テレビを通してスポーツを観戦する環境に恵まれていない国。日本が抱える特異性は、海外を旅することで浮き彫りになるが、この一件はその最たる例になる。一刻も早く改善すべき問題だと、これまでたびたび述べてきたが、そうした中で出現したのがDAZN(ダゾーン)だ。

 Jリーグと2017年から年間200億円で10年契約を結んだとされるスポーツのライブ中継サービスが、日本の貧しい観戦環境を解消する救世主になれるのか。いずれにせよ、お茶の間観戦の主流が、テレビからネットへ傾く流れに、拍車が掛かることは確かだろう。

 苦しかったJの各クラブの財政は、これで多少なりとも潤う。その増えた分をどう使うか。問われているのはそこになるが、その前に正しておくべき問題がある。

 10年間で計2000億円もの大金を支払う出資者の求めだ。従来のテレビ局が視聴の対象にしていたのが日本在住者であるのに対し、DAZNは世界。Jリーグは日本の国内リーグながら、世界の人の目にさらされることになる。DAZNが求めているのは高い商品価値。より高度なエンタメ性だ。

 思い出すのは92−93シーズンの欧州だ。チャンピオンズカップは、その拡大と発展を願い名称をチャンピオンズリーグ(CL)に変更。世界的な会社をスポンサーに従え、華々しい大会へとリニューアルした。

 大会は年々肥大化。ファンの関心も、欧州から世界へと一気に拡大した。しかし名称を変更し、飾り付けを施しただけで、世界的なイベントに発展したわけではない。

 魅力的なサッカーを提供しようと、各クラブがファンの目を意識したことにある。よいサッカー、面白いサッカーを披露しようとする高い姿勢だ。CLが始まった頃、欧州のサッカーは、守備的サッカーに浸食された状態にあった。それが年々、攻撃的サッカーの勢力が拡大。現在に至っているが、それと共にサッカーのレベルも上昇。CLは最先端のサッカーを提供し続けている。もちろん、96−97シーズンに施行されたボスマン判決の内容(移籍の自由、クラブ選択の自由等)も見逃すことはできない。それを機に、それまで3人だった外国人枠が事実上撤廃され、世界の一流選手がCLの舞台に結集したことも人気に拍車を掛けた。

 一流クラブはよい選手を奪い合う格好になったが、各クラブが真っ先にこだわったのは選手ではなかった。監督。よい監督のいるクラブによい選手は集まる。よい監督は、クラブの信頼性を高める上で欠かせぬ存在になっていた。

 いま、その傾向を示しているのが中国Cスーパーリーグ(CSL)だ。各クラブの監督名を以下に列記してみた。

 広州恒大=ルイス・フェリペ・スコラーリ(ブラジル)、上海緑地申花=グレゴリオ・マンサーノ(スペイン)、上海上港=スヴェン・ゴラン・エリクソン(スウェーデン)、河北華夏=マヌエル・ペレグリーニ(チリ)、広州富力=ドラガン・ストイコビッチ(セルビア)、山東魯能=フェリックス・マガト(ドイツ)、天津泰達=ジャイメ・パチェコ(ポルトガル)、杭州緑城=ホンミョンボ(韓国)など、枚挙にいとまがない。

 2部でも、武漢卓爾=チロ・フェッラーラ(イタリア)、天津権健=ファビオ・カンナバーロ(イタリア)、深圳市=クラレンス・セードルフ(オランダ)など、知名度の高い人材が目に止まる。

 世界的に知られた監督の数は年々、増えるばかり。とは、18日に発売される新刊「監督図鑑」を制作する過程で改めて実感したことだが、その存在は、各クラブ及びCSLのステイタスアップにそのまま直結している。

 中国人選手のレベルは確かに、日本人選手より劣る。しかし、アジアチャンピオンズリーグ等の、近年の結果を見れば、リーグの総合的なレベルはJリーグを上回ると推察できる。世界の人から見て、どちらの方が見たいリーグか。魅力的に見えるか。DAZNがCSLといくらで契約したか、定かではないが、Jリーグを上回っているものと推察できる。

 Jリーグに欠けている要素は、CLのこれまでの経緯を見ても、CSLを見ても明らか。お金をかけるべきポイント、増えた予算の使い道は見えている。

 Jリーグのサッカーは、率直に言って世界の流れに逆行した状態にある。概して守備的。だが、それを問題だと口にする人は少ない。浦和レッズとガンバ大阪が争い、延長PKで浦和が勝利したルヴァンカップ決勝。レッズファンには、さぞ、たまらない優勝だったに違いない。だが、第3者にとってはどうなのか。DAZNがその試合を中継していたなら、視聴対象は、世界全域に広がる。それを見た世界のファンは、どんな反応を示すだろうか。

 直近の課題だと思う。勝利の追求と共に、よいサッカー、面白いサッカー、魅力的なサッカー、進歩的なサッカー、より見栄えのいいサッカーを目指すべきなのだ。その正当性はCLの進化の歴史を振り返れば一目瞭然。そのためには、よい監督の存在が不可欠。まずその獲得に、お金費やすべき。よいサッカーはよい監督によって導かれる。よいサッカーを追求しない限り、Jリーグは世界に置いていかれる。DAZN参入を、日本のサッカーを変える転機にして欲しいものである。