斎藤工は「あなたの夢見るための道具」なのか「運命に、似た恋」episode4

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ドラマ10「運命に、似た恋」(NHK 総合 金 よる10時〜)episode4「本当の嘘」
脚本:北川悦吏子 演出:石塚嘉  出演:原田知世 斎藤工 山口紗弥加ほか


「ダメ、もう帰さない」
「こんな私でいいの?」
「世界でひとりだけ、カスミじゃなきゃダメ・・・観念した?」
「もういいや、観念しよう」

うわうわ。これが、45歳の平凡なおばちゃんと年下カリスマイケメンデザイナーのラブストーリー第4話の
クライマックスでした。「ダメ」「ダメ」って2回も!

セレブ向けクリーニング店で働くバツイチのヒロイン・カスミ(原田知世)は顧客のひとりデザイナーのユーリ(斎藤工)になぜか好意をもたれておつきあいに発展。これをカスミのひとり息子つぐみ(西山潤)の視点で書くと「その男はかーちゃんを運命とか僕のお姫様とか言って、頭悪いんじゃねえかとかちょっと疑ったけど」(冒頭のナレーション)となる。
ちゃんと客観性もってまっせというアピールがないと、このまま全8回のうちのあと5回、斎藤工のちょっぴりおとぼけ君の魅力と常に満タンの色気で引っ張れるか若干心配だったのだが、さすが連ドラベテランの北川悦吏子様、この回、仕掛けてきた。
大事なところは2点ある。

まずは、ストーリーを振り返ろう。
どのみちふたりの恋路は順風満帆にはいかず、ユーリを気に入っているお得意先の社長夫人マホ(山口紗弥加)がクリーニングを頼むのやめる(一番の顧客)と言い出して、カスミをユーリから引き離そうとする。
ちょうど、カスミの元旦那(小市慢太郎)が400万円の借金をこさえ、つぐみの大学進学のための積立貯金を持ち出し25万円を引き出すというプチ騒動を起こす。当面いくら必要なのか具体的な金額は描かれなかったが、おそらく、別れたにもかかわらず元旦那の借金返済に協力すべくカスミは仕事を増やしたのだろうと思わせる描写があり、それもあってユーリと距離ができてしまう。

だがそこはロマンティックラブストーリー。カスミがビル掃除をしているとユーリとばったり。つれなくしてもユーリーはしつこく待ち伏せていて、結局、カスミは彼を家に招く。

「うち、来ます?」
「え」

おいおいカスミ、意外とゆるい? なんか起きちゃうの〜? とドキドキさせておいて、ここでは悲しい別れ話。
「君といると私、みすぼらしい気持ちになるの。同じような人といればそんな気持ちにならなくて済む」
とカスミ。これは1話の「弱い者を見捨てられないのはほんとうは自分も弱いから」という台詞を引き継いでいる。

元旦那を若い女にとられ女手一つでひとり息子を育てて、気がつけば45歳、もはやアラフォーでもなくなった。傍から見たら頑張っていて立派だと思われていい。でも、本人、どうもそんな自分が好きじゃないようだ。だが思い切って、好きじゃない自分から抜け出す勇気がない。だからパチンコ通いで、若い嫁にも冷たくされはじめている元旦那に関わってしまう。彼になら自分が優位に立てるから。
人間の弱くてずるいところが、原田知世が演じることで生々しくなくて救われる。

このシーン、古くて狭いマンションの食卓にふたりが向かい合って長いことしゃべっているのを、カメラが
じーっくり撮っていく。ほとんどカット割らずにカメラがゆ〜っくりふたりのまわりを回りながら撮っていて、
いたたまれなさ倍増。

【そして、ここで、ひとつめの重要台詞が】

「短い時間だったけど、いい夢見させてくれてありがとう。楽しかったよ」とカスミが柳沢慎吾みたいな台詞を言ったあと、すごいのが来た。

「勝手なこと言わないでよ。
俺、クリスマスのイルミネーションじゃないから。
あなたの夢見るための道具でもないから。
これでも生きてる人間だから」

うおーっ。
これ、世間的な斎藤工に対する目線への痛烈な反論ではないか。
どんなにドリームな物語を書いていても、演じているスターのもしかして実像? と思わせる箇所を加えることで北川悦吏子ドラマはこれまでヒットしてきた。木村拓哉しかり豊川悦司しかり。この2大スターに並ぶか、斎藤工。

ただ、斎藤工がふたりと確実に違うのは、問答無用なスター性ではなくて、どこか間違えちゃった感があるところ。このユーリも、カスミに出会ったことで、どんどんヘンなところが強調されている。LINEのやりとりのぎこちなさとか、へたするとストーカーになりそうなところとか(カメ子のおかげで印象が薄くなってるだけ)、第一、マホが勝手に部屋に入るのをそのままにし続けるとか。鍵変えなさいよー。
そういうところが良いのを北川悦吏子さんはよく抑えてる。

なんといってもびっくり。ふたつめの重要台詞


このときついた大きな嘘は、それからずっと僕を苦しめることになったんだ。

な、なんと。そう来たか。マホが3話で「ほんとのあなたのこと知ったらあなたのこと愛してくれるオンナなんて誰もいないんだから」と謎を残したとはいえ、すっかり、アムロだと思っていたのだが、アムロじゃないの? とそわそわさせて、後半戦へ。思わせぶりな予告編も手伝って、episode5は見逃せなくなった。

ストーカー カメ子が気になる


つぐみを追いかけ回し写真を撮りまくっている、同じ高校の女の子カメ子(久保田紗友)。岩井俊二監督の「花とアリス」で鈴木杏が演じた少女のオマージュにも見える(近年北川悦吏子は岩井俊二と組んで仕事をしている)、この子の独り言描写が気になる。完全に自分と会話している感じがかなりやばい人なのだが、ほんとうに内向的なこういう子は実際にもいる。わかりやすく演劇みたいにハキハキとモノローグをしゃべらせたり、ナレーションにしたりしないで、聞き取りにくいボソボソ感にしたことはトライだと思う。
カメ子の今後にも期待。
(木俣冬)