「悪性インフレ」に備えるたったひとつの方法[日本の不動産最前線 第6回]

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財務省は17日、「国の債務管理の在り方に関する懇談会」において、日本の国債金利が1%上昇すると、民間金融機関などの含み損はGDPの13.5%に上るとの試算を公表した。

日銀が金融政策決定会合で「長短金利操作付き量的・質的金融緩和(QQE)」の導入を決めてから1か月が経過。政策の軸足がマネタリーベース(資金供給量)から金利へ移ったことに関し失望感を露わにする市場関係者も多い。はたして思惑どおりに金利はコントロールできるのか。物価目標の達成は、できるのだろうか。

日銀の政策が奏功し、アベノミクスが成功裏に終わり、良性のインフレで日本経済が本格的に回復軌道に乗った場合の不動産市場は比較的想像しやすい。一方で逆に悪性のインフレとなってしまったケースにおける不動産市場についてはなかなかイメージしづらいものだ。

今回は、前述した成長シナリオではなく、悪性のインフレ、簡単に言えば、物価が上昇しマネーの価値が下がる現象を伴う景気後退期におけるインフレ、すなわち「スタグフレーション」のケースについて、頭の体操として、インフレレベルや金利動向に伴う不動産市場への影響を考えてみたい。

リーマン・ショックの後、「国内・海外ともに経済・政治的に何が起きてもおかしくはない」と、突発的な事態に備える投資家が、実物資産である「金(ゴールド)」を保有する動きを見せた。

金は輸入品でありドルと連動するゆえ、80年代バブル期の円建て金価格はインフレ率に比例して上昇することはなかったが、2000年代前半には1,000円/グラム程度だった金価格は、2013年4月に5,339円の高値をつけたあと、現在4,700円台で推移している(16年10月17日時点、 田中貴金属・税込小売価格)。

これは「有事の金」として、円などの通貨から金へと資金が向かう逃避的・リスクヘッジ的な動きだが、こうした状況では、不動産にも実物資産としての期待が集まる。

一般論として、デフレ時には現金が強く、インフレ時には金や不動産など実物資産の価値が高まる。マネーという、それ自体では価値のない金融資産の信認が落ち、また各種要因から資源価格や食料の価格が上昇する状況下では、実物資産である不動産価格も相対的に上昇するとされる。

しかし、経済成長を伴わないスタグフレーションの下では、不動産は下落する。資源インフレやそれに伴う物価高により、たとえば収益物件の場合、修繕費などのコストが上昇うえ、入居者の生活コストが圧迫されることなどにより家賃に下落圧力がかかる。給与所得者の生活は苦しくなり、消費は減り、企業業績は悪化し、賃貸物件の賃料にも売買物件の価格にも下落圧力が働く。

こうなると収益物件でもマイホームにおいても、賃料収入の減少や所得の低下による住宅ローン破綻が懸念されよう。

さらに「金利上昇」を伴う場合には、ストレートに不動産価格の下落圧力となる。これは言うまでもなく、同支払額で払えるローン額が減少するためで、収益物件・マイホームともに、取得者の購入能力は低下する。変動金利で住宅ローンを借りている個人や収益物件のオーナーの破綻懸念も強まる。

1997年のアジア通貨危機時の韓国では、ウォン安、金利上昇といった深刻な景気悪化で不動産を手放す向きが急増、在庫物件が増加し不動産価格は大幅に下落した。

さらに、世界的な金融・経済クラッシュや地政学リスクがより顕在化するなどして危機的・突発的な事態が起きた場合には、不動産市場ではマイホームは売れず、賃料は下落傾向を示すことから収益物件の価格も下落。物価高の中で景気後退が加速していく。

円はもちろん、ドルやユーロなど先進国通貨の信認が揺らぐ事態にまで陥った場合には、実物資産である不動産の価格は相対的に上昇する。ただし、すべての物件が上昇することにはならないだろう。