20日、「漢字三千年―漢字の歴史と美」特別展が東京都八王子市の東京富士美術館で開幕する。西安にある日本人遣唐使・井真成の墓誌など国家1級文物23点を含む国宝級110点が展示される。これに先立ち、18日に開会式が行われた。写真は開会式と展示品。

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2016年10月20日、「漢字三千年―漢字の歴史と美」特別展が東京都八王子市の東京富士美術館で開幕する。西安にある日本人遣唐使・井真成の墓誌など国家1級文物23点を含む国宝級110点が展示される。これに先立ち、18日に程永華・駐日中国大使、中国人民対外友好協会幹部ら約300人が出席して開会式が行われた。

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開会式には日本と中国の政財界人、文化人や各国駐日大使らが出席。かつて八王子の創価大学で学んだ程大使は「中国と日本の友好を促進するこのような展覧会が懐かしい思い出が詰まった八王子で開催されるのは感慨深い。共通の文字である漢字を通して両国民の理解がますます深まると確信する」とあいさつした。主催者を代表して原田稔・東京富士美術館名誉館長が「漢字は日本と中国の文化圏をつなぐ象徴的な存在であり、この種の文化交流は日中両国の平和促進に大きく寄与する」と謝意を表明した。中国対外友好協会副会長は「世界で現存する最も古い文字である漢字は音、形、意味が込められた三位一体の文字である」と説明した。

漢字が生まれたのは紀元前1300年頃の古代中国・殷王朝時代とされる。この時代の今回展示物は、一級文物「『歳于中丁』牛胛骨卜辞」。牛の肩甲骨に甲骨文字が刻まれている。殷の王は、農耕・狩猟や戦争に際し、亀の甲羅や動物の骨を使って、その吉凶を占わせた。占いの内容を表面に刻んだものが「甲骨文字」であり、これが象形文字を起源に持つ漢字の始まりといわれる。

次の王朝の周以降の「表意文字」は、人間同士、部族同士の意思疎通を図る手段だった。王朝は大きな官僚組織に進化、文字は事務処理上も、必要不可欠な存在になる。

一級文物「里耶秦簡−木牘」は、紙以前に使用された書写材料の木牘に隷書で記された秦時代の行政文書。内容は受刑者の使役に関する事柄が表現されている。秦は紀元前3世紀に全国を統一。春秋・戦国時代(紀元前8〜同3世紀)、地方勢力ごとにバラバラに発達した漢字の様式を集約。さらに、字体から装飾性を排除した実用的な「隷書」を開発し、これを公式書体とした。

さらに南北朝(5〜6世紀)から、隋(6〜7世紀)、唐(7〜10世紀)の王朝時代に、「楷書」が登場。世界に先駆けて確立された中央集権システムの根幹となる(1)官僚選抜試験の「科挙」(2)徴税制度の「均田制」(3)徴兵システムーなどの整備にともない、漢字には速さと正確さといった実用性が要求されるようになり、楷書は現在の漢字の基礎となった。楷書が洗練されたのは、唐の2代皇帝・太宗(たいそう)(598〜649年)の時代で、これ以降、新たな書体は出現していないという。

「井真成墓誌」は日本人遣唐使井真成の西安にある墓誌。「日本」という国号が明記された唯一の墓誌石である。日本で漢字が使われるようになったのは4〜5世紀ごろとされる。

漢字はやがて石碑、巻物から碗、磁器にまで描かれ、「美術品」として人々の生活や嗜みの一部になっていく。明から、宋、清に至る中近世の漢字文化財も数多く展示され、興味は尽きない。(八牧浩行)

<会期>10月20日(水)〜12月4日(日)。月曜休館。入館時間は午前10時〜午後4時半。<会場>東京富士美術館(八王子市谷野町492の1)<入館料>大人1300円、大高生800円、中小学生400円。