ジョジョとスピードバトル


あらゆる映画やドラマがそうであるように、「スピード」×「チェイス」が関わるジョジョのバトルは緊迫感たっぷりで、名勝負数え歌と言っていい。


第一部ではジョナサンの重量感ある戦いがもっぱらだったが、第二部ではジョセフの軽いノリに合わせるようにスピード感あふれる死闘が少なくない。例えばカーズが奪ったエイジャの赤石を取り落とし、雪の上を滑走して死の崖にまっしぐら。それをジョセフが蹴りで引っ掛けて取り返したものの、カーズの道連れでともに転落。輝彩滑刀の刃で真っ二つにされそうになったジョセフは赤石を盾にして……と手に汗握る攻防が記憶に残る。

ジョセフVsワムウの最終決戦も、猛スピードで走る戦車戦だった。闘技場を回りながら大型ハンマーを取ったジョセフに対して、石柱を怪力でへし折り殴り掛かるワムウ。そしてジョセフは必殺技(神砂嵐)を食らう直前、ワムウの腕に手綱を絡めて波紋を流すなどのトリックを駆使。いま読み返すとかなり無茶だが、そこはノリと勢いで乗り切るのがスピードバトルの良さだ。

第三部では、花京院VSテレンス・T・ダービーのカーレースが印象深い。ただし実車ではなく、対戦レースゲーム「F-MEGA」。ゲーム機の形状と近未来的なカーデザインは、どう見てもスーファミの「F-ZERO」。スタート前にアクセルボタンを連打するとスタートダッシュできる点もそのまんまだ。荒木先生、このゲームをやり込んでいたなッ!

しかし「壁を走る」は本家「F-ZERO」シリーズを先取りしていた上に、「8ヶ所のカーブと地雷原が一箇所、キャノン砲が一箇所あり闇を抜けるとすぐ出口を飛び出る」コースを実装したレースゲームは未だにないはず。ジョジョは時代の先を突っ走るスピードスターなのだ。

「なおす」能力をフル活用のバイクチェイス


今回はシリーズを通じて最もスピード感あるバトルが繰り広げられ、クレイジーダイヤモンドの「なおす」能力が大活躍のエピソード。アニメ版は勢いを落とさないため、作画監督11人体制の総力戦! 現場の気合がみなぎる緊迫のバイクチェイス回だ。

前回は露伴先生のおかげで、ハイウェイ・スターの脅威から一時的に逃げられた仗助。が、本当の追撃戦はこれからだ。ノーヘルで無免許(たぶん)、時速60km以下には落とせない=完全にスピード違反だが、ジョジョではよくあること。

スタンドの本体は何処にいるのか。罠が張られていた二ツ杜トンネルに注目した仗助は、康一くんに電話をかけて調べてもらおうと思いつく。そこで携帯電話かスマホを取り出せば話が終わるが、原作の連載は90年代半ばのこと。総務省サイトによると、その頃のケータイ普及率(東京管内)は1〜4%程度で、劇中設定の1999年だと4割前後といったところ。仗助が公衆電話の前でテレカを取り出すところに時代を感じる……。

ハイウェイ・スターが時速60kmに対して、バイクは80km。仗助が8分走った時点では敵は6分の地点にいて2分の余裕があるはずが、敵スタンドはすぐ後ろに出現。しかも、再びバイクで走り出した先には乳母車。減速したら自分が死ぬ、露伴先生も死ぬ。このままつっこむしかねぇ!

「しかし!クレイジー・ダイヤモンド!」

全速力で突っ込んだバイクを粉々にぶっ壊し、部品ごと乳母車を飛び越す冴えたやり方。そして直す! クレイジー・ダイヤモンドがどれほど優れていても、こんな通過方法を瞬時に考えつくのは仗助だけ。スタンドというのは車やバイクを運転するのと同じなのだ……虹村形兆アニキは良いこと言ってましたな。

10億円の商談とプロポーズを潰す極悪主人公



電話をする余裕がない仗助。そこに渡りに船で、携帯電話を手に上司の命令を受けているサラリーマンがいた。

「いいか吉岡!今から1分後に重要な電話がお前のその電話に行く。これは10億の取引だ!」

仗助がケータイをパクり、10億円の商談終了と吉岡クビのお知らせ。でも、つかんだ衝撃でケータイが壊れていて、吉岡の犠牲が無駄に! しかし、すぐに2台目をゲット、ただしプロポーズ中の男性のケータイであり、プロポーズも強制終了。仗助、極悪だな!

やっと電話をかけられた仗助は、康一くんにトンネル情報を調べてもらう。そこでの事故を2日前にテレビで見たことを覚えていて、新聞のスクラップまでしている刑事みたいな高校生だ。

「暴走族のバイクが飲酒運転でトンネルの入り口に突っ込んでいる。少年Aは全身打撲の重体で意識不明。ぶどうヶ丘病院で集中治療中って!」

道路が血だらけで「やられ方が違う」ことから、この重体の少年Aは襲われたんじゃなく、スタンド使いになって養分を吸い取ってると分析する康一くん。「被害者とミスリードして実は加害者」は、海外ドラマ『パーソン・オブ・インタレスト』でも定番のパターンではある。

バイクチェイスは続く。爆走した先には杜王港の海、コーナーを60km以上で入っていくしかない。ここで下唇をかむ「恐怖のサイン」を追加しているアニメの周到さに惚れ惚れ。この伏線は序盤から仕込まれているもので、あと数話で回収されるはずだ。

膝を地面に擦り付け、やったぜ曲がったぜ! しかし、その先も海だった。またもやクレイジー・ダイヤモンドを発動して倉庫の壁を壊し、壁の瓦礫を直す! それでハイウェイ・スターを足止めできるが、しょせん一時しのぎに過ぎない。が、電話をかけて康一くんに少年Aのいる病院を調べてもらえる貴重な時間だ。

「どぉこまで行った!クソッタレの仗助の野郎はよぉ〜! ウケケケケケ!ウケー!」

幽霊なのにやたらと元気な写真のおやじ(吉良のパパ)。このセリフは一応原作通りだが、ウケー!が盛られていて、いつもの千葉繁さんだよ! どんどん上がっていくおやじのテンションも込みにしたキャストなんだろう。

一方、仗助は海から広がるゴミを見て、存在に気づいた排水溝に入って爆走中。しかし、一難去ってまた一難。アクセル全開にしてるのに、どんどんスピードが落ちていく。よくよく調べてみると、ガソリンが空になっている「だけ」。

「なら問題はねぇじゃねえか。クレイジー・Dでも直せない重大な故障かと思って焦ったぜ」と近くにガソリンスタンドもないのに、全く焦らないのが仗助くんのカッコよさだ

「なら問題はない。脱出するのに何も問題はない」

バイクで堤防に突っ込み、対岸めがけて吹っ飛んでいっても「依然問題はなし」。そこでクレイジー・ダイヤモンドを発動、駐車していた自動車にドララララァ!! 追ってきたハイウェイスターを車内に誘導してから「問題なく直す」で封じ込める。瞬間の判断力、「なおす」を応用する発想の柔軟さ、「逃げる」が反撃につながる戦い方。やっぱりジョセフの息子だなあ……。

ガソリン問題も、車にちょっぴり穴を開けて解決(窃盗)。道に迷ってるのが情けないが、スマホもグーグルマップもない時代なのでしょうがない。

心置きなくブチのめすために、まず治す!



どこか見覚えのある自転車は、康一くんが小林玉美に絡まれるきっかけになった懐かしのマウンテンバイク。少年Aの入院しているぶどうが丘総合病院に聞き込みだ。
 
しかし受付のナースは、優雅にティータイムなう。「本日面会は終了いたしました」のカンバンを指差して、そこに書いてあるのが見えないの?と煽る煽る。とはいえ、少年Aの家族でもないのに、病室を教えられないのは真っ当な話だ。でも、「あんた暴走族にしちゃずいぶんチビねー バイク足届くの?」とケンカを売ったもんだから……。

「Ok !Master Let's kill da ho!! Beeeetch!!」

エコーズACT3、口が悪い悪い。ざっと訳してみると「了解マスター! このアマ、やっちまいましょう!」という意味だ。進化前のACT1、2ともに「音」の攻撃だったが、ACT3は「悪口」という意味での音かもしれない。

ACT3が「重く」したのは、棚の上の高価な薬品だった。ナースが必死で支えたものの、どんどん重くなるばかり。あんた手伝って!と言われた康一くんは「ちょっとあんたってぼくのこと?」とすっとぼけ、「それにチビだから届かないかも」とやり返す。露伴先生に鍛えられて、タフになったね康一くん。

ナースが個人情報をバラしたところで、仗助のバイクがガラスを割ってご来院&エレベーターに滑り込み。30分の中でどんどん罪状が増えていく少年マンガの主人公だ。

「仗助君!525号室!名前は噴上裕也!525号室だよ!」

スタンド本体の病室を教えた上に、扉に入りかけたハイウェイスターの一つを「重く」して足止めした康一くんは、仗助の言葉通り「本当に頼りになる男だぜ!」だ。しかし、分裂する群体スタンド相手には「一箇所だけ」重くできるACT3の効き目は限られている。

残りたかが数十メートル。通気口から迂回してきたハイウェイスターの猛攻を突っ切り、ゴールの病室───養分を吸い取られて力尽きた仗助の前には、少年Aこと噴上裕也のハーレムがあった。

「なんだぁ!?このガキはよぉ〜!」
「ここは裕ちゃん(噴上裕也)の部屋なんだよぉ〜!」
「てめぇの病室間違えてんじゃねぇ!ボケェ!」

取り巻きは、古式ゆかしいスケバン×3人! アニメ版では可愛らしくアレンジされてて、噴上裕也がマジ羨ましい。本人は「お前が追跡してた二人目(一人目は露伴先生)の野郎かよ。よくここまでたどり着けたな」と余裕しゃくしゃくだ。

おおらかに仗助を放っておく噴上裕也は、まさにハーレムの王様。「なんか小便したくてよ〜いっぱい溜まってんだよぉ〜」と意味深なおねだりに、しびんを奪い合う取り巻き3人組。嫌というほど恋愛格差社会を見せつけるジャンプ漫画である。

恐るべき嗅覚を持つスタンドの発現は、噴上裕也本体にも影響していた。アケミ(取り巻きの一人)が手にした桃が腐ってると匂いを嗅ぎ当て、3人の中で生理中のやつがいると見抜き、怒ってるやつのアドレナリンがプンプンしていると気づき……誰も怒ってない?

「嘘言うなよ。誰だ怒ってんのはよぉ〜」
「俺だ」

取り巻き3人がうしろうしろ〜と指差すタイミングで、まさに志村。エネルギーを吸い取られた仗助は、治療用の点滴を口から飲んで栄養補給したのだ。点滴って口から飲めるの?とよくネタにされるシーンだが、ポカリスエットも「飲む点滴」という発想から生まれたのだから問題ない(たぶん)。

「トンネルの中で捕まえてるやつ(露伴先生)を解放しろ」と迫る仗助にハイウェイスターが襲いかかるが、近距離ならクレイジー・ダイヤモンドの圧勝。とたんに腰が砕けて「こんな怪我人をブチのめすなんてそんな卑怯なしねぇよな?そりゃ男のやることじゃあねぇよな!?」と情に訴える噴上裕也、さすが色男だ。

「う〜〜む なるほどなぁ。たしかに怪我人をブチのめすなんて後味の悪い事だ。とっても男らしくねぇことだな。心の痛むことだ」
「そうだろ〜?こんな俺をブチのめしたら嫌〜な気分がずっと残るぜ?」
「だと思ってよ。おめーを既に治しておいた」

動ける!治ってる!と喜ぶ噴上裕也。治ったということは……。

「いったんおめーを治せばよ〜。これでぜんぜん卑怯じゃあねぇわけだな!」

心置きなくブチのめすために、まず治す! 最後の最後までクレイジー・ダイヤモンドを意地悪に使う仗助、控えめに言ってサイコーである。

「スゲー爽やかな気分だぜ。新しいパンツを履いたばかりの正月元旦の朝のようによぉ〜」

出ました名言。そのまま入院続行となった噴上裕也につき、「取り巻きの女の子に看護してもらってその点はうらやましいヤツ」というナレーションには同意しかない!

アニメオリジナルで、仗助と露伴先生は仲直り?


その後の露伴先生を助けに行くシーンは、アニメ完全オリジナル。クレイジー・ダイヤモンドに治してもらっといて「貴様に助けられるぐらいなら死んだほうがマシだ!」と文句を言ってるものの「言っとくが貸し借りなしだからな」とは露伴先生的にはデレてるのかも(横で承太郎が「やれやれだぜ」ポーズ)。「ちなみに広瀬康一はあの後、犬の散歩に行った」って、康一くん大物だわ!

CM後のCパートは川尻家、靴のサイズが合わない(本物の川尻浩作の方が足が大きい)吉良吉影の姿。そんな彼をヘソ出しで誘う気満々の妻しのぶが部屋の片隅で見かけたのは、ブリティッシュブルーの猫だった。来週はハートフルな動物との交流かな!?