去る10月19日、NTTドコモが「新製品発表会」を開催。その中で、同社では初となるオリジナルのスマートフォン「MONO」を12月上旬に発売すると発表しました。同スマホのウリは、なんといっても650円という激安価格。利用者が流出するばかりのドコモは、激安スマホで「反撃」に出たのでしょうか? ケータイ/スマホ・ジャーナリストの石川温さんは、自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、発表会当日に行われたNTTドコモ・吉澤和弘社長の囲み取材の様子を、社長の発言にツッコミを入れつつ誌上再現。650円スマホ以後のケータイ業界の未来を分析しています。

NTTドコモが「650円スマホ」をはじめとする13機種を一挙発表

10月19日、NTTドコモは2016-2017冬春・新サービス新製品発表会を開催した。吉澤和弘社長にとっては初の新製品発表会となった。発表会終了後、囲みが行われた。

━━いま、ドコモとしてあれだけ安い端末である「MONO」を作ったのはどういった事情があるのか。

吉澤社長「基本的には、我々は今までもフラッグシップ、あるいはミドルレンジがあり、(MONOのような)ローエンドもないことはなかった。バラエティのある価格帯の製品を作る、と言う流れは当然あると思う。MONOは価格としては非常に安いところを実現し、お客さまにもベーシックに使っていただける。そういったものをドコモの初めてのオリジナルブランドで実現した」

(★ 商品担当は安くて良いものを作りたいと開発していたら、営業サイドから650円という値付けが出てきて、結果、こんな報道のされ方になったんだろうな)

━━総務省の指導があり、端末価格のサポートもやりづらくなるのか。

吉澤社長「今のサポートは、かなり値段の高い機種につけて安くしているところがある。ちゃんと機能はベーシックであっても、もともと安いものであれば、リーズナブルな価格で提供することは何ら問題ないわけです。我々としてはベーシックな機能をベーシックな値段で使っていただける、そういったお客さまに向けて作るという動きでやっている」

(★ 実質0円がダメで、一括650円が許されるのがよくわからないな。このあたり、有識者会議で突っ込まれそうな予感)

━━MONOの想定価格は650円程度のようだが、端末代をドコモが負担している構造ではないのか。

吉澤社長「端末代金を負担しているというか、私ども自身は調達をして、卸売りをして、それに対して、それぐらいで売るという対応をしている」

(★ ソフトバンクもiPhone 6sなどは一括の場合、月々の割引などを無くした見せ方にして、解約する場合に解除料を請求するやり方にしている。この売り方、今後も広まっていくのかも)

━━ちゃんと利益が出る価格なんですか。

吉澤社長「全体として利益が出るようにしている」

(★ 2年間の通信料収入を前提にしたからこその値付けのような)

━━格安SIMとかMVNO、SIMフリースマホへの対抗策という意味合いもあるのか。

吉澤社長「ドコモとして、セカンドブランドをやるのかとよく聞かれるが、今のところはありません。そうはいっても、フラッグシップ、ミドル、ローなど、ある程度、お客さんに選んでいただきやすいものをつくることによって、実現するのかなと。

今回のMONOはベーシックだが、場合によっては格安といったものに、値段的にも対抗できるものかもしれない」

(★ テレビや新聞で650円という報道が広まっていることで、格安スマホやワイモバイルへの流出が多少、止まるような気もする)

━━加藤前社長の時代に、ラインアップを絞り込むという話があったが、今回は相当なラインナップ数になっている。今後、減っていくのか。

吉澤社長「ラインナップそのものは、確かに今回は多く見えるが、高速ネットワークに対応したフラグシップといったものは以前もあった。今回、AQUOS EVERのようなミドルレンジのものがある。MONOは大々的にローエンドに振っているが、ラインナップはそれ以外にらくらくシリーズであるとか、キッズとかいままでやってきたもののバージョンアップ。

ラインナップが増えたというとらえ方を、私はしていない。いままで通りと言うことですので。たまたま、今回、13機種と言うことで、いままでよりちょっと多かったですね」

(★ ラインナップを絞るとなると、ドコモの中で仕事がなくなってしまう人が出てきてしまうしなぁ)

━━Galaxy Note 7の発火問題で、連日報道されたことによって、サムスンブランドが毀損しているが、既存のGalaxyシリーズの販売への影響は出ているか。

吉澤社長「Galaxyシリーズでは、Galaxy S7 edgeが出ており、販売そのものは春から行っているが、それに対する影響があるかと言えばありません。Galaxy S7 edgeで同じ問題があるかといえば、全くそんなことはない。グローバルでも千数百万台、出ている機種で、発火問題のような事例も出ていない。S7 edge自体は何ら問題なく、販売面でも落ちているといった影響は今のところ見られない」

(★ 20日以降、Galaxy S7 edgeのCMが流れているが、本来ならばNote 7をアピールするために枠を買っていたんだろうな。関西空港での事故もあるし、正直言って、このタイミングでGalaxyをアピールするのはマイナス効果しかないように思うが)

━━Galaxy Note 7を見送ったことで、ハイエンドのひとつがなくなったことになる。その抜けた穴をどうやって埋めていくのか。

吉澤社長「Noteをご愛用されている方もいらっしゃいます。そういった方への施策を練らないといけない。たとえばS7 edgeに換えられる方もいらっしゃるでしょうし、ほかのスマホで画面サイズの大きさなどから、シフトしていただけるのであれば、そちらにシフトしていただく。

もともとNoteで想定していた台数は他のフラッグシップで埋めていくという動きになると思う」

(★ ペン入力が快適にできるスマホは、いまのところNoteシリーズしかないだけに、代わりがないのがつらいところ。でも、そこまでペン入力にこだわる人も少ないだろうし、すぐに他メーカーの製品に取って代わってしまうのだろう)

━━Galaxy Note 7を見送った経緯を改めて教えて欲しい。決定的になったのはどういったポイントなのか。

吉澤社長「ひとつは、電池が最初のものが発火するとされたあと、こちらだったら大丈夫という良品に交換したにもかかわらず、その後、アメリカの航空機内で発火があった。アメリカの消費者庁で検査され、リコールになったときに、我々としても決定的に見送るというか、そういう判断をした。サムスンからも日本国内における販売を見送るという正式な連絡もあった」

(★ ユーザーには早急に使用停止してもらい、別商品に交換するか、買い取りし、原因究明してから再販売すればこんなに大きな影響にはならなかったと思う。サムスン電子は本当に取り返しのつかない対応をした)

━━dカードの発行枚数の最新値とポイントカードの発行数の最新値を教えて欲しい。

吉澤社長「数字に関しては決算も控えておりますし、そういった機会でお願いできればと思います。

dポイントカードもまだ1000万枚はいっていないが、それに近いところまで到達している。数字については後ほどにさせていただければと思う」

(★ 社長だけでなく、広報だって、最新値なんて覚えてないだろうに。なぜ、社長囲みでこんな空気の読めない質問するのかな)

━━また、昨年、dカードのローンチキャンペーンをやったと思うが、これから春商戦に向けて販促キャンペーンのようなものをやる予定はあるか。

吉澤社長「dポイントクラブは5900万ぐらいの会員数になっているので、大きなポイントサービスのひとつになっていると思う。もっとPRしていきたい。dカードを使っていただけたら、dポイントも貯まる。dカードはApple Payとの対応が可能になる。そういった意味でもPRしていきたい」

(★ Apple Payはサービス開始前に、NTTドコモやJR東日本が何もアナウンスできない状況を見ると、NTTドコモが勝手にキャンペーンとかやるのも難しそうな気がする)

━━このタイミングでオリジナルブランドを立ち上げたのは珍しいような気がする。どういう理由なのか。

ドコモ担当者「ローエンドは品質が悪いんじゃないかと見られるところがある。そうならないよう、ドコモがしっかり品質面、性能面を磨きあげたものを出したいと考え、お客さんにいちばんわかりやすいMONOというブランドをつけて発売することになった」

(★ さすがに安いからといってNTTドコモがZTEスマホを扱っても、ユーザー側は「なにそれ?」なんだろうな。これからも海外メーカーの端末にドコモブランドをつける動きが加速しそう)

━━600円台という値付けを作ることで人気が集中して他メーカー製品が売れなくなる可能性があるのではないか。

吉澤社長「MONOに集中するということには、なかなかならないのではないか。機能としては最低限なものはつけているが、FeliCaは当然載せていないし、ワンセグもない。画面の大きさからも、他のスマートフォンを望まれる方が多いと思う。ベーシックで低価格という要望でMONOを購入することはあるだろうが、雪崩を打ってということにはならないだろう」

(★ 他のメーカーからすれば、自社ブランドで展開するよりも、ドコモブランドにしてもらって一括650円で売ってもらった方が、よほど儲かると思う。ドコモブランド入りを狙うメーカーが増えそう)

━━10月7日の総務省からの行政指導に対する受け止めを改めて教えて欲しい。

吉澤社長「私どもとしては、厳重注意ということで、端末購入補助にあたるということですから、真摯に受け止め、今月末までに対応策をやろうと思っている。実際に指摘を受けたのはdカードゴールドですよね。カードの年会費をお高くいただいていますし、そういったものに対するクーポン、さらに年間の決済額が100万円、200万円という方に1万円、2万円という優待クーポンをお送りしていました。電気通信における割引というよりもクレジットカードそのものへの感謝を込めていたものだったので、それにはあたらないと思っていた。

ただ、実際に使える先が購入補助だったため、そう言われるとその通り。そこは是正をどうするか、今考えているところ」

(★ これはNTTドコモが総務省に反発してもいいような気がするが。NTTドコモはユーザーではなく、総務省のご機嫌を伺うほうを優先しているのか)

━━サービスの充実というのは他社との差別化で重要になっていくのか。

吉澤社長「おっしゃるとおり。ハードウェア、ソフトウェアの両方でサービスを提供するわけです。ハードは今回、MONOみたいなものを出した。そのうえでどういったサービスが提供できるのか。そこですよね。ネットワーク、スマートフォンを使った新しいサービスですけども、いかに新しいモノを出していくか。

今回、dマガジンもfor BIZみたいなものを出したが、新しいサービスはまだまだ考えられる。まだできていないものもたくさんある。そういったものを新たに提供していきたい。それが競争だと思っている」

(★ サービス開発も「ドコモが出すからこそ便利」というものを提供しないといけない。何でもかんでもキャリアが提供しても「それ、ドコモがやる意味あるの?」とそっぽ向かれても仕方ない)

取材を終えて

NTTドコモによる初めてのオリジナルスマホ「MONO」。奇しくも、先日、グーグルもPixelスマホで自社ブランド推しを始めている。Galaxyがあのようなことになり、メーカーブランドで売れる機種がiPhoneとXperiaだけになろうとするなか、今後もキャリアやプラットフォームが自社ブランドをつけるスマホが増えてくるのかも知れない。ケータイのころはキャリアブランドが当たり前であり、スマホでも昔からKDDIがやっていたが、これからは中国メーカーなどに安価に作らせ、安くばらまく機種用としての「自社ブランド」展開が広まっていきそうだ。

image by: NTTドコモHP

 

『石川温の「スマホ業界新聞」』 より一部抜粋

著者/石川 温(ケータイ/スマートフォンジャーナリスト)

日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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出典元:まぐまぐニュース!