ハリルホジッチ監督は、どう得点を取るのかを確立できていないのが問題だ。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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 UAEに敗れ、黒星スタートとなったロシアワールドカップ・アジア最終予選は、4試合を終えた現時点で2勝1分1敗の3位。ハリルジャパンは苦戦を強いられ、ワールドカップ出場権が与えられる2位以上を確保できていない。 また、試合内容は上向く気配がなく、今後の戦いに明るい展望を描けない状況が続いている。果たして、「ハリルホジッチ監督でアジア予選を突破できるのか?」。編集部で緊急座談会を実施した。 ―――◆―――◆―――◆――― ――日本はグループ3位です。初戦を落とした割には盛り返してきたのが現状ですが、それでも世間を覆う空気が重いのはなぜでしょう? 記者A やっぱりオーストラリア戦で、勝ちゲームをものにできなかった点にあると思う。前半だけ見れば勝てる雰囲気があったから。 ――勝ち切れないのは、今の日本代表が乗り切れないポイントですね。 記者A 終盤にパワープレーで決勝点を挙げたイラク戦も、冷静に振り返れば大苦戦だからね。アジアカップの時はUAEやイラクを内容で圧倒していた。その国に内容でも僅差のゲームをやっている。だから、「UAEやイラクとのアウェーゲームで勝てるの?」と思ってしまうし、アウェーのサウジアラビア戦が予選の最終節にあるのも不安材料だよ。  ――守備重視は選択肢のひとつですが、そこからどう点を取るのかが見えないのが、ハリルホジッチ監督の問題なのかもしれません。縦に速いサッカーと言い続けているのに、その手段を構築できていない。 記者C 本当に、そこが問題。世界に行ったらオーストラリア戦のような戦い方をすると思う。ただ、オーストラリア相手にあの程度なのに、世界で通用するのか。守ってカウンターの戦い方は間違っていないと思うけど、クオリティの問題。あんなに押し込まれた状態がずっと続いていたら、いつか耐えられなくなる。クオリティの部分では、やっぱり試合に出てない選手が多いのが問題かな。 記者B 本田に関しては、イラク戦はきついなと思ったけど、オーストラリア戦は帳尻合わせてきたなとは思ったね。でも、香川の印象は良くない。チームが良い時に力を発揮するのは誰でもできる。苦しい時こそ、なにができるかという状況で何もできなかった。そう考えると……。 記者A ただ、香川は被害者的な側面もあるよ。あの守備的な戦い方で香川に何かを求めるのは、相当きつい。オーストラリア戦の日本は、引いて受け止めてから、どうするか考えていた。それで手がなくて本田に蹴ってしまうあの状況では、香川のようなトップ下が輝くのは難しい。 記者C アジアのなかでどうやったら優位な立場で戦えるのかと言ったら、ポゼッションして相手をじわじわ追い込んでチャンスを多く作り続ける戦い方だったと思う。今回はそこをまるっきり排除しているから、選手が慣れていないのかなとも思う。


記者A チームが一番まとまっていたのは、イラク戦終盤のパワープレーだった。吉田を前に出して、ボールを持ったらあそこに放り込む。それをみんなが共有していた。チームとして戦っていると感じたのが、選手が自主的にパワープレーに踏み切ったあの場面というのが、ちょっと寂しく感じるよね。 ――単刀直入に言うと、日本代表の一番の問題は? 記者A 最初の頃は、危機感の薄さがあったかもしれない。初戦でUAEに負けた時は、コメントを拒否して帰る選手がいてもおかしくないと思っていたけど、みんなちゃんと止まって冷静に話した。淡々としていて、この敗戦をどう受け止めているのな、とは思った。 でも、イラク戦くらいからは、吉田がため息をつきながら話していたので、だんだん危機感が高まってきたのかなと。 記者B 一番っていうと難しいね。ただ、監督は言い訳をしないと言っているけど、言い訳はしている。時間がなくて落とし込めないとか。 ――今まで主力の顔触れはあまり変わりませんから、監督がやりたいサッカーは選手に伝わっているはずですよね? 記者A そこは、選手が監督の理想についていけていないんだと思う。去年の年末にハリルホジッチ監督にインタビューした時に、「日本人の弱点であるデュエルの強さを、それでも求めますか?」と聞いたら、「そこはスタンダードだ」と言うんだよ。 ただ、ライターの加部さんも言っているけど、ハリルホジッチ監督は日本人の弱みを改善することに重きを置いていて、完全に強みが消えている。それで中途半端なサッカーになっているから、もしかしたら”デュエル”へのこだわりが一番良くないところかもしれない。 記者B 浅野がヨーロッパに移籍して「球際や1対1の部分がまだまだ足りない」と気づいたと言っていた。それを聞くと、ハリルホジッチ監督の言い分は間違っていないと思うけど、国内組のそこを伸ばすのは難しいんじゃないかという疑問もある。 記者A であれば、海外組だけでチームを編成すべきだよね。厳しいデュエルを経験していない選手に、映像で見せたり、口で言っても分からない。 記者B 国内組も言い続ければ意識が変わるのかなと思うけど、いずれにせよ時間がかかる作業になる。 記者A 俺は意識の問題だとは思っていない。以前、全世界の高校生年代の選手がスペインに集まって、シャッフルして混合チームで大会をやったことがあるんだ。そこで日本人は、まったく目立たなかった。下手なんだけど、目立つのはイタリア人やドイツ人やスペイン人。 球際の強さやスライディングの深さが、段違いだった。習ったというより、サッカー文化が根付いている国で自然と身についたのものかなという気がして、ここは追いつけないんじゃないかなと思った。 記者B 日本サッカーは、そこをうやむやにしたまま来ているのかなと。それをハリルホジッチ監督が気づかせてくれている。『君たち、これでは勝てないぞ』と。 記者C そういう意味で言うと、育成なんだよ。育成のところで球際だったり、タックルの深さだったりを追求してこなかったツケが回ってきた。プレスのかけ方は上手くなったかもしれないけど、プレスして奪い切るところの厳しさがない。若年層を見ていてもそう感じる。
――――草の根でも感じますよね。ブラジル人やドイツ人、イラン人などとフットサルをすると当たりが厳しい。ゴリゴリ来ますから。 記者A そうそう、半端ない。とことん仕掛けてくるし、シュートもどんどん打ってくる。こっちが倒れそうなときもゴリゴリ身体を寄せてくる。やっぱり文化が違うんだと思う。だから、ハリルホジッチ監督が言っていることは間違っていないと思うけど、それがチームに落とし込まれていないのは感じるかな。 記者C 海外組は日常で経験しているから、ある程度やれるようになっていると思うけどね。でも、代表のスタメンは海外組で占められているのに、やっぱりデュエルに強くない。 記者B そこは試合勘じゃないかな。原口が良くて、本田や岡崎があんまりというのは、やっぱりそこが関係していると思う。でも、イラク戦に出場した柏木は、国際舞台になると厳しいなと思った。ハリルホジッチ監督が言うベースの部分が足りないのかなと。 記者A 柏木本人もショックを受けていたね。ここまでできないかって。まあ、行って来いの展開だったから厳しい面はあったけど、柏木の場合は浦和のサッカーに慣れすぎていると思う。浦和は柏木がボールを持ったら動くからね。 記者C 確かに、日本代表が今やっているサッカーでは、柏木は活きないかもしれない。 ――前線の選手はどうでしょう? 最近はクラブで出場機会を失っている選手が多く、試合勘が不足しています。つまり、決定力不足が続きそうな状況です。 記者B そうだね。だから、出ている選手を使ったほうがいいかもしれない。でもハリルは、「彼ら(主力組)を外して誰がいるのか」という話を自分でしていた。そう考えると……。 ――であれば、クラブでレギュラーを掴んだ大迫を呼んでもいいのでは? 記者B いきなり先発はないかもしれないけど、11月のオマーンとの親善試合では見てみたいね。――そのオマーン戦は、バックアップをテストする絶好のチャンスです。 記者C ハリルホジッチ監督は、南野や久保といった試合に出ている欧州組を招集すると言っているけど、国内組も試合に出ているんだからどんどん使えばいいと思うな。
記者B その判断は難しいよね。例えば、本田をベンチに置いてまで、国内組を使うのか。なんだかんだ言って、本田は一番点を取っているから。 ただ、一方で本田や香川の状況が劇的に改善されるとは思えないし、大迫は試してほしいかな。親善試合のオマーン戦では、積極的にテストしてほしい。 記者C オマーン戦の次はサウジ戦。ここが、ハリルホジッチ監督の進退が決まる一戦になるね。 記者B 引き分けでもダメ? 記者A 引き分けなら内容だね。今後に期待を持てるかどうか。記者C ただ、ここで勝っておかないと、来年がきつい。中東でのアウェー3試合があるからね。まず3月にUAE、6月にイラク戦がある。そして、9月に最終戦でサウジアラビアと対戦する。 ポイントはUAE戦とイラク戦。ここでオーストラリアやサウジアラビアに並んでおかないと厳しい。最後の2試合はホームのオーストラリア戦と、アウェーのサウジ戦。直接対決の2試合で勝ちを計算できるほど、今の日本の信頼度は高くない。――仮にハリルホジッチ監督を解任した場合、手倉森コーチが後任を務める可能性もあります。 記者C むしろ、手倉森コーチのほうが、思い切った采配ができるかもしれない。日本語でコミュニケーションを取れるし。 記者A コンディションが良い国内組を使う流れができるかもしれない。そういう面ではありかもしれない。まあ、サウジ戦の結果と内容次第だね。 ――最終予選のグループ2位以内に入れなくても、3位プレーオフがあります。そこに勝てば、北中米との大陸間プレーオフもありますから……。 記者A いや、大陸間プレーオフはきつい。勝てないよ。
――北中米代表は、おそらくホンジュラスやコスタリカあたりですよ? 記者A 勝てないかもしれないよ。ブラジル・ワールドカップの時だって、グループ第2戦を終えて1分1敗で最終戦のコロンビアに勝てばどうにかなるとか言っていたけど、コロンビアには勝てる可能性は低かった。日本人の気質というか、そういう雰囲気を醸し出すのは危険だと思うな。 記者B 確かに、今の日本がホンジュラスやコスタリカに勝てるのかなっていう不安はあるね。 記者A アジア勢は大陸間プレーオフで全然勝ってないからね。イランが唯一オーストラリアを倒しているだけで、あとは全敗。 記者B その前に、アジア3位のプレーオフに勝てるかですよね。そこで韓国とか来たらまずいし、ウズベキスタンもいる。 記者C まあ、そんな心配をする前に、サウジ戦だよ。絶対に勝利が必要。勝ったら解任はないだろうけど、引き分けで内容がまずかったら決断だと思う。サウジも力があるからね。試合を見ていると、FKはあるし、カウンターはあるし、ボールもある程度回せる。結構手強いよ。 記者A サウジアラビアは、この予選の流れに上手く乗っているからね。イラク戦やタイ戦ではあまり強さを感じなかったけど、オーストラリアに負けるかなと思ったら、引き分けに追いついたし。 記者B サウジに勝てますかね? 記者A ってなるよね。そう思ってしまう時点で、日本は弱くなっているんだなと感じる。ホームでサウジ戦と言ったら、例えばザッケローニ監督の頃なら「まあ、勝てるでしょ」という雰囲気があった。でも、今は負けるかもっていう空気も感じる。 記者B サウジ戦でもべタ引きになったらまずいですね。 記者A イラク戦のように前からプレッシャーに行くんじゃないかな。それでも点を取れなかったら、終盤に吉田のパワープレーに出るはず。 記者C でも、1-0で勝っていて終盤になったら、思いっきり守備を固めるでしょうね。そこで追いつかれるのだけは避けたい。 記者A いずれにせよ、サウジ戦に勝っても、厳しい状況は変わらない。ハリルホジッチ監督にとっても、綱渡りが続くね。