全米を仰天させたトランプ夫人のブラウス。ヒラリーvsメラニア夫人のファッション対決

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◆メラニア夫人の仰天ファッション

 熾烈を極めた米国大統領選挙もいよいよ大詰めとなり、投票日まで2週間余を残すのみとなっています。ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプ両候補の直接対決も、10月19日の第3回テレビ討論会をもって終了し、選挙戦の最大の山場は過ぎました。

 10月初頭にトランプのわいせつ発言が流出してからというものの、トランプ陣営は一気に旗色が悪くなり、特に女性層からの反発が強まっています。そんな中、10月9日に行われた第2回テレビ討論会で、観客席に座るメラニア・トランプ夫人の服装が「悪い冗談にしか見えない」と物議をかもしました。

 メラニア夫人が着用していた、首元でリボンを結ぶスタイルのブラウスは、俗語で「pussy-bow blouse」といいます。この「pussy」という言葉には「女性器」の意味があり、「スターになれば何でもできる。美女のpussyを掴むことも」と豪語したトランプ候補の爆弾発言を思わせずにはいられませんでした。

 メラニア夫人が、特別な意図をもって問題のブラウスを選んだわけではないでしょう。しかしどんな些細な行動であっても、批評を免れないのが政治の世界です。男性政治家の服装が関心を集めることは稀ですが、女性政治家のファッションが話題になるのは日常茶飯事です。それゆえ、服装にメッセージを込める女性政治家は少なくありません。例えば、ヒラリーの大学の先輩であるマデレーン・オルブライト国務長官は、外交の手段としてブローチを活用していました。友好的なムードを演出する際には花や蝶、悪い話を伝える日には獰猛な肉食動物などを胸元に飾り、「私のブローチから察しなさい(Read my pins)」と公言していたのは有名な話です。

◆パンツスーツに込められた意味

 女性政治家にとってのファッションの意義を熟知しているヒラリーは、服装にどんな意味を込めているのでしょうか。ファースト・レディ時代にはフェミニンな装いに身を包んでいたヒラリーですが、上院議員に就任して以降、機能的なパンツスーツ姿がトレードマークとなりました。ツイッターの自己紹介欄では「妻・母・祖母・女性と子どもの擁護者・大統領夫人・上院議員・国務長官・2016年大統領候補」などの肩書きに「パンツスーツ愛好家(pantsuit aficionado)」と加える茶目っ気を見せています。

 英語には「主導権を握る」という意味の「wear the pants(ズボンを履く)」という言い回しがあります。欧米社会は伝統的に「ズボンを履く人」、すなわち男性が支配していたことから生まれた慣用句です。ヒラリーは文字通り「ズボンを履く人」となったことで、「政治家の妻」から「政治家」へと転身したことを印象づけました。

 ヒラリーの生まれた1940年代の米国では、まだ女性のズボン着用はカジュアルな場面に限られていました。ヒラリーが進学したウェルズリー女子大学でも、「改まった席ではスカートを着用すること」という決まりがありました。この「スカート・ルール」を1969年に廃止させたのが、当時の学生自治会長だったヒラリーです。また米国上院議会では、1993年まで女性議員のスカート着用が義務付けられていました。ヒラリーのパンツスーツ姿には、こうした因習を打破する意図もあったのでしょう。

 いつも同じような服を着ていれば、ファッションを取り沙汰されることはなくなります。ヒラリーは常時パンツスーツを着用することで、外見よりも実務能力に関心を集めました。また日常的な選択肢の幅を狭めると、思考力の消耗を防ぐ効果も狙えます。オバマ大統領は「何を食べるか、何を着るかなどは自分で決めないんだ。他に決断を迫られる命題が山のようにあるからね」と語っています。アップル社を生んだスティーブ・ジョブスが常に黒セーターにジーンズ姿だったこと、Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグがグレーの無地Tシャツしか着ないことなども、同じ理由からでしょう。ヒラリーが制服のようにパンツスーツを着るのは、仕事の能率を上げるのに好都合なためかもしれません。