関東 日帰り 出会い旅 Vol.013 /衣食住を考える旅(群馬県前橋市)【人物編 前編】

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【毎週土曜 6:00 更新】
東京から90分以内の日帰り圏内。その円を広げてみると、そこにはとても豊かな自然や、新鮮な景色が広がっています。身近なようでまだ知らない「関東の田舎」で、地元を愛するみなさんと触れ合いながらの、楽しい週末旅はいかが? 今回のナビゲーターは群馬県・前橋市、『アーツ前橋』学芸員の辻瑞生さん。辻さん自身に町との関わりを聞いてみると、前橋のことがもっとよく見えてきました。



東京駅から新幹線に乗って80分。自然との距離が近く、町を見守る赤城山には手が届きそうなほど。また、明治時代から国内有数の生糸の生産地として栄え、現在は群馬県の県庁所在地でもある。詩人の萩原朔太郎が生まれた地としても有名。



アーツ前橋学芸員。2010年からアーツ前橋開館準備に携わり、展覧会企画と教育普及を担当している。主な展覧会に「服の記憶 私の服は誰のもの?」展(2014年)、「田中青坪 永遠のモダンボーイ」展(2016年)など。食をテーマにした「フードスケープ 私たちは食べものでできている」展を担当したことにより、日々の食生活を見直し中。趣味はキモノとスポーツジム通い。



美術館『アーツ前橋』。展示室を活かしたパフォーマンスや音楽イベントなども行われる。



地域アートプロジェクトで、町なかに人型の庭<メディカル・ハーブマン・プロジェクトin前橋>(2013-2015)を作ったときの様子。

◆地域に根ざした美術館『アーツ前橋』

磯木:辻さんの働いている美術館『アーツ前橋』がオープンしたのはいつ?

辻さん:2013年10月にオープンしたので、ちょうど丸3年ですね。

磯木:まだかなり新しいですね。美術館としては、どんな特徴があるんでしょう?

辻さん:地域から芸術を育てていくことをひとつのコンセプトにしていて、遠くから名画名品を持ってくるばかりではなく、できるだけ地域の人との交流や関わりを重視しているのが特徴です。

磯木:地域密着型であり、参加型ということですかね?

辻さん:そうです。象徴的なのは一番最初に行った開館記念展で、過去にこの地域で活動していた作家と、現在地域で活動している作家にフォーカスしました。また、アーティストが街なかに出て地域の人と一緒に作っていく“地域アートプロジェクト”にも取り組んでいます。

磯木:地域に根ざすことで、美術館としてのオリジナリティも生まれますよね。この地域だからこその取り組みは、わざわざ足を運ぶ理由にもなりそうです。ちなみに、地域アートプロジェクトでは、どんなことをしたのですか?

辻さん:街なかの空きスペースを使い、なんでもなかった空間をアートスペースに変えていくというものです。これまでは、地域にまつわる植物を使って人型の庭を作ったりという試みも行われました。こうやって、地域と関わろうとするのは、美術ももっと地に足に着いたことをやっていかなくては、と感じていたからでもあるんです。



館内のカフェの一角で。



展覧会『フードスケープ 私たちは食べものでできている』は10/21〜開催。国内外8組のアーティストが新作を発表する。





展覧会『フードスケープ 私たちは食べものでできている』は10/21〜開催。風景と食設計室ホー「見えない神さま 粕川の祈りとたべもの」2016年/神さまを巡る山歩き、朗読と食事の会。展覧会では、このイベントを疑似体験できるような展示に。(撮影:木暮伸也)

◆「食」の展覧会『フードスケープ 私たちは食べものでできている』

磯木:「地に足を」ということで言うと、これまで辻さんは、衣食住をテーマにした展示も行ってきたと聞きました。

辻さん:はい、これまで衣食住の「衣」と「住」の展覧会をやってきて、この2016年10月から、いよいよこのテーマの最後を飾る「食」の展覧会『フードスケープ 私たちは食べものでできている』が行われるところです。

磯木:シンポジウムや、ツアーなどの関連イベントも予定されているそうですね。

辻さん:そうなんです。展示のほかにも、料理ユニットの南風食堂さんによる、参加費が「野菜」のごはんイベント『ギブ・ミー・ベジタブル』や、チベット医の小川康さんを講師とした『薬草茶カフェ』などを予定しています。私自身、『アーツ前橋』開館以来続けてきた展示を通じて、自分の衣食住を振り返ることも多かったので、思い入れは強いですね。

磯木:辻さんにとって、まさに地に足のついた、自分自身と密接に関わるお仕事でもあったわけですね。



●『アーツ前橋』
2013年10月にオープンした前橋の新しい芸術文化の発信拠点。展覧会、イベント、地域アートプロジェクトを行う。

TEL.027-230-1144
群馬県前橋市千代田町5-1-16
開館時間/11:00〜19:00(入場は閉館時間の30分前まで)
休館 水曜
2013年10月にオープンした前橋の新しい芸術文化の発信拠点。展覧会、イベント、地域アートプロジェクトを行う。

・展覧会『フードスケープ 私たちは食べものでできている』
「服の記憶-私の服は誰のもの?」(2014年)、「ここに棲む-地域社会へのまなざし」(2015年)に続く、「衣食住」をテーマとした展覧会の第3弾。食べることの未来をアーティストの表現を通じて一緒に考える展覧会。

会期:2016年10月21日(金)〜2017年1月17日(火)
開館時間:11時〜19時(入場は18時30分まで)
休館日:水曜日(11/23は開館、11/24休館)、年末年始(12/28〜1/4)
観覧料:一般600円/学生・65歳以上・団体(10名以上)400円/高校生以下無料



食と地域を耕す編集者/プランニングディレクター

自然と共生する価値観と地域の可能性をテーマに雑誌媒体などに取材・執筆・企画。2013年から現場に身を投じるべく、海と里山のある千葉県いすみ市に在住。地域の営みを観察し未来をつくる書き手を増やすための合宿型ライター・イン・レジデンス「ローカルライト-地域の物語を編む4日間」を主宰し、全国で開催。石巻復興町づくり情報交流館コンテンツ編集デスク。季刊自然栽培「見えないものを見る」連載中。近刊予定として『「小商い」で自由にくらす〜房総いすみのDIYな働き方』(2016年秋発刊予定)。