【コラム】仲間を信じるU−19日本代表MF神谷 無念の負傷も「次は世界で勝利を」

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 負傷したという認識自体はあった。ただし、「打撲だと思った」と言う。現在開催中のAFC U−19選手権、イランとの第2戦(17日)で後半途中にMF神谷優太(湘南ベルマーレ)はイランの選手との接触プレーでひざに受傷。だが、その後も「0−0だったし、出ているからにはやらないといけない。戦わないといけないときは必ずあるんだというのは湘南でも教えてもらったこと」とプレーを続行し、10分ほどピッチにいた。

 日本ベンチは神谷が負傷していることに少しして気付いたのだが、いつから負傷していたのかはよく分からなかったという。テレビを観ている人の多くも、神谷が負傷交代であることに気付かない人も多かったと聞いた。現場でも、そのプレーぶりから当初は重い打撲か骨挫傷だろうと思われていたそうだが、「(患部を写した)写真を観ていたドクターが急に深刻な感じになって……」(神谷)。その左ひざの骨は割れていたのだ。簡易な診断ながら、示された見立ては「全治まで1から3カ月」。打撲どころか、「これまでにしたことのない大ケガ」だった。

 U−19日本代表として世界切符を勝ち取ることは、プロ入り1年目の神谷が掲げていた大目標の一つ。その決戦に主力として臨みながら、まさかの負傷。当初は「何を考えていいのかも分からない状態になった」のも無理はない。帰って治療に専念するべきなのかと思ったときもあった。ただ、仲間たちから「明るく話し掛けてもらえた」ことで決意は固まった。考えたのは、「もう1試合残して、応援団に混ざるくらいの気持ちで残らせてもらう」ということだった。

 一方、FW小川航基(ジュビロ磐田)は「相当つらいと思うのに、それを仲間に見せないんですよ。自分があの立場だったら気持ち的にこたえると思うんですが、いつもどおりに振る舞ってくれている。すごく感謝しています」と僚友が見せる芯の強さを称えた。個人が出す暗い空気やオーラというのはすぐに伝播してしまうもので、そういう空気のある負傷者ならば、むしろすぐに帰らせたほうがいい。だが神谷は23日に久々に練習場へ顔を出しながら、笑顔を振りまいて冗談を飛ばして、そういう悪い空気は出さなかった。それは「(青森山田)高校でも経験したことだから」と言う。

 神谷がプレーを続行していたことを変な美談にする気はない。骨の異常を察知しながらプレーを続けたわけではないのだから、この経過自体はあくまでアクシデントなのだ。神谷自身にも、もはや悲壮感はない。「終わったことを言っても仕方ないじゃないですか。ポジティブに考えていくしかない」と笑った上で、「こっちでしっかり残って、体では戦えないですけれど、気持ちで戦いたい」とチームのサポートを誓った。

 同時に24日の準々決勝・タジキスタン戦を仲間たちが制し、世界切符を獲得してくれることも自然と確信しているようだった。「自分はここで悔しい思いをしているので、次は世界で勝利をつかみたい」。“ベルマーレ魂”を受け継ぐ湘南の若大将の熱き野心は、早くも来年の飛躍にまで及んでいた。

文=川端暁彦