フードジャーナリストのはんつ遠藤さん

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今の日本でグルメを語るなら、ご当地グルメの存在はもはや外せない。ハイクラスな有名店の味とは別の意味で、ご当地グルメには日本人のハートを鷲掴みにする魅力がぎゅっと詰まっている。その魅力の秘密と最新トレンドについて、フードジャーナリストのはんつ遠藤さんに解説してもらった。

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遠藤さんはご当地グルメを取り上げた著作を数多く手掛け、全国各地のフードテーマパークの監修などにも携わっている。

「最初にズバッと言ってしまうと、ご当地グルメは今ものすごく注目を集めています」と遠藤さん。その背景をこう分析する。

「バブル景気の時代には、海外旅行へ行きたいという人は多かったですよね。でも、日本が不況になったせいもあって、だんだんと人々の目が国内旅行に向いていった。おそらく十数年前から徐々に海外旅行から国内旅行へとシフトしていったんじゃないかなと思います。そして国内を旅した人たちは、みんな気づいたわけです。日本各地にはまだまだ知らない、美味しいものがたくさんあるじゃないか、と」

十数年前という時期には、ご当地グルメを通じたまちおこしイベント「B-1グランプリ」がスタートしている(第1回開催は2006年)。

「ご当地グルメに人々が感心を寄せるようになったのは、B-1グランプリの影響も大きかったと思います。B-1グランプリからは静岡県の富士宮やきそばや秋田県の横手やきそばなどの“スター”も生まれました。こういう流れを経て2016年の現在、いよいよ成熟期に入ったご当地グルメは今まで以上に注目も期待も集めているんです」

数あるご当地グルメの中でも、遠藤さんが現在推しているのはご当地焼き鳥。東京・大手町に3年前にオープンしたご当地焼き鳥のテーマパーク「全や連総本店 TOKYO」の名誉館長も務めている。

「そもそもの背景として、焼肉を牽引役とする肉ブームがあります。近年だと、エイジングビーフや肉フェスなどでまだまだ肉ブームは盛り上がりを見せています。そして、今は焼き鳥ブームが起こりつつある。焼き鳥は土地ごとのバリエーションが想像以上に豊かなんです。北海道だと1本の串でいろんな部位を味わえたり、山口県だとガーリックパウダーが味の決め手になっていたり。ご当地焼き鳥は全国で30種類前後はあると思います」

調理法やトッピングなどのバラエティ豊かな創意工夫もご当地グルメの楽しみのひとつだが、その土地で育つ食材の豊かさも味のクオリティを決める重要な要素だ。

「食材の面からご当地焼き鳥をピックアップすると、秋田県の比内地鶏はやはりトップクラス。日本三大地鶏のひとつで、しかもダントツの日本一という印象を僕は持っています。東京の専門店で比内地鶏の焼き鳥を食べると1串500円というのもざら。でもそれだけの価値がある美味しさです」

鳥に限らず、肉ブームにおいても秋田県には注目すべき食材があるという。

「最近、“秋田牛”というブランドで売り出し始めましたが、味のレベルが高くて、しかも価格はお得感があるのが魅力です」

質の高いご当地グルメが生まれる土地には、いくつか異なるパターンがあるのかもしれない。比内地鶏のように“地力”に勝る食材を擁する土地は、その食材の持つ良さを活かしたご当地グルメを生み出していく。強い食材が見当たらない土地は、アイデアや工夫で美味しさを追求していく。

「ホルモンやモツなど、もともとは捨てていたものを再利用した料理もブームになりましたね。ご当地グルメとして有名な甲府鳥もつ煮は、蕎麦屋の職人が鶏のモツを『もったいない。何か安くてうまいものはできないか』と考案したのものです。これも工夫によって味を追求した好例ですね」

もうひとつ、“地域の繋がり”もご当地グルメの味を左右する、と言ったら意外に思われるだろうか。

「ご当地グルメというものは、必ずと言っていいほど元祖と呼ばれる人がいます。後々になってご当地グルメとしてブームを巻き起こすかもしれない素晴らしい料理も、初めは元祖の人しか作ったことがない。つまりほかの人はレシピを知らないわけです」

その時点で元祖の人物がレシピを独り占めにした場合、どんなにおいしくてもその料理はご当地グルメにはなり得ない。ご当地グルメとして全国的に広がっていくためには、その土地全体が盛り上がりを見せることが必要だし、そのためにはレシピが土地全体に広まっていくことが必要だからだ。

「元祖の人がほかの店にもレシピを教えたり、教わった店主がもう少し手を加えたり、そういうことを積み重ねてご当地グルメとしての評判が確立されていき、味も高められていくんです。つまり、その土地のコミュニティがしっかりとした繋がりや信頼関係を築いていないと、魅力的なご当地グルメは育たないかもしれませんね」【東京ウォーカー】