愛犬の身に起きた突然の事故

2015年12月23日。
愛犬ノアは、当時1歳2か月になろうというマルチーズ×トイプードルMixの女の子。
いつも元気いっぱいなノアは、その日も公園を元気に走り回っていました。

夜、人間用の夕食を作っているキッチンにノアが入ってきました。
その時丁度揚げ物をしていたので、私は気をつけていたのですが、あり得ないことに、揚げ終わった油を満たしたフライパンがひっくり返り、そこにいたノアが油をかぶってしまったのです。

ノアは悲鳴を上げて、キッチンから逃げ出しましたが、私は必死でノアをつかまえると、急いでお風呂場に走りシャワーで水をかけて冷やしました。
ショックのあまり、手が震えてなかなかうまく動かせまんでしたが、それどころではありません。
フライパンいっぱいの油がかかった箇所を、とにかく冷やしました。
幸い頭は無事でしたが、濡れた毛の間から左半身が赤いのが見えたので、とにかく水をかけ続けました。

あとでわかったことですが、すぐに水で冷やしたことが、ノアの命運を分けたそうです。
やけどしたら、とにかくすぐ水で冷やすこと!
これだけは覚えておいてください!

病院での治療

救急病院

病院に連れて行こうとしましたが、かかりつけの獣医さんはもう診療時間が終わっていました。
私が水で冷やしている間、パートナーが夜間対応の病院をスマホで調べ、タクシーを呼んでくれました。

真冬に水でびしょ濡れになって震えるノアを毛布でしっかりくるみ、パートナーが病院に行き、家で準備しておくことがあるかもしれないので、私は待機することに。

待っている間、人生で最悪の気分でした。
熱い油をかぶったせいで、ショック死するかもしれない。
飼い主の不注意で、ノアを死なせてしまうかもしれない……。
とにかく無事を祈り続けました。

タクシーで病院に向かってから1時間余りで、ノアは帰宅しました。
病院での処置を聞くと、冷却したあと、食器用洗剤で油を洗っただけとのこと。
『えっ⁉ それだけ⁉』
担当医は、「痛がっていないし、皮膚が赤くなっているだけだから、様子を見ましょう」と言ったそうです。

『熱した油をかぶったのに、痛くないわけないでしょう?』と不安でした。
ノアは落ち着かない様子で、少しパニックになっているように見えました。
私たちは眠れない夜を過ごしました。

かかりつけ医

翌朝、すぐにかかりつけの動物病院へ。
救急病院で受けた処置の内容を書いた紹介状のようなものをもらっていたので、受付で渡しました。
しばらくすると、先生が深刻な顔で「どうぞ」と呼んでくれました。その表情を見て、「やっぱり深刻な事態だ!先生はわかってくれている」と、ある意味安堵したのを覚えています。

ここから本格的な治療が始まりました。
まず、毛を刈って患部を特定します。
私たちの話を聞きながら、先生はバリカンで毛を刈りました。
左肩から左前脚の上半分、左わき腹、左後ろ足が黄色っぽく変色していて、私はノアに申し訳なくて、見ていられないほどでした。

うなだれる私たちに、先生は「やけどの特効薬があります!」と言って、患部に塗り、処置をしてくれました。
処置は、人間のやけどと同じ湿潤療法です。
患部が乾かないように、薬を塗った上にサランラップをかぶせ、さらにガーゼで保護して包帯を巻きます。

処置しながら、先生は予想される経過を話してくれました。

人間はすぐに水ぶくれなどができるが、犬のやけどは日が経つにつれ進行する1週間ほどでやけどの進行程度がわかる重症の場合は、患部の皮膚が壊死し、脱落する皮膚が再生しない場合、皮膚移植の手術をするいちばん恐いのは感染症。命の危険がある

上記を踏まえて、先生と治療方針を話し合いました。
とにかく患部を清潔に保ち、常に薬の効果があるよう、毎日通院するのに加え、家でも夜に包帯を換えて、薬を塗ることにしました。
つまり、家で病院と同じ処置をするのです。
ちゃんとできるか不安でしたが、ノアの命を守るため、私たちは最も手厚い方法を選びました。

最後に感染症を防ぐための抗生物質と、痛み止めの注射を打ってもらい、その日の処置は終了しました。

夜から、家での包帯交換も開始です。
慣れない包帯巻きに悪戦苦闘しつつ、何とかやり遂げました。
医師のいない自宅で傷を見るのは、正直怖かったですが、でも自分の不注意でノアをこんな目にあわせたのだからと、とにかく必死でした。

その後の経過

ノアは病院で包帯を巻いたクリスマスイブから、人間のベッドの上でずっと寝ていました。
体中が痛むので、ふかふかのところでしか横になれないようでした。

室温は保っていたのですが、寒気と痛みで時折震えます。
そんなときは毛布をかぶせると、震えが止まりました。
でも、しばらくすると、今度はハアハアしだすので、毛布をどけて水を飲ませてやります。
1日中これをくり返していました。

起き上がるのは、外で排泄するときと、食事のときだけ。
幸い食欲が落ちることはなかったので、いつもより少し多めに食べさせました。
全身でやけどと闘っているから、エネルギーを消耗するだろうと思ってのことです。
そして毎日欠かさず、通院と家での包帯交換を行いました。

患部は日に日に症状が進行し、包帯をとるときガーゼがぐっしょり濡れているほど、体液が滲みだしていました。
このとき、悪臭がする場合は、感染症にかかっていると先生から言われていたので、臭いには注意です。
皮膚は最初より少し白っぽくなり、6日目の夜にはもうはがれかかっている感じがしました。

やけどとの闘い

1週間後

先生の見立てどおり、7日目の朝に病院で包帯をとると、皮膚がベロンとめくれました。まさに「脱落する」という感じです。
患部の肉がむき出しになり、目を逸らしたくなるような痛々しい姿になりました。でも、飼い主がここで逃げてはいけません。
私も先生と一緒に患部をつぶさに見て、どの部分がどこまで壊死しているのか、把握するようにしました。

患部の観察はとても重要です! 
家で包帯を換える際もちゃんと見て、翌日先生に状態を伝えるようにしました。
皮膚が脱落したここからが、本当の治療です。
この後の対応で、感染症で命を落とすか、治癒に向かうかが決まります。

管理の徹底が大事

治療の主体は、あくまで飼い主です。いくら病院で処置してもらっても、家での管理がずさんだと、何の効果もありません。
それどころか、悪化させる危険もあります。
家での看護で大事な点をまとめます。

犬が包帯をかじらないよう、服を着せる服で覆われない箇所で、犬の口が届く患部があれば、エリザベスカラーをする犬のたてる音に注意する(容態の把握となめ防止のため)散歩に行くときは、砂や泥が包帯の中に入らないよう注意する足に包帯をしているとき、おしっこを踏んでしまったら、すぐに包帯を換える湿潤状態を保つため、患部が露出しないようにする

とにかく犬の様子に気をつけることが大事です。
患部をなめてしまうと、口から雑菌が入り、感染症にかかる恐れがあり、加えて治りも遅くなります。
上に挙げたことはどれも単純なことですが、かかりつけの獣医さんによると、徹底できる飼い主さんは少ないそうです。
かわいそうだからとカラーや包帯を外してしまった結果、患部が悪化してしまうケースも多いとか。
確かに包帯を巻いてカラーをした姿は痛々しいものです。
だけど、傷が悪化して苦しむのは犬自身です! 
あくまでも完治のために、患部の管理徹底を優先したほうがいいです。

1か月後

この頃になると傷口も落ち着き、回復に向かいます。
やけどで壊死した組織を修復するため、「肉芽組織」が出てきます。文字通り肉の芽のようなもので、患部がボコボコした感じになります。
一見グロテスクなのですが、肉芽が集まって、新しい組織になっていきます。

患部の細胞が動いているため、犬自身はかゆみを感じるようなので、包帯交換のとき、犬が足でかかないように注意しましょう! 
かいてしまうと傷口が荒れてぐちゃぐちゃになり、せっかくの回復が無駄になります……。

肉芽組織が出てくる頃、傷の外縁部に薄皮が張ってきます。皮膚が再生し始めているのです。
まだ非常に弱い皮なので、ここも大事に保護してあげる必要があります。

これまで毎日、抗生物質と痛み止めの注射をしていたのですが、抗生剤の影響で、注射の痕がしこりになってきました。そこで、飲み薬を処方してもらい、家で飲ませることになりました。

3か月後

左後ろ足の包帯がとれました。比較的患部が浅い場合は、この頃にほぼ回復します。
包帯がとれる=完治ではなく、ある程度回復して感染症の心配がなくなったら、湿潤療法から乾燥に切り替えるのです。
患部はやがてかさぶたになります。
この時も、犬がしきりになめるようなら、カラーなどで口が届かないようにしましょう。

ノアの場合、足の包帯が直接地面に触れないよう、外に出るときはビニールや靴でカバーしていました。
やっと包帯がとれて自分の足で歩けることが、とても嬉しそうに見えました。

最も重症だった左肩は、まだ肉がむき出しになっています。
傷口は徐々に狭まっていますが、まだまだ処置が必要です。

5か月後

毎日通院と家での包帯交換を続けた結果、ようやく全ての患部が上皮化し、ついに包帯を外す日がやってきました! 
当初は皮膚移植を予想したのですが、1日2回の包帯交換が効を奏して、手術なしで回復しました。筋肉まで壊死していると思われましたが、最初に水で冷やしたことで、そこまでには至らなかったのです。
でもやはり、ここで完治ではありません。
まだ皮膚の厚さが十分ではないので、何らかの方法で保護する必要があります。

そこで、実際に包帯を外す前に術後服を探しましたが、術後服として販売されているものは、開腹手術を想定したもので、肩が露出するデザインばかりです。
肩まで覆う服を調べまくった結果、アルファアイコン社の「ドッグガード」を着せることにしました。
もともと犬のアウトドア洋品ですが、そのため通気性がよく、体を保護する服なので、傷の保護にもピッタリです。獣医さんにも見てもらい、OKをもらいました。
実際に着せてみると、ノアが患部をかいても、きっちりガードしてくれます。
お腹までカバーする形になっているので、服のすきまからなめることもありませんでした。

ここまでくれば、本人も元気な時と同じような生活を送るようになり、遊ぶこともできるようになりました。
まだ体に違和感があるらしく、ソファなど高さのあるところに飛び乗ることはできませんが、気持ちもずいぶん明るくなったようです。
通院も、毎日から週1回に減りました。

最後に

ドッグガード着用から2か月後、ついに服を着せなくてもいいぐらい皮膚が厚くなりました。
ようやく完治です! 皮膚のひきつれや知覚過敏などの後遺症もなく、ノア自身何の問題もなく体を動かせるようになりました。
ただ、やけどがひどかった左肩の一部ほか数か所は、毛根まで壊死していたので、毛が生えないままです。
幸いノアはマルチーズ寄りの被毛なので、周囲の毛を伸ばせば、パッと見にはわからなくなりました。

最後に、先述した傷の管理のほか、今回の闘病で特に大事だった点をまとめます。

先生が「やけどの特効薬」と言って処方してくださったのは、一般の製薬会社の薬ではありません。
元東大教授の青木先生(故人)が開発した「MA」というシリーズの、軟膏です。
知る人ぞ知る薬ですが、効果はバツグンでした。

ティートゥリーを中心にした成分で、殺菌効果に加えて、傷の再生を補助する作用があります。やけどだけでなく、創傷ほか外傷全般に効きます。
もちろん個体差で回復度は違ってきますが、試しに私自身、自分の傷に塗ってみたのですが、すぐに治りました!
現在「アイラ工房」で作っておられますが、薬についてはネット販売などはしていません。必要な場合は、獣医さんに相談してみてください。

1日2回の包帯交換

飼い主さんによっては、毎日の通院ができない場合もあると思います。
そんなときでも、朝晩に包帯を換えて薬を塗り直すことによって、傷が常に清潔に保たれ、感染症のリスクを減らすことができます。
そのためには、家でも病院と同じ処置ができるよう、包帯やガーゼ、薬を多めにそろえておくといいです。
何かの拍子に包帯がずれたりしても、すぐに処置できます。

絶対治す!という熱意

精神論のようですが、熱意が最も大事と言っても過言ではありません。
毎日通院して先生とお話するうち、いろいろな飼い主さんのことを聞きましたが、熱意のある飼い主のほうが、回復率が高いとのことでした。
なぜなら、飼い主自身が愛犬のケガや病気と向き合って、主体的に治療するからです。
そこから工夫が生まれますし、医師とのコミュニケーションも有益なものになります。
まだまだ書きたいことはありますが、きりがないので、ここまでにしますね。

ノアは幸運なことに、今は元気いっぱいで、もうじき2歳の誕生日を迎えます。
今回は飼い主の不注意で、とんでもない思いをさせてしまったことを深く反省していますが、どのご家庭でも、不慮の事故というのは起きる可能性はゼロではないと思いますので、どうかご注意ください。

みなさんが愛犬と健康で楽しい毎日を送ることをお祈りしています!