宿で出会ったキラとマラ。突然の出会いだったためカメラを持ってなく、後ほどフェイスブック経由で送ってもらった。なぜかこの頃は金髪ではなかった模様・・・。なぜだ!?

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46歳のバツイチおじさんによるノンフィクション巨編「世界一周花嫁探しの旅」、今回の滞在地は7か国目インドです。前回、地元のインド人に声をかけられ一緒に飲みにいくも、たかられ舐められ殴られたバツイチおじさん。二度と舐められないよう野生動物のように強くなることを決意したようですが……。今回、久々にマドンナが登場。恋するズンドコおじさんに新展開はあるのか!?

【第31話 疎外感は突然に】

インドの古都マイソールで知り合った「通称ジャイアン」と酒を酌み交わすも、「おごってくれ」とせがまれ、きっぱり断ると道の真ん中で突然殴られた。完全に舐められてしまった俺は、野生の力を高める“漢(おとこ)磨き”をインド旅のテーマに決める。まずは体を鍛えて、肉体改造を目指すことにしよう。女の子にモテるため、そして花嫁をゲットするためには動物として強いオスにならなければならない。そんな誓いを立てながらインドの最南端を目指すことにした。

マイソールから南を目指す格安ローカルバスに飛び乗り、12時間近く揺られた。目的はコーチンという街。途中、コインバトールという街でバス停近くの安宿に一泊し、翌朝にはまたローカルバスに乗りコーチンを目指した。それから約1日バスに揺られ、いくつかバスを乗り換え、コーチンに到着する頃には夜の9時を過ぎていた。

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到着したコーチンのバス停は真っ暗で、この辺りには安宿もなさそうだ。夜も遅いのでトリップアドバイザーで安くて評価の高いフォートコーチンの宿を予約し、リキシャに乗って向かった。宿へ到着する頃には11時を過ぎていた。

オーナー「日本人のリューイチーローゴトーかい?」
俺「はい、遅くなってすいません」
オーナー「大丈夫大丈夫。慣れてるから。それより500ルピー(750円)の部屋とクーラーつきの900ルピー(1350円)の部屋どっちがいい?」
俺「見せてもらってもいいですか?」

一泊500ルピーの部屋は個室で意外と綺麗だった。クーラー付きの魅力に負けそうになったが、旅を長く続けるためには1円でも節約しなければならない。

俺「500ルピーの部屋でお願いします」

しかし、南インドの夜は思いのほか蒸し暑かった。

気温は38度を超え、まったく寝ることができない。
水を飲んでも飲んでも喉が乾く。
水のシャワーを浴びても30分ともたない。
この暑さは人生の中で経験したことのない暑さだった。
しかも、蚊と蝿がたくさんいる。
なのに蚊帳がない。

結局ほとんど眠れないままコーチンでの初めての夜を過ごすこととなった。

翌朝、ボーっとしながら宿のルーフトップで朝ごはんを食べていると――。

白人女性二人組「おはよう!」
俺「…おはよう!」

超キレイでスタイル抜群の白人二人組が話しかけてきた。どうやら同じ宿に泊まっているらしい。
俺のテンションはマイナス100からプラス1000まで急上昇した。

俺「どこから来たの?」
白人女性「私たちドイツから来たの」

二人の名前はキラとマラ。ドイツのハンブルク出身で、ダイムラー自動車で働くエリートOLらしい。
二人とも透き通るような白い肌で、吸い込まれるような青い目だ。
もちろん、髪の毛は金髪。
身長も170センチ近くあり、スタイル抜群。
旅の解放感からか、肌の露出もやけに激しい。

マラ「ハ〜イ! あなたはどこから来たの?」
俺「日本だよ」
マラ「素敵〜。日本のどこ?」
俺「東京」
キラ「東京! クール!! 一回行ったことあるわ。キレイな街だよね」
俺「ドイツも素敵なとこだよね」
キラ「ありがとう」
俺「小学生の時、夏休みの1か月間、うちの家に交換留学生が泊まったことあるよ」
マラ「えー! クール!!」

なんかいい感じだ。
会話がうまい具合に噛みあう。
話はさらに盛り上がった。

キラ「私、日本人大好き。だって、とっても優しいんだもん」
マラ「私も大好きよ」

おーーーーーーーー!
なんだろう? この内なる興奮は。
日本の男性諸君ならきっとわかってもらえると思うが、日本男児は白人にどこかコンプレックスがある。
特に白人女性。
いわゆるパツキン女性だ。
彼女たちは全体的に背が高くスタイル抜群。
167センチという身長がコンプレックスの俺にとって、白人女性に対して内なる憧れを秘めているのはたしかだ。

俺「どんな予定なの?」
マラ「今日、バックウォーターツアーで船に一泊して川下りをする予定なの」
俺「あ、もう出ちゃうんだ」
マラ「うん。あなたは?」
俺「昨夜着いて、全く予定はないよ」
マラ「私たちと来る?」
キラ「おいでよ!」

きたーーーーーーーーーーーー!
コーチンに着いて間もないのに、こんなチャンスが訪れるなんて。
神様、あなたはなんて気まぐれなんだ!

俺「行きたい!」
マラ「じゃあ、予約とってくれた宿の人に相談してみる」

すると、宿のオーナーが俺のとこにやって来た。

オーナー「ゴトウ、申し訳ないが昨日で予約は締め切りなんだ」
俺「あ、そうなんですね」
オーナー「明日以降だったら大丈夫だけど」
俺「いや、今日、彼女たちと行きたいんだけど」

すると宿のオーナーは笑みを浮かべた。

オーナー「キキキキキキキキーーーーー!」

彼は甲高い変な声で笑い出した。
ブキミな笑い声だ。

オーナー「美女二人組と一緒に船に乗りたいんだろう?」
俺「……え? いや、誘われたから」
オーナー「キキキキキキキキ」
俺「……そ、そうそうそう!バレたか。あははは(笑)」
オーナー「キキキキキキキキ。気持ちはすごくわかるけどね。残念だけど無理なんだ」
俺「そうですか。うーーん。残念!」
オーナー「君の代わりにイギリス人の60歳のおじいさんが彼女たちと一緒に船に泊まるよ。キキキキキキキキキー」
俺「いいな〜クソジジイ!」

神様の気まぐれはただの気まぐれで、そこまで俺に味方をしてくれなかった。

キラ・マラ「ごっつ〜、またどこかで会おうね〜」

そう言うと、ドイツの女神二人組はいい匂いを残しながら去って行ってしまった。

その後、洗濯を済ませると、フォートコーチンの街に散歩に行くことにした。
フォートコーチンはカリブ海に突き出た半島部分にあり、植民地時代にはポルトガル・オランダ・イギリスに支配されていた港町で、現在はインド有数の国際貿易港となっている。街並みはヨーロッパの古い街に来たかのような錯覚を起こすほど、インドっぽくなく、白人のツーリストが多い。ヴァスコ・ダ・ガマの墓がある聖フランシス協会や、コーチン独自の漁法が見られるチャイニーズ・フィッシングネットなど一通りの観光をして1日を過ごした。

⇒【写真】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1220580

翌日もまた同じ街を散歩した。暗くなるとでフォートコーチンに一軒しかない酒屋に行ってキングフィッシャービールを購入し、宿に戻って飲んだ。
夕食後、ルーフトップでくつろいでいると、イギリス人の老紳士が話しかけてきた。

老紳士「一人で旅をしてるのかい?」
俺「はい」
老紳士「私も一人旅で世界を放浪してるんだよ」
俺「へぇ〜凄いですね。どのくらいの期間ですか?」
老紳士「半年くらいを計画しているんだ。私は60歳なんだがね、定年になり、子供たちも大きくなったのでやっと旅ができるようになったんだ」
俺「素敵ですね〜。今日はどうしてたんですか?」
老紳士「バックウォーターツアーに一泊二日で行ってきた」

バックウォーターツアー?
あれ……?
もしかして……。

俺「もしかして、ドイツ人女性と二人組と一緒ですか?」
老紳士「ああ。3人だけの旅だったよ。なんで知ってるんだい?」
俺「宿のオーナーに聞いたんです。どうでした?」
老紳士「すごく静かで、緑もキレイだし、夜は星もキレイだったよ」
俺「ロマンチックですね」
老紳士「ああ」
俺「どうでした? 女の子二人との旅は?」
老紳士「彼女たち、夜はお酒を飲んで大騒ぎしてたよ。私は疲れて寝てしまったけどね」
俺「超羨ましい〜! 最高の旅じゃないですか」

すると老紳士は鼻の下を伸ばしながら、少し照れくさそうに髭をさすった。

老紳士「一生懸命頑張ってきたから、たまには人生のご褒美をね」

そう言うと、チャーミングな笑顔でウィンクをした。

渋い!
なんて渋いんだ!
英国紳士というだけで10倍増しになってると思うが、とにかく渋い。
白人男性だと何をやってもカッコ良く見えてしまう。
これも白人コンプレックスの表れなのか?

オーナー「キキキキキキキキキー」

聞き覚えのある甲高い笑い声とともに、宿のオーナーが俺たちの席にやってきた。

オーナー「やぁ、イギリスの紳士、女の子との旅は楽しかったかい? キキキキーー」
紳士「……あぁ、まあね」
オーナー「キキキキキキキキー。いいね〜」
紳士「……」
オーナー「3人で何を楽しんだんです? キキキキキキッ」
紳士「星を見たりしていたよ」
オーナー「本当に〜? ただそれだけ〜? キキキキキキッ」
紳士「ああ。早く寝たからね」
オーナー「寝た? 一緒に?」
紳士「……いや、一人で寝たよ」
オーナー「一人で? キキキキキキキ? でも、楽しかったんだよね?」
紳士「ああ。楽しかったよ」

そう言うと、オーナーは隣のテーブルに移動し、ローカルの友達と談笑し始めた。
イギリスの老紳士は何やら考え込んでしまったのか、急に黙り込んでいる。
そして――。

紳士「おい君、ちょっといいか?」
オーナー「へ? なんですか?」
紳士「……君、私を少しバカにしてないか?」
オーナー「……」
紳士「私はこれまで真面目に人生を生きてきた。今回の旅は自分へのご褒美だ。私には妻も子供も孫もいる。決してドイツ人女性の二人組と、そんなやましい気持ちで旅はしていない!」
オーナー「……」
紳士「失礼な態度を謝りなさい!」

どうやら彼の「キキキキ」というブキミな笑い方が彼の逆鱗に触れてしまったようだ。
それにしてもイギリス紳士はプライドが高い。
俺にはあんなにチャーミングな笑顔で本音を話してくれたのに。

紳士「謝れ!」
オーナー「……すいません。そんなつもりはなかったんです。本当にすいません」
紳士「…わかればいい」

俺はこう思った。

いやいや爺さん、カッコつけすぎ。
そこはぶっちゃけて一緒に笑えばいいじゃん。男同志なんだし。
宿のオーナーのブキミな笑い方はただの天然だよ。
天然にブキミなだけなんだよ。

ルーフトップ全体に不穏な空気が蔓延したため、いたたまれない雰囲気になった。

紳士「じゃあ私は寝る。おやすみ日本の友達」

そう言って彼は部屋に戻っていった。
空気はさらに重くなった。
しょうがねーな。
ちょっとは空気を緩めるか。

俺「オーナー、俺は思うんだけど、あの紳士は美女との旅を本当は楽しんでたと思うよ」
オーナー「そう思うかい」
俺「うん。男なら絶対楽しかったと思う。だって、あんな美女二人だよ。俺なら24時間勃起してるね」
オーナー「そうだよな、キキキキキキキキキー!」
俺「キキキキーーー! そうだよ。キキキキッ」
オーナー「キキキキーーー! お前、愉快なやつだな〜! キキキキッキキキッ!」

俺はブキミな笑い方を習得することで、宿のオーナーと仲良くなった。
男と仲良くなるのは本当に簡単だ。
女と仲良くなるのはあんなに難しいのに。

翌朝、俺もバックウォーターツアーに参加した。
この宿からツアーに参加するのは俺だけのようだ。
もしかしたらあの老紳士のように楽しいハプニングが起きるかも……。
そんなやましい気持ち1000%を胸に秘め、3時間かけてミニバンでアレッピーの水郷地帯に向かった。
船は10人乗り程度の小舟で、船乗りが舵を切り、共に旅をする水先案内人となった。
一緒に乗るメンバーは、イギリス人の初老の男性一名とオーストラリア人の白人女性だった。

白人女性の名前はケリー。オーストラリアのジャーナリストでアメリカやオーストラリアのカルチャー雑誌にコラムを書いている作家だ。
インドを旅しながらインド人の結婚観についての記事を書いているらしい。

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ケリー「あなたも記事を書いてるの?」
俺「うん。旅出る前に離婚しちゃったのね。で、世界一周花嫁探しというタイトルで記事を書いてるんだよね」
ケリー「ははは、面白いね。今度、記事見せてよ」
俺「後でURL送るよ」

バックウォーターツアーはヤシの木の間の静かな河川を6時間ほどかけ、ゆっくりと下る。途中、スパイスの森という浮島に降り、そこで生活する人の家にお邪魔し、ケララ州スタイルの昼ご飯をいただく。バナナの葉っぱの上に盛られたべジタリアンカレーだ。

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俺「何これ、この野菜カレー、死ぬほど美味い! ケリー、これ倒れるほど美味いよ」
ケリー「ふふふ(笑)。これ、南インドの一般的な料理よ」
俺「ほんとに感動した」

小さい頃から野菜嫌い。カブトムシの餌の味がするという理由でキュウリが食べられなかった。しかし、こんなおいしい野菜がこの世の中にあるなんて!

俺「おかわりいいですか?」

出された野菜料理を一粒残らず食べた。
バナナの葉っぱはスパイスの森に返された。
エコだ。

「これが究極のオーガニックスタイルか!」

俺は感動で小さく魂が震えた。

夕方になり、半日のバックウォーターツアーが終わった。

ケリー「ごっつ、フェイスブックやってる?」
俺「やってるよ」
ケリー「交換しようよ。記事のURL送って!」

お〜! 初めて女性からフェイスブックの交換を申し出てきた。しかも、白人女性。
二人は連絡先を交換し、各々の宿に戻った。

コーチンの有名な観光スポットはほぼほぼ行ったので、そろそろ次の場所に移る計画を立てる。
ここより南にある観光地をロンリープラネットで調べると、バルカラビーチという場所が欧米人に人気があるようだ。
ネット情報によると、南インド最高のビーチとも書いてある。

南インドの楽園ビーチに寝そべるパツキン女性。
もしかしてトップレスかもしれない。
レスなのはトップだけではないのかもしれない。
バルカラビーチっていう名前もピーターバラカンみたいでいい。
俺、ピーターバラカン大好きだし。
とにかく名前が気に入った。

よし、バルカラビーチに行こう!

俺「オーナー、急でごめん。俺、今日、宿出るわ」
オーナー「えー! まじか。もう一泊しろよ」
俺「うーん。でも、この辺の観光は大体終わったし」
オーナー「もう一泊しろって。秘密の情報教えるから。今夜、お前の隣の部屋にフランス人の可愛い女の子が一人で泊まるぞ。もう一人、20代の韓国人の女の子も泊まる予定だよ。たぶん可愛いぞ〜。キキキキキキキキキーー」

こいつ、俺のスケベ根性を完全に見抜いている。
確かにフランス美女とジュテームな夜は魅力的だ。
韓国美女とアニョハセヨもいい。
このまま残ろうか?
旅を続けるべきか?
まだ見ぬフランス美女や韓国美女とビーチに寝そべる白人美女のトップレス、どっちがいい?

「やっぱり水着姿の金髪美女かなあ……キキキキキキキキキキーーーー!」

俺は心の中でブキミな笑いを浮かべ、スケベ根性全開でよりいやらしい方向に舵を切った。

俺「オーナー、悪い。俺は旅を続けなきゃいけないんだ」

スケベ根性はひた隠しにし、ちょっとカッコつけてそう言い放った。すると――。

オーナー「バルカラビーチで金髪美女の水着が見たいんだろう? キキキキッ? あそこはいいぞ〜。美女が集まるビーチだよウキキキキキキキキッ!」

だめだ。
完全に見抜かれてた。

俺はオーナーとにやけ面で握手をし、格安ローカルでバルカラビーチを目指した。
目的は金髪美女とビーチで寝そべるため。
バスをいくつか乗り継ぎ、バルカラビーチに着く頃には夕方4時を過ぎていた。
安宿を探していると「宿泊客は1日2回のヨガ無料」という看板の宿を見つけた。

「あ、金髪美女でうっかり忘れてた。俺、インドで漢を磨くために体を鍛えなきゃいけないんだ!」

インドといえばヨガ。
インドでの旅のテーマは“漢磨き”。
ここでヨガをしながら、なおかつ金髪美女と知り合えれば最高じゃないか。
スラムダンクの桜木花道だって、バスケを始めたきっかけは晴子ちゃんだし。
俺はここでの滞在をイタリア人オーナーが経営する一泊500ルピー(750円)の宿に決めた。

「ここで肉体改造に取り組むぞ!」

でも、まぁ漢磨きは明日からだ。
まずはビーチに寝そべる金髪美女だ。
俺は急いでバックパックを部屋に置き、シャワーを浴び、素早く水着に着替えると、急いでビーチに向かった。
果たして南インドで一番のビーチで美女と知り合いになれるのか?

バルカラビーチは南インド最高のビーチという噂通り、普通のビーチとは少し違っていた。
そびえ立つ断崖絶壁の下に一面に続く美しすぎるビーチ。
アラビア海に面する隠れ家的な楽園ビーチは、海外ドラマ「LOST」のロケ地のような秘境感があった。

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俺はその美しい景色に見とれながら険しい崖を下り、ビーチに到着した。

「おー! ここは……パラダイスか?」

景色も美しいが、それ以上に美しいのは、たくさんの白人水着美人。
しかもほぼ全員金髪だ!
トップレスの美女がいないのは残念だが、よく見るとアジア人は一人もいない。

「あれ? ……ここ、アウェー??」

あんなに憧れたパラダイスなのに、急になんとも言えない疎外感が芽生えた。
スケベ根性はMAXなはずなのに、なぜか上がらない俺のテンション。
暗い顔でキョロキョロしながら、46歳のおじさんは一人ビーチを歩いた。
どう考えても挙動不審のぬるっとしたおじさんだった。
念願のパラダイスにいて、なんだこのせつない気持ちは……。

「どうした俺?」

この、突然芽生えた疎外感の原因。
それは、やはり白人コンプレックスだった。

手足が長い。
色が透き通るように白い。
背が高い。
日本人のちんちくりんの中年がモテるわけがない。
潜在的に感じていたこの卑屈な思いが、パラダイスのど真ん中で突然顕在化した。
俺はただの旅人。
ただのおっさん。
167cmの卑屈なおっさん。
だらしない体のバツイチおじさん。

この楽園は、今の俺にはハードルが高すぎる。

ゴーーーーーーーーーーーー!

音につられ空を見上げた。
空には一機の飛行機が白い飛行機雲を出しながら飛んでた。
何も恐れず飛んで行く飛行機の勇姿が眩しかった。
すると突然、スタジオジブリの名台詞が頭によぎった。

「飛ばねぇ豚は、ただの豚だ」

確かにそうだ。
何もやらないうちから白旗を上げていたら花嫁なんて出会えるはずがない。
こんなことじゃダメだ!
俺には後がないんだ!
やるしかない。
何をやるんだ?
いや、何でもいいからやるしかない。
紅の豚の主人公ポルコは豚だけど外国人のイイ女にモテていたじゃないか。
よし、俺だって。

そう心の中でつぶやくと背筋をしゃんと伸ばした。
そして、ビーチにいる二人組の水着姿の金髪美女を見つめた。
めちゃくちゃ美人だ。
ちょっとたじろいでしまう。

「よし、行くぞ……」

俺はどんぐりまなこをカッと見開き、眼力を強めに設定して、彼女たちを見つめ続けた。
ダメでもともと、せめて挨拶だけでもしよう。
俺の根拠のない自信を感じたのか、殺気みたいなものを感じたのか、
美女たちもまたセクシーな目で俺を物珍しそうに見つめ返している。

「オーーーーー! いける!いける!」

俺は勇気を振り絞り、二人組の美女に近づいて行った。
すると――――。

美女「あーーーーー! ごっつ!」
俺「え?」

自慢じゃねーが、こんな美人知らねーぞ。

マラ「ごっつ、私よ私。コーチンで宿が一緒だったマラとキラよ」
俺「おーーーー! こんなとこで会うなんて!!」
キラ「すごーい。運命的〜。ここ座んなよ」

なんと、イギリス老紳士とバックウォーターツアーに行ったドイツの女神二人組だった。
まさか、こんなとこで再会するとは。
俺は水着姿の女神の隣にポツンと座った。

俺「バックウォーターツアーどうだった?」
マラ「うん。一泊二日は長すぎたかな」
俺「そうだよね。俺、そう思って半日にしたんだ。そういえばあのイギリス人紳士はどうだった?」
マラ「紳士? あーあのスケベなおっさんね。やたら、気持ち悪い感じで話しかけてくるから、途中から完全無視して二人で盛り上がってたの」
俺「えっ、あのおっさんスケベなの?」
キラ「そうよ。私たちが着替えようとしてる時、密かに見てるし」
マラ「ねーー。キモいよね〜」
俺「………………」

あのイギリスのクソじじい……。
あんなにカッコつけてたのに、ただのスケベじゃねーか。

白人男子二人組「ねぇ、君たち二人組?」
マラ「そうだけど」
白人男子二人組「よかったら今晩一緒にご飯でもどう?」
マラ「ごめんね〜予定があるの」

どうやらイギリス人のヒッピーがナンパしてきたようだ。
あの、俺、隣に座ってるんですけど。

俺「モテるね〜さすが!」
マラ「そんなことないよ」

すると、今度は別の白人二人組がナンパをしてきた。
今度はアルゼンチン人らしい。
おい、白人男子たちよ。
君たちの目の前に日本男児が座ってるのが見えないのか?

アルゼンチン人 屬茲Α ずいぶん焼けたね」
マラ「そう? もうちょっと焼きたいけど」
アルゼンチン人◆嵌佞竿咾匹Δ靴茲Α」
マラ「キラ、何が食べたい?」
キラ「何でもいいよ」

どうやらこの二人とは事前に約束しているようだ。
そりゃそうだ。
こんな美女二人を世の男たちがほっておくわけがない。

マラ「ねぇ、ごっつ。よかったら今晩一緒にご飯食べない?」
俺「え! いいの?」
キラ「もちろんよ」
マラ「ねぇ、彼、日本の友達なの。晩御飯一緒に食べてもいい? 私たちラストナイトだし」
アルゼンチン人 崛瓦問題ないよ。一緒に食べよう」
俺「あ、ありがとう」
アルゼンチン人 屬犬磴◆▲フェイタリアーノに夜の7時に待ち合わせね」
俺「今日、初日で場所がわからないんだけど」
アルゼンチン人◆屬海海ら見える崖の上のレストランだよ」

ということで、ドイツの女神二人組とアルゼンチン人男子二人組の夕食に参加することとなった。
俺は宿に戻ってシャワーを浴び、頭にワックスをつけ髪の毛を立てた。
これで少しは身長差が縮まったはず。

「バルカラビーチの初めての夜としてはいい流れだ」

俺は夜7時ぴったりにカフェイタリアーノに到着した。

⇒【写真】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1220591

到着すると俺以外は皆、席についていた。

マラ「さすが日本人、時間に正確だね〜(笑)」
俺「あ、ごめん。みんな集まってたんだ」
マラ「私たちも今着いたとこよ。お酒頼む?」
俺「インドなのにお酒飲めるんだ」
アルゼンチン人 屮丱襯ラビーーチはツーリストプレイスだから飲めるんだよ」
俺「おーー。パラダイスだな」
キラ「まさに天国よここは。いいとこよね〜」

皆にお酒が運ばれてきた。

アルゼンチン人◆屬犬磴 ▲泪蕕肇ラのインドラストナイトに乾杯!」
全員「かんぱ〜い!」

そう言ってディナーが始まった。
いい感じだ。
とてもいい感じだ。
パラダイスに美女とイケメン。そしておじさんが一人。
いや、でも卑屈にならなくてもいい。
美女がディナーに誘ってくれたんだから、俺にもチャンスはあるはずだ。
しかし、俺はここで圧倒的な劣等感を抱くこととなった。

「あれ? なんでだ? 彼らの英語が全く理解できない!」

海外留学や海外一人旅をした人ならきっとわかってもらえると思うが、白人同士の英語のスピードに全くついていけない。
スピードや発音がアジア人と全然違う。カブトムシとゴキブリぐらい違う。アジア人の英語はなんとなく片言同士で通じるのだが、このグループトークは全く聞き取ることができない。アルゼンチン人もドイツ人も英語は第二外国語のはずなのに。
キラとマラは、俺と向き合って話している時は、俺に合わせ、ゆっくりと聞きやすい発音で話してくれていたことを初めて理解した。

マラ「ごっつごめんね〜。こっちで盛り上がっちゃって」

マラもキラも俺を気遣ってくれて優しいな。気を使わてごめんなさい。

俺「あ、気にしないで。俺の英語力の問題だから」

初めはマラもキラもたまに通訳っぽくこっちにわかりやすいように説明してくれたのだが、途中からお酒が入り4人で会話が盛り上がると、もう俺の存在を忘れたかのようにハイスピードの英語トークで盛り上がっていった。
俺は、何を言ってるのかずっと耳をそばだて聞き入るしかなかった。
結局、ほとんど何も喋れないまま、写真を撮ることもなく、惨敗のままディナーは終わった……。

マラ「ごっつ、ありがとうね。また、ドイツに来たら連絡ちょうだい」
キラ「じゃあね、ごっつ。おやすみ」

俺はマラとキラとハグをした。
白人女性とハグをするのは初めてだ。
抱き合った時、少し胸が当たってテンションが上がった。
でもそれは、痛みをともなう哀しきテンションだった。

アルゼンチン人 屬海慮紂俺たちの部屋で飲もうぜ」

アルゼンチン人二人組は、マラとキラを連れて部屋に向かった。
そこに、俺は誘われなかった。
ま、そりゃそうか。

俺は一人、月夜の崖の上を黙って歩いた。海から流れてくる夜風が気持ち良かった。

「英語が喋れないと、白人女性と仲良くなることなんてできないな」

セブ島で猛勉強し、なんとか習得した英語だったのに。
東南アジアではなんとか通じた英語だったのに。
ここに来て、高く険しい言葉の壁を改めて感じた。

「英語、何とかしないとやばいぞ、これ。漢を磨いてる場合じゃないかも」

俺は割と絶望にも似た感覚で宿に戻り、べッドに横たわった。
そして、スマホを見ると一件のメッセージが入っていた。
バックウォーターツアーに行ったジャーナリストのケリーからだった。

ケリー「フェイスブック見たよ。バルカラビーチに来てるんでしょう? 私も昨日からここにいるの。良かったら明日ご飯でも食べようよ!」

おーーーーーー!
なんかいい流れが来てるぞ。
絶望に打ちひしがれていた夜に、ケリーからの誘いがタイミングよく来るなんて。
恋の神様はまだ俺を見捨ててないのかもしれない。

南インドで一番の楽園、バルカラビーチ。
どうやらここで新たな恋の物語が生まれそうな予感がした。

次号予告『ケリーとのデートでまさかの展開!? 南インドの楽園でついに恋が動き出す?』を乞うご期待!

●後藤隆一郎(ごとうりゅういちろう)
IVSテレビ制作(株)のADとして「天才たけしの元気が出るテレビ!」(日本テレビ)の制作に参加。続いて「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の立ち上げメンバーとなり、その後フリーのディレクターとして「ザ!世界仰天ニュース」「トリビアの泉」「学べる!ニュースショー!」など数々の番組制作に携わる。現在はディレクターを休業し、「大体1年ぐらい」という期間限定で花嫁探しの旅に一人で挑戦中。バツイチ、46歳、通称ごっつ。

― 英語力ゼロの46歳バツイチおじさんが挑む「世界一周 花嫁探しの旅」 ―