内村光良が原作・脚本・監督・主演の4役を果たした映画『金メダル男』。本作で舞台ともテレビとも違う「映画の笑い」に挑戦したという内村監督。インタビュー後編では内村監督が感じる映画の魅力を中心に話を聞いた。
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逃げ場も無いし言い訳もできない


──今回、映画の撮影と小説(『金メダル男』(中公文庫))の執筆が同時進行だったとうかがいました。

内村:映画の脚本がようやく仕上がる頃に小説の依頼が来てびっくりしました。これから原作書くって、逆ですよね普通(笑) 撮影時間は大丈夫かなと思いましたけど、新聞連載なんてそうそう人生で無いことだろうから、もう、やろう!受けよう!と頑張って書きました

──映画と小説が同時進行する中で、お互いに影響はあったのでしょうか?

内村:例えば、主人公の秋田泉一が後輩の横井みどりに振られる場面ですね。小説では夜の公園に設定してますが、映画では橋の上で撮影しています。場所が違うんですね。映画の撮影のほうが先で、すごく風の強い日でした。あの時の風の匂いとか、横井さん(土屋太鳳)の表情とか、その時の情感を小説の方に書き足してます。小説は文字で全部表現しないといけないので、撮影を思い出して書きたせるのはよかったですね。

──映画では原作・脚本・監督そして主演という4役を果たされてますが、どれが一番大変だと感じますか?

内村:やっぱり脚本作りですかね。舞台の時の脚本からだいぶ直して、映画オリジナルの部分もたくさんあるので。脚本が一番時間がかかりました。

──映画は秋田泉一が生まれた1964年から2016年まで約50年分を追うので、時代を再現するのが大変だったのではと思います。

内村:全部で146シーンもあって、衣装さんや美術さんは本当に大変だったと思います。看板とか垂れ幕とか、講演会の貼り紙とか細かいものも多くて……。印象に残ってるのは文化祭のシーンですね。80年代前半の文化祭を作ってもらったんです。奥に出店のたこ焼き屋があったりとか、当時の流行った聖子ちゃんカットとかね。当時の光景をみんなが共有してすごく頑張って、あの活気のある文化祭が出来あがって、すごく嬉しかったですね。

──監督としてプレッシャーを感じる場面はありましたか?

内村:これまでの2作(『ピーナッツ』『ボクたちの交換日記』)は撮ってて「楽しいなー」という感じだったんですけど、今回のは楽しいのと同じぐらいのプレッシャーがありました。やっぱり原作、脚本、おまけに主演までしてますから、逃げ場も無いし言い訳もできない。しかもコメディをお見せするわけですから、褒められるにせよ批判されるにせよ、全部一身に浴びなきゃいけないなっていう覚悟のもと臨んでいます。プレッシャーは大きかったですね。


舞台の笑い、テレビの笑い、映画の笑い


──『LIFE!』のようなテレビコントで作る笑いと、映画で作る笑いについて、違いを意識することはありますか?

内村:まさにそこが今回一番の課題でしたね。テレビと舞台の笑いは自分はだいたいわかってきたつもりなんですけど、この映画で「映画の笑い」っていうものに挑戦したいって想いがありました。『ボクたちの交換日記』に、長澤まさみちゃんが小出恵介くんを交換日記でひっぱたくシーンがあるんですけど、あれがすごくウケたんですね。映画の笑いって間が違うな、って思って。劇場で映像を見て笑うというのは、テレビとは違うし、舞台とも違うなと。

──舞台とテレビと映画で全て異なると。

内村:舞台はね、ちょっと笑い待ちしたりとか。ちょっと言い方変えたりとか、間の取り方を自分で調節できるじゃないですか。テレビと映画は完成したものを見せて笑わせなきゃいけない。

──テレビと映画ではどういう違いになりますか?

内村:リビングでテレビを見るのと、お互いを知らないお客さんが何人もいるでっかい劇場で映画を見るのとでは、やっぱり距離感が違うんですよね。あと、映画はお金払ってるから。テレビは横になってリラックスして見るけど、映画はちゃんと集中して見るので、ストーリーの面白さで笑う人が多いですね。その映画の笑いというものを今回すごく意識しています。

──映画でしかできないことをしようと。

内村:大きなスクリーンで、知らない人同士が劇場に集まって、みんなで笑いを共有するのは映画ならではの魅力ですから。舞台は同時に1箇所でしかできないですけど、映画って全国一斉に100箇所できるじゃないですか。これってすごいことですよね。だから規模の大きさも感じるし、それだけお金もかかるから……やっぱりプレッシャーにもなりますよね、映画ってのは。

なんだかんだでハッピーエンドに


──今後も監督業を続けられますか?

内村:機会さえ与えられれば私はすぐ仕事しますよ(笑)『ピーナッツ』のころと比べると自分も格段に進歩したと感じますし、一個一個勉強になってますね。監督をやるたびに学ぶことがたくさんあるなぁと思います。今回はギリギリまで粘ることが多かったから、後半はみんなから「しつこい監督」って言われてましたよ。編集もダビングも含め、「しつこいなこの人」って(笑)

──映画を作るうえで、大事にしていることと、やらないと決めていることはありますか?

内村:そうですね……内蔵飛び出る系はやんない(笑)ゾンビとか、僕の映画には出てこないんじゃないかなぁ。オモシロゾンビなら出てくるかもだけど。

──マジゾンビはちょっと

内村:マジゾンビとか、死霊のはらわた系は無いと思いますね。大事にしていることは……やっぱり、どこかでハッピーエンドなんでしょね。終わりは。今後もし作る機会が与えれても、なんだかんだあったけど、ハッピーエンドな感じで終わるのかなって思います。



内村光良
1964年7月22日生まれ、熊本県出身。[監督・脚本作品]『ピーナッツ』(06年)、『ボクたちの交換日記』(13年)[主な出演作品]●映画『七人のおたく』(92年/山田大樹監督)、『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』(03年/金子文紀監督)、『ゼブラーマン』(04年/三池崇史監督)、『恋人はスナイパー 劇場版』(04年/六車俊治監督)、『サヨナラCOLOR』(05年/竹中直人監督)、『西遊記』(07年/澤田鎌作監督)、『内村さまぁ〜ず THE MOVIE エンジェル』(15年/工藤浩之監督)●TV ドラマ「バスストップ」(00年/CX)、「ぼくが地球を救う」(02年/TBS)、「西遊記」(06年/CX)、「ボクの妻と結婚してください。」(15年/NHK-BSプレミアム)

(井上マサキ)