墓の引越し、墓じまい、墓なし自宅供養……「墓」にまつわる最新事情&トラブル

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すっかり定着した感のある「終活」という言葉。「人生のフィナーレ」を迎えるにあたり備えあれば憂いなしと、誰もが思うところだろう。だが、こんなに「落とし穴」が潜んでいるのだ!

■お墓の引っ越しなぜ、こんなに費用がかかる?

「墓じまい」に関するトラブルが増えている。といっても、墓を完全に処分してなくすケースはまれ。よくあるのは、先祖代々のお墓が地方にあってお墓参りが大変なので、いったんなくして近くの墓地や霊園に引っ越しさせるというもの。また、自分の子にお墓参りの負担をかけたくなくて、引っ越し先に永代供養墓を選ぶ場合もある。

いずれにしても、トラブルの主な原因となるのが「引っ越し」費用。墓じまいには一般に想像されている以上のお金がかかり、それが石材店やお寺ともめるもとになっている。まず必要なのが、墓地を更地に戻すための費用だ。日本エンディングサポート協会理事長の佐々木悦子氏は、費用の相場を次のように明かす。

「一般的に更地にする作業は石材店にお願いします。費用は石材店によって異なりますが、一応の目安は1平方メートルあたり5万〜15万円。墓石が大きければもっとかかることもあり、予想以上の金額を請求されて驚く方も多いです」

費用を抑えるには、複数の石材店から見積もりを取ったほうがいい。

「ある方が石材店に見積もりを頼んだら80万円という回答でした。高いと感じて別の石材店で見積もりを取ったら、こんどは40万円。最初のお店にお断りの電話を入れたら、『うちも半値でいい』とのこと。その方は、『最初の見積もりは何だったのか』と憤慨されていました。このケースからもわかるように、きちんと相見積もりを取って比較したほうが無難です」

墓じまいにかかる費用はそれだけではない。もっと厄介なのが、お墓をなくすときにお寺に払う「永代供養」の供養代だ。「住職の考えによって額は変わってきますが、一柱(遺骨一体)あたり50万円包むことが少なくありません」。

形のないものにそれだけの金額を包むのは高い気がしないでもないが、佐々木氏は「お寺側から見れば妥当な額」という。

「関東近辺では、法事のお布施は3万〜5万円が相場。本来なら33回忌や50回忌の弔い上げまで法事のお布施があるはずですが、お墓がなくなるとそれがなくなります。法事10回分と考えれば、一柱あたり50万円は法外とはいえないのです」

■奉仕作業で供養代を補填する手も

問題は供養代が一柱ずつかかるという点だ。先祖代々のお墓は、そこに眠る人も多い。たとえば3代(自分の両親、祖父母、曽祖父母)の6人を引っ越しさせれば計300万円。これだけ高額になると、簡単に墓じまいできない。

「人数が多いのだからボリュームディスカウントしてくれてもいいじゃないかというのが一般の感覚です。一方、お寺側は故人の供養をモノの売り買いと同じようにとらえては困ると考えています。その認識の差でトラブルが生じやすいのです」

住職ともめることなく、供養代を賢く抑える方法はないのか。方向性としては2つある。

一つは、引っ越す人数を絞りこむこと。たとえば古くから続くお墓の場合、同じ敷地内に複数の墓石があることがある。そこに眠る全員を連れていくと供養代が数百万に達するが、自分の親や祖父母だけ引っ越しさせれば費用を抑えられる。

もう一つは、供養代の不足分をお寺への奉仕活動で補填するやり方。

「お寺の行事を率先して手伝うとか草むしりをしたりして貢献していれば、ご住職も多少は理解を示してくれるかもしれません。供養代は、最終的にはご住職との関係で決まります。墓じまいにかけられる予算に限界があるなら、普段から良好な関係を築くことを心がけるべきです」

その他、改葬には新しいお墓の費用や開眼供養の供養代がかかる。合計するとかなり高額なので、事前にしっかり調べたうえで判断したい。

予算をクリアしても、墓じまいには大きな壁がもう一つある。手続きの煩雑さだ。お墓の引っ越しをするには、移転先となる墓地の受入証明書、もとの墓地の管理者からもらう埋葬証明書などをそろえて、もとの墓地のある市区町村に提出し改葬許可証を発行してもらう必要がある。手続き自体は難しくないが、新旧の墓地や役所と何度もやりとりするのは面倒なものだ。

「最近は改葬の手続きを代行する業者や行政書士も増えてきました。高齢になるとエネルギーがなくなるので、面倒な手続きを業者に頼むのも一つの手です。ただ、いきなり代理人がやってくることを嫌うご住職は多い。円滑に墓じまいしたいなら、もとのお墓のあるお寺にはまず自分で足を運んでお話ししたほうがいいと思います」

現在はまだ表面化していないが、今後問題になりそうなのが「手元(自宅)供養」だ。手元供養には、遺骨や遺灰を自宅に安置したり、遺骨を加工してプレートや合成ダイヤモンドにして身につけるなどのやり方がある。故人をしのぶものを身近に置いておけるため、近年は手元供養を選ぶ人も増えている。

手元供養そのものは法的に問題なく簡単にできる。が、問題になるのは自分が死んだときの対応。たとえば親の遺骨を小さな骨壺に入れて自宅に安置していた場合、自分の死後もずっと自宅に安置しておくことが可能かどうか。

実の両親ならともかく、2代、3代と代を重ねていけば、故人をしのぶ気持ちも薄れていくはず。そうなったとき、子や孫が自宅の庭などに遺骨を処分すると法律(墓埋法)違反になる。新たに墓をつくって納骨しようにも、墓地の管理者側から「身元が確認できない」といって拒否されるおそれがある。

■民営霊園は倒産リスクに注意すべき

「管理者に納得してもらうには、事件性がないことを証明する必要があります。そのためには、手元供養するときに分骨証明書をもらっておくことが大切。火葬のときに分骨するなら火葬業者から、すでに納骨した遺骨を分骨するなら墓地の管理者から分骨証明書を発行してもらってください。また、あらたな納骨先を選ぶときには、『手元供養した親の遺骨を一緒に納骨できるか』と事前に確認しておけば、トラブルが起きるリスクをさらに減らせるはずです」

将来トラブルに発展するおそれがあるということでいえば、民営霊園の経営破綻も要注意だ。

一般に民営霊園は宗教や宗派の縛りはない。自治体(指定業者含む)が管理する公営墓地と違って応募に資格制限がなく、常時募集している点も魅力。だが、管理するのは民間企業なので倒産して霊園を差し押さえられるリスクがある。実際、消費生活センターに「お墓参りに行ったらチェーンがかかっていて入れなかった」という相談も寄せられた。

どのような霊園が危ないのか。まずチェックしたいのは経営主体だ。

「民営霊園の経営主体はさまざまで、石材店が参入しているところも多い。石材問屋さんによると、今年は墓石の売り上げが過去最低だったとか。健全経営の石材店も多いので一概に言えませんが、石が売れにくい時代になったことは考慮したい」

売れ行きにも気を配りたい。区画に空きが目立つ霊園は、業者が開発資金を回収できていないおそれがある。といって、全区画売れていても安心とはいえない。売り切ってしまうと霊園の収入は激減するからだ。

「すでに売り切った霊園では、今後、修繕費の問題が浮上してくるでしょう。民営霊園は昭和50年代に一気に増えました。今はともかく、近い将来、施設が傷み始めて修繕が必要になってきます。そのとき誰が費用を負担するのか。いきなり管理費を値上げされる可能性もあるので、事前に規約などを確かめておくことをおすすめします」

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佐々木悦子
一般社団法人日本エンディングサポート協会理事長。1969年生まれ。短大卒業後、証券会社勤務などを経て、エンディングコンサルタントとして活躍。2012年10月から現職。著書に『知っておきたいお葬式Q&A』など。

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(一般社団法人日本エンディングサポート協会理事長 佐々木悦子 村上 敬=文)