米大統領選2016:最終討論会の見どころ

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司会のクリス・ウォレスの前ではリアルタイムの事実確認(ファクト・チェック)は期待できない

2016年米大統領選挙の2人の候補者が、ラスベガスのネバダ大学で行われる最後の直接討論会に臨む。ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプが直接顔を合わせるのはこれで3度目となる。2回目の討論会では話題が大きく脱線したものの、トランプは終始クリントンの後ろで仁王立ちになり、その姿は彼の支援者のひとりから「(クリントンを威圧する)シルバーバック・ゴリラのようだった」と賞賛された。第3回目の討論会では、司会者の役割が重要なポイントとなる。

第一に、トランプは以前にも増して窮地に追い込まれている。支持率が平均7ポイント低下(Real Clear Politics調べ)する中、ポール・ライアン下院議長やジョン・マケイン上院議員ら共和党の有力者から愛想を尽かされて党の全面的な支援を得られない上に、数々のセクハラ告発の矢面に立たされている。共和党候補のトランプはこの状況にもうまく対応できていない。第3回討論会までの数日間トランプは、集会やツイッター上で「大統領選では不正が行われている」と訴え続けている。

トランプにも最後の(討論会の)90分間で支持率を逆転する可能性はある。一方で、第3回討論会の司会を務めるFOXニュース・サンデーのキャスター、クリス・ウォレスは、その場を台無しにしようとするトランプに対して討論をコントロールできるかどうかがポイントになる。

トランプは過去2回の討論会において、どの司会者も(クリントン側に)偏っていたと主張している。ところが大統領選の討論会に際し、FOXニュースの元CEOロジャー・エイルズがトランプを指南していたという事実がある。エイルズはセクハラ問題で2016年8月にCEOを辞任するまで、第3回討論会の司会を務めるウォレスの長年に渡る上司だった。そのため今回はトランプ側に有利ではないか、との憶測も流れている。第3回討論会当日のとある報道によると、トランプとエイルズはもはや連絡を取り合っていないという。

FOXニュースのキャスターとして初めて大統領選討論会の司会を務めることとなったウォレスは、共和党予備選挙中にFOXニュースが主催した討論会でも司会を務めた。その際のトランプに対する鋭い指摘が広く好評を得ていた。この時ウォレスは、トランプによる公約がいかに実現から程遠いかを示すフルスクリーンの図表を事前に用意していた。トランプは、環境保護庁(EPA)と教育省を廃止し(両方を実現したとしても赤字額の6分の1以下の削減)、高齢者医療保険制度における薬剤費を3000億ドル削減(実際にかかっている金額は780億ドルのみ)することで、財政赤字を解消できると主張していた。

「トランプさん、あなたの計算は全く合いません」というウォレスの厳しい指摘は、視聴者の印象に強く残った。

ニューヨーク誌のガブリエル・シャーマンは2016年10月初旬、「ウォレスがこの時に準備した図表に対して高い評価を与えるべきではない」と指摘している。ウォレスと他の2名の共同司会者は、FOXニュースの親会社ニューズ・コーポレーションのCEOルパート・マードックから、トランプ候補の足を引っ張るように指示されていたという。FOXが主催した共和党候補による第1回討論会(2015年8月)の数日前、マードックが当時FOXのCEOだったロジャー・エイルズの自宅を訪問し、「もう十分だ」と言ったという。そして、討論会で司会を務めるメーガン・ケリー、ブレット・バイアー、クリス・ウォレスの3名に、トランプに対してあらゆる問題に関して集中攻撃させるように要請したという。

しかし第3回討論会では、ウォレスは誰の影響も受けずに司会を進めることができるだろう。マードックの傘下にあるFOXニュースは共和党予備選の討論会を担当したが、本選の討論会は勝手が違う。全3回の討論会は討論会委員会によって管理され、各司会進行役はひとつひとつの言動に重い責任を持つ必要がある。