’01年10月の買いサインから’16年3月の売りサインまで、100万円の資金でシグナル通りの売買を行った利益合計は150万円。利益を上増しする複利運用であれば256万円。税金を支払った後でも利益合計が156万円となる

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方向性が見えにくい株式市場で、誰もが活用できる「売買シグナル」がある。月に1度の「街角景気」を儲けに繋げる方法を伝授!

 言わずもがなだが、株価の上げ下げを推測することは難しい。特に、政府、日銀による度重なる金融緩和にも反応の鈍くなった最近はことさらである。

「マクロ経済動向で株価の流れが読みづらければ、“街角景気”として知られる景気ウォッチャー調査に注目してはどうでしょうか」

 そう話すのは、自らも立ち上げに携わった三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉氏だ。

「日銀短観など、経営者や財務担当者を対象とした他の景気調査とは異なり、消費者に対する最前線で働く人の実感を集めた調査です。月末に回収した結果を翌月第6日営業日に公表するスピード発表で、リアルタイムに近い景況感を反映している点が特徴です」

◆コンビニ店員やタクシー運転手も

 調査に回答する景気ウォッチャーは、全国から2050人が選抜され、消費など家計動向を反映する人が7割、企業関連2割、雇用関連が1割で構成される。具体的にはデパートやコンビニの店員、飲食店や商店の店主、タクシー運転手、中小企業の従業員、大学の就職担当者など、消費や雇用の小さな変化を敏感に感じ取っている人々なのだ。

「企業業績が数字に反映されるのは売り上げや利益が増加してからですが、景気ウォッチャーなら『立ち止まって商品を手に取る人が増えた』といった売り上げが増える前段階のわずかな変化をいち早くキャッチできます」(宅森氏)

 街角景気をいち早く反映するこの調査を、投資に利用する「景気ウォッチャー投資法」を提唱するのが、エコノミストの野田聖二氏だ。野田氏はこう解説する。

「景気ウォッチャー調査は株価と連動する傾向が強く、先行することも多いので株式投資に十分活用できます。特に上昇から下落、あるいは下落から上昇に転じる『転換点』を予測する精度が高い」

 調査には景気の現状を示す「現状判断DI」と、見通しを示す「先行き判断DI」がある。いずれも50が中央値で、それを上回るほど景気は良く、下回るほど悪い。投資に活用する際に重要なのは、季節調整値の前月比だ。

「現状判断DIが前月より1.0以上改善し、先行き判断DIも改善したら買いサイン、逆に現状判断DIが1.0以上悪化し、先行きも悪化していたら売りです」

 あくまで転換点を判断するので、売りサインの後で初めて出た買いサインだけを採用し、逆も同様に考える。続けて同じ方向のサインが出た場合は見送りだ。

「投資対象は日本株に連動するETFです。元手100万円を’01年からこのサインに従って投資し続けた場合(20%税引き後利益を加えて再投資)、156万円(税引き後)の利益が出るという結果になりました。年平均利回りで換算すると10%を超える手堅い水準で、1か月に1度発表される指標をチェックすればいいだけなので、忙しい人でも簡単です」(野田氏)

 ただし、すべての相場で優位性があるわけではない。たとえば、日経平均が大底をつけた’09年から現在までの期間の場合、アベノミクスの恩恵で売買を一切せずに持ちっぱなしにしているほうが利益は大きくなっている。強い上昇相場なら必要ないわけだが、この投資法のすごいところはリーマンショックの大暴落を、丸ごと回避している点だ。

「リーマン以前から持ちっぱなしの場合、大きな含み損が出てしまいますが、景気ウォッチャー投資法なら’07年に株価が天井をつける3か月前に出た売りサインを最後に、約2年買いサインは出現せず、損失を免れています」(野田氏)

◆リーマンショックを回避し大底で投資再開も

 しかも、次の買いサインが点灯したのは株価が底に近い’09年1月という精度の高さだ。景気ウォッチャー投資法は長期的に下落する相場や横ばいトレンドでも、途中の変動を利益にできる可能性の高い投資だという。ただし、売買サインは年1〜2回しか点灯しないので、長く持ち続けられる資金で行うことが重要だ。