ひとり旅とカメラが大好きな編集者・宇佐美里圭(うさみ・りか)さんの旅エッセイ。第25回の旅先は、青森県弘前の岩木山神社です。

目覚めたばかりの世界を見るために

神社という場所が好きで、一時期あちこちの神社をめぐっていました。最初は、『アースダイバー』(中沢新一著)から興味を持ち始め、それこそ週末は一人で古墳と神社めぐり。当時はピンホールカメラとローライフレックスで撮影をしながら、一人で地味に盛り上がっていました。何か、目には見えないけれど感じられるものが撮れるような気がしたのです。

あちこちの神社に行っているうちに次第に感じるようになったのは、「神社って独特の光があるなあ」ということ。緑が多く、人や車が少ないからかもしれません。なんだか光が他の場所以上にキラキラしていて、空気が澄んでいて、静かでとっても気持ちいい。境内に足を踏み入れると、「ああ、神社の光だなあ」といつも思います。こういうのを「気がいい」というのかもしれません。

青森県の弘前に行った時も、一人で岩木山の麓にある岩木山神社を訪れました。朝一番、太陽が昇るのを拝むと、さっそくカメラを持ってお散歩。外へ出ると、道から白い湯気が立ち上り、草むらが朝露で輝き、冷たい空気が心地いい。ふだんは起きるのが遅いのでなかなか味わえないけれど、眠りから目覚めたばかりの世界は本当に気持ちいいもの。

岩木山神社へ行くと、誰もいないと思っていたのにふと背後から声が。「お勤めご苦労様」。ふり向くと、地元の方らしきおばあちゃんが箒で掃除をしていました。そうか、私は「美しい、美しい」と言って眺めているだけだけれど、こういう人が朝早くから掃除をしているから美しいんだ……。

当然だけれども、こうやって千年以上も毎日毎日、地元の人に清められ、大切にされ、崇められているからこそ、今も美しい姿のままここにある。それこそが「土地の力」になっていくのだなあという気がしました。