photo by Francesco Pierantoni via flickr(CC BY 2.0)

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 EU及びユーロ懐疑派が57.5%もいるイタリアであるが、マッテオ・レンツィ首相は彼の政治手腕が功を奏して、EU内でメルケル独首相、オランド仏大統領と並んで政治発言力をつけて来ている。

 その彼が、イタリアの選挙法と上院の改正に乗り出している。昨年4月に議会を通過した改正案の審判を12月4日の国民投票に委ねることになっているのだ。

 しかし、この件について不安要素が立ち上がっている。それは、この投票結果で「NO」が勝利すれば、彼の首相辞任は必至となり、これまで頻繁に首相が交代するイタリア政治に戻る可能性があるのだ。そして、ユーロからの離脱をスローガンに掲げているポピュリズム政党五つの星も政権争いに加わり、政局が不安定になる可能性がある。

◆レンツィは何をしようとしているのか?

 まず、レンツィが手をかけようとしているのが選挙法の改正である。それは総選挙の1回目の投票で一番多く議席を獲得した政党が過半数を満たさない場合に、2回目の投票で40%以上の投票率を獲得すれば、55%の下院議席数を確保できるとしたものである。また、3%以下の得票数の政党は下院に代表を送ることが出来ないという条項も予定されている。

 次に、上院の改正では、現行の315議席から100議席に減らし、その5議席は大統領によって選ばれ、21議席は市長の中から選任、残り74議席は地方代議員などから選出されるとしたものである。改正後の上院では内閣不信任案は提出できなくなる。(参照:『El Mundo』、『El Pais』)

 現在のイタリア議会は下院と上院が対等の権利を持っているため、下院の決議を上院で不服として審議にかけることが出来るのである。また、内閣不信任も提出できる。その為に、一つの法案が最終的に立法化されるまで余計な時間を費やさねばならないことが往々にしてあるという。レンツィ首相は上院はお飾り的な存在にして、実質的には下院だけの一院制にすることを目標にしているのである。

◆ポピュリズム寄りになるレンツィ

 問題は、この大胆な改正に他党がすべて反対しているのである。当初、この改正に賛成したベルルスコーニ氏の政党フオルツァ・イタリアでさえも反対に回っている。さらにはレンツィ首相の民主党内も意見が二つに分かれてしまっており、党内の反対議員の間では、下院の選挙法改正だけにして、上院の改正はしないようにという意見だ。

 これに対して、レンツィは国民から広く支持を集める攻勢に出た。公務員の1万人募集、270億ユーロ(2兆9700億円)を充てて厚生費及び年金の増額、法人税の27.5%から24%への減額をすると約束したのである。政府の歳出を増やして国民を満足させて、その見返りに国民投票で支持を得ようという作戦に出たというわけだ。

 また、国民の間で不満が募っていた「徴税請負人制度」の廃止も決めた。イタリアでは納税を請負人に任す制度を採用している。問題は、請負人は手数料を取ることであり、集めた税金を国に納めるまでの期間はそれを運用することさえできる。そして、高額納税者には寛大に対処して、その見返りを貰うといった癒着した事態にもなっている。その現状を知っている多く国民は、彼らの存在は不要だとしていた。この廃止案は五つの星の政策に挙げられていた。レンツィ首相はそれを横取りするかのように、この制度の廃止を決めたのである。(参照:『ABC』)

◆オバマの選挙アドバイザーを雇ったレンツィ

 そのポピュリスト顔負けの戦略が功を奏したのか、現段階では国民投票の賛否はほぼ互角と予想されているという。もちろん、まだどちらに票を入れるか決めていない人も15〜20%いると予測されている。そのため、レンツィも手を緩めていない。