62歳のスウェーデン人であるマリア・グレッタさんは、ひょんなことからオンラインデートサイトにアカウントを持ったことがきっかけで、57歳のデンマーク人であるジョニーさんと知り合いました。数年前の離婚でトラウマを受けていたグレッタさんは、ジョニーさんとのメッセージのやり取りから恋に落ちるのですが、実は「デンマーク人のジョニー」という人物は実在せず、インターネット上でナイジェリアの手紙という手口を用いる24歳の詐欺師であったことが判明します。被害者であるグレッタさんはジョニーさんを罰するのではなく、アフリカのナイジェリアまで詐欺師本人に会いに行くという選択をとった話がBBCに綴られています。

I went to Nigeria to meet the man who scammed me - BBC News

http://www.bbc.com/news/world-africa-37632259

マリア・グレッタさんは芸術教師・画家・芸術療法士という肩書きを持つスウェーデン人の女性。ある日、グレッタさんの友人がおふざけでデートサイトにグレッタさんのプロフィールを作成したとのこと。多忙なグレッタさんはしばらくそのウェブサイトを見ていなかったそうですが、出来心で一度受信したメッセージを読んでみたところ、その中にデンマーク出身でイギリスの土木技巧会社に務め、出向でアメリカのサウスカロライナで働いており、マンチェスター大学に通う息子を持つ、ジョニー(仮名)と名乗る58歳の男性からのメッセージがありました。

なぜかジョニーさんの文面にひかれたグレッタさんは、メッセージで連絡を取り合うようになりました。ジョニーさんは次第に「一度会って直接あなたの目を見つめたい」などロマンチックな内容のメッセージを送るようになりましたが、グレッタさんは「あなたがどのように私について語ってくれても、実際に会うと幻滅するだけ。私はそれが怖いの」と返信し、実際に会うのは避けていました。ある程度の文通をこなしたのち、グレッタさんはジョニーさんからイギリスの電話番号で電話を受けたとのこと。



By Catero Revolution

ヨーロッパのさまざまな国で暮らした経験を持つグレッタさんは、ジョニーさんのおかしなアクセントの英語に気付いてジョニーさんに尋ねましたが、すぐにジョニーさんは話を切り替えます。その後、ジョニーさんはデンマークの実家を受け継ぐ予定があるものの、息子にその家を与えて自身はスウェーデンに移住することを考えている、という退職後の計画を語りました。この頃すでにグレッタさんはジョニーさんに会いたいと思うほどの好意を持っており、グレッタさんいわく「今まで出会った男性の中で最もロマンチックだった」と語っています。

3カ月間のメッセージのやり取りののち、2人はスウェーデンでデートすることに合意しました。しかし、ジョニーさんはデートの前にジョニーさん親子が仕事の面接のためナイジェリアへ行く必要があることをグレッタさんに告げました。グレッタさんはジョニーさんがロンドン・ヒースロー空港を出発するという電話を受けたのですが、数日後にジョニーさんから「ラゴス(ナイジェリアの都市)の病院にいる」という電話を受けることになりました。

ジョニーさんいわく、親子でラゴスを歩いていたところを強盗に襲われ、息子は頭を銃で撃たれて危篤状態だとのこと。ジョニーさんは「ハニー、もし息子が死んでしまったら私は耐えられないだろう。ここに息子を連れてきた自分を許すことができない。もし彼が死んでしまったら私も後を追うつもりだ」というメッセージと共に、治療を続けるためには1000ユーロ(約11万3000円)が必要なものの、自分の銀行の支店がアフリカになく、送金に時間がかかっているため、危篤状態にもかかわらず治療がストップしていることをグレッタさんに相談したわけです。

これを聞いたグレッタさんは「私はあれほど急いで銀行に行ったことはありません」と話し、2人の無事を願って1000ユーロを送金しました。しかし、送金後もジョニーさんは「合併症の併発によりもっと多くのお金が必要になった」などとさらなる送金を求めるようになり、グレッタさんは数千ユーロを送金したところで「何かがおかしい」と気づき、ジョニーさんとの連絡を絶ったそうです。

2人がメッセージのやり取りをやめて3週間がたった頃、グレッタさんはジョニーさんからの電話を受けました。この時ジョニーさんは「私はあなたが考えている人物ではない」と告白。グレッタさんは「すでに知っているわ」と述べ、ジョニーさんに本当の正体を教えるよう尋ねました。ジョニーさんは2年前に大学を卒業したばかりの24歳のナイジェリア人で、詐欺師グループの一員という正体を明かしたのです。



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ジョニーさんは自分のことを「あなたのような素敵な女性を傷つけた悪魔」と述べました。グレッタさんに好意を持ってしまったジョニーさんは「『クライアント』に入れ込みすぎるのはよせ」という詐欺師仲間からの警告を無視しながらも、架空の人物としてグレッタさんをだましていることに葛藤を抱いていたそうです。この時ジョニーさんは金銭を要求することはなかったのですが、本当の正体を知ってなお、「私は彼に会いたかった」とグレッタさんは話しています。

グレッタさんにとっては「知人が別人になる」という不思議な出来事が起こったわけですが、2009年にグレッタさんは生まれて初めてアフリカへ赴き、奇妙な関係から知り合った2人はついに顔を合わせることになりました。空港でジョニーさんを見た時、グレッタさんは涙を流したそうです。グレッタさんはジョニーとともにナイジェリアに2週間滞在し、2人の関係は「ロマンチックな間柄」から「親しい友人」へと変化したとのこと。



グレッタさんはほかの詐欺師仲間にも会ったそうですが、健康で立派な青年が詐欺を行わざるを得ないアフリカの現状を打開できないか考えるようになりました。グレッタさんは2011年から6年にわたって、多くのアフリカの芸術家がヨーロッパの展覧会・ワークショップ・カンファレンス・コンクールなどに出るための国際的支援を行っているとのこと。芸術講師としてウガンダも訪れ、2016年にはナイジェリアへの訪問も予定しているとのこと。



「ジョニーは私から盗んだもの以上のことを与えてくれました。彼に出会わなければ、私は生涯アフリカを訪れることはなかったでしょう」とグレッタさんは話しています。なお、ジョニーさんは2009年の対面の際に「詐欺をやめること」を約束しており、グレッタさんの支援を受けてアメリカに渡ったのち、大学の学位を取得し、アメリカで職を見つけて暮らしているとのこと。今でも2人の間ではお互いの近況を話し合う関係が続いているそうです。