ユニクロの店舗(撮影=編集部)

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 ファーストリテイリングは10月13日、2016年8月期決算を発表しました。売上高は前年同期比6.2%増の1兆7864億円、営業利益は22.6%減の1272億円、当期利益は56.3%減の480億円でした。

 当期利益の大幅な減益は、その他費用に為替差損110億円、J Brand事業の減損損失138億円、米国ユニクロおよび国内ユニクロにおける店舗の減損損失および閉店に伴う除却損・閉店損の合計93億円などを計上したことが影響しました。

 国内ユニクロ事業の売上高は7998億円(2.5%増)、営業利益は1024億円(12.6%減)と増収減益です。一方、ジーユーの売上高は1878億円(前年同期比32.7%増)、営業利益は222億円(34.8%増)と大幅な増収増益です。

 国内ユニクロ事業は迷走しています。14年の秋冬商品を平均5%値上げし、15年の秋冬商品も平均10%値上げしました。14年4月に実施された消費税率引き上げの影響もあり、その後は客数が前年割れする月が続きました。割高となったことに消費者が拒否反応を示しました。

 半年前の16年8月期の第2四半期(9〜2月期)の営業利益が、前年同期比33.8%減と大幅な減益になりました。柳井正会長兼社長が決算会見で、不振の原因が2度の値上げによるものと事実上認めました。

 その後、価格帯を元の水準に戻しました。週末セールを抑制し、通常価格を低価格に抑えて販売していきました。ファストリは「毎日お買い求めやすい価格」戦略と名付けています。

 低価格に戻したことは功を奏しています。16年8月期下期(3〜8月期)の客数は前年同期比で2.6%減少していますが、上期の6.3%減少に比べて減少幅は縮小しています。客数は回復傾向を示しています。値引率の改善により、下期の粗利益率は前年同期比で1.4ポイント改善しています。

 ただ、状況が改善しているとはいえ、楽観できる状態ではありません。国内ユニクロ事業の成長が鈍化しているからです。直近5年の売上高を見てみると、12年は6200億円、13年は6833億円、14年は7156億円、15年は7801億円、16年は7998億円と増加していますが、売上高の成長率は低下しています。16年の対前年比はわずか2.5%増にとどまっています。12年の10.2%増、13年の4.7%増、14年の10.2%増、15年の9.0%増と比べて落ち込んでいることがわかります。既存店ベースでは16年は0.9%増にしかすぎません。

 売上高の成長率が落ち込んだ理由のひとつは、値上げにあります。値上げにより客離れが発生しました。もうひとつの理由は、ジーユーとの競合です。ジーユーは大幅な増収増益で、好調な業績を続けています。16年9月末時点で341店舗を出店しています。年間40〜50店舗の出店を継続しています。

●ユニクロとジーユーの違い

 ここで、ユニクロとジーユーの戦略の違いを見ていきます。ユニクロはベーシックファッションで、ジーユーはトレンドファッションです。価格は両者とも低価格を志向していますが、ジーユーのほうがより低価格です。多少の違いはありますが、大きな違いがあるとはいえません。似たようなブランドという認識が一般的ではないでしょうか。

 両者はカニバリゼーション(共食い)しているといえます。ユニクロとジーユーは意図的に近隣に出店する戦略をとっていました。たとえば、ビックロ ユニクロ 新宿東口店では、同じビル内にユニクロとジーユーがあります。東京・池袋ではユニクロとジーユーが隣同士です。このような例が多数あります。

 当初のジーユーは認知度が低かったため、ユニクロと近接して出店することでユニクロの系列ブランドとして訴求することができました。また、人員を融通しあうことも可能でした。それぞれが離れ離れで出店するよりも、メリットがあったといえます。

 しかし、ジーユーがある程度認知されるようになると、そのメリットは薄まっていきます。ジーユーの快進撃は、ユニクロを脅かすようになってきました。相乗効果よりも、カニバリゼーションが勝ってしまう危険があります。

 ユニクロが値上げに走った理由のひとつが、ジーユーの快進撃にあると考えられます。価格帯は若干の違いがありますが、低価格帯とひとくくりにできる程度です。そこで、ユニクロを中価格帯寄りに移行させようとしたと考えられています。

 ファストリのラインナップは、中価格帯が真空地帯となっています。「セオリー」「コントワー・デ・コトニエ」「J Brand」はどれも高価格帯で、テイストもそれぞれ異なります。しかし、ユニクロとジーユーは低価格帯で似たようなテイストです。そのため、ユニクロを中価格帯に移行させることは理にかなっているといえるでしょう。

 しかし、結果としてユニクロの中価格帯寄りへの移行は失敗に終わりました。失敗に懲りて当面の値上げはないと思われます。ただ、ユニクロとジーユーのカニバリゼーションは解消されません。

 柚木治ジーユー社長は「ジーユーはユニクロとは競合しない。ジーユーとユニクロを隣同士で出すことを増やしていく」と述べています。確かに相乗効果が見込める地域はまだあると思われます。ただ、将来的なカニバリゼーションで足をすくわれないとは言い切れません。

 カニバリゼーションを最小限に抑えるためには、ユニクロとジーユーとの違いを明確にする必要があります。価格で違いを出すことには失敗しました。そうすると、品質やファッション性で明確な違いを出さなければなりません。ユニクロは新たな岐路に立たされているといえるでしょう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)