『言いにくいことをハッキリ言っても好かれる人の習慣』(能町光香/すばる舎)

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 言いたいことを言えずに、つい飲み込んでしまった、という経験は誰にでもあるだろう。角を立てないように、穏便に済ませるためには、言わずに我慢することも必要に思えてくる。ささいなことになればなるほど、その傾向は強くなるのかもしれない。

 だが、『言いにくいことをハッキリ言っても好かれる人の習慣』(能町光香/すばる舎)のなかで、コミュニケーションにおいて「ハッキリと伝える」ことこそが、「自分のためだけではなく、今後の相手との関係をよくするため」にも重要だと、著者の能町光香 氏は強調する。

 人材育成コンサルタントとして活躍する能町光香氏は、ベストセラー『誰からも「気がきく」と言われる45の習慣』(クロスメディア・パブリッシング)で話題を呼んだ人である。外資系企業で社長や重役の秘書(エグゼクティブ・アシスタント)を務め、独立。日本では数少ない上級米国秘書検定の資格保持者だ。

 国際社会の第一線で活躍した秘書だからこそ巡り会えた、「ハッキリ言うことで、かえって好印象を与える人」をつぶさに観察し、その共通点を探りだした本書。ハッキリ意思表示をする人は「自分軸」を持っていると、能町氏は分析する。「自分軸」を持つ人は、自分の魅力を知っているため、自信に満ちあふれている。そのため、ハッキリと言いにくいことも言えるようになるという。この「自分軸」を見つけるために、他人を基準にした生き方を見直す必要があると著者は説く。

 たとえば、いつも遅刻してくる相手に「なんとかしてほしい」と思っていてもなかなか言い出せず、逆に、笑顔で「大丈夫」と答えてしまうというケースが挙げられている。この場合、(1)相手から嫌われずにすむ、(2)相手を傷つけずにすむ、(3)相手から反論を受けずにすむ、という他人を基準にした価値基準に陥って、大目にみているという。だが、「人生の岐路に立つような重要な場面では、遅刻は御法度である」と、ハッキリと伝えることで、相手の「人生をプラスに導いていくこと」につながると著者は説く。

 そのためには、以下のような「6つの心のクセ」を手放すことで、相手の価値基準に合わせるのではなく、「言いにくいことをハッキリ言う」ことができるようになると著者は強調している。

(1)「どうせ私なんて……」という自己否定感
(2)「みんなから好かれないといけない」という八方美人な態度
(3)「争いたくない」という平和主義
(4)「いい人でいたい」という自己犠牲
(5)「好き嫌い」にとらわれる視野の狭さ
(6)「みんないい人」と思いたい性善説

 本書を読むと「言いたいことを言う=攻撃ではない」ということがよくわかる。「一度自分を表現する喜びを感じられたら、あとは『こわさ』よりも『嬉しさ』のほうが少しずつ大きくなっていきます」と、著者はしみじみと語っている。相手の意向を気にするあまり、つい言いそびれてしまいそうになる心に勇気を与えてくれる一冊である。

文=松本敦子