することはあるだろうか。

トランプ・ブランドにはすでに、失敗に終わった「トランプ・ウォッカ」に「トランプ・ステーキ」、ボトル入りの天然水「トランプ・ウォーター」などがある。その他にも、自らの名を冠した大学の運営、衣料品の販売、雑誌の出版もある。

選挙戦はブランドに大打撃

トランプ・ブランドといえばこれまで、派手で華美な印象だった。だが、トランプは11月の大統領選で、現代政治史において例がないほどの大敗を喫するかもしれない。家族や給料をもらっているスタッフを除く誰もが、トランプは自ら高く評価する「勝者」の地位から、「最大の負け犬」になることを予想している。

トランプの事業を支援してきた顧問たちさえも、有害な政治活動で米社会を大きく二極化させた結果、トランプ・ブランドのホテルや住宅は大幅に人気が落ちるとみているようだ。そう考えないのは、トランプの忠実な信奉者たちだけだろう。

そのトランプの信奉者たちの約85%は、大学教育を受けていない人たちだとされる。トランプが妥当だと考えるホテルやコンドミニアムを支えられるだけの貯金を持った人たちがその多くを占めているのかどうかは、明らかではない。

あるマーケティング・コンサルタントによると、「トランプに利益をもたらしているのが不動産関連の事業のみであることは、間違いなさそうだ」という。一方で、ワシントンにオープンしたトランプの新しいホテルのホテル客室稼働率は、軟調だと伝えられている。米ホテル・旅行情報サービスのヒップモンク(Hipmunk)によれば、トランプ・ホテルの予約率は今年上半期、急落した。

トランプ・テレビに賭ける?

こうした中、放送局「トランプ・テレビ」の創設が注目を集めている。前出のマーケティング・コンサルタントは、そうした活動を続けるのであれば、トランプは支持者らと共に一層力を増していくだろうと指摘する。だが同時に、「トランプ・ブランド」のその他の事業は大統領選に向けた政治活動と予想される選挙での惨敗の後、ほぼ間違いなく苦しい状況に直面することになるとの見方だ。

選挙後に開設されるという「トランプ・テレビ」のネットワークに、広告を出そうと考える大手企業は多くはないだろう。そして、トランプの信奉者の中に、富裕層は多くはないと考えられる。