最近「猫ブーム」と言われていますが、日本では年間6万7000匹以上の猫を殺しています。

「余った猫たち」が物のように処分される一方、ペットショップでは無理な交配を繰り返し、高額で販売するための子猫が大量に作られている。大手のメディアではこの現状がなかなか語られず、ペットショップで動物を購入してしまう人は、残念ながら後を絶ちません。

今回は、私が最初の猫をもらってきた開放型猫シェルター「NPO法人 東京キャットガーディアン」にお邪魔して、代表の山本葉子さんにお話を伺ってきました。

―現在ここには何頭ぐらいの猫がいますか?

大体、常時100頭ぐらいはいます。うちはありがたいことに毎日貰い手さんが来るので、月に60組ぐらいはご縁ができて、年間で700頭以上の猫を助けています。

―シェルターは2002年に個人で始められたんですよね?

私はこの辺によくいる「餌やりおばちゃん」と変わらない経緯で、気がついたら増えていたんです。「形が悪い」と値下げされていたポメラニアン2匹から始まり、近所で里親を探していた猫2匹、病院で先生に押し付けられた全盲の猫、と増えていって、自宅兼仕事場の一軒家が、最初のシェルターになりました。女1人、一軒家で動物に囲まれている、という最悪の状況なんですね。人生詰んだな、的な(笑)。でも当時はあまり考えてなかったので、仕事も楽しく続けながら、30頭に到達し、最終的には犬と猫とタヌキとアライグマがいました。

―日本で初めて開放型シェルターをオープンされたのが山本さんだったんですよね?

海外事例をたくさん調べて、仕事にできて且つ助けていける、という方法を見つけたので、任意団体として始めました。開放型シェルターとしては日本初で、「保護猫カフェ」という名前をつけたのもうちが初です。今では大塚と西国分寺で開放型シェルターとして運営していて、ほかに保護されたばかりの子達が入るバックヤードのシェルターがあり、そこに最大150頭入ります。

猫シェルター

―保護される猫ちゃんたちは大体どこからくるんでしょうか?

保健所、つまりここだと東京動物愛護センターと、民間からです。いま比率としては、半々か、民間のほうが多いぐらいですね。

よく暴論と言われますが、例えば今日、保健所が扉を閉めて、動物の受け入れをやめてしまえば、今すぐに殺処分はゼロになります。どんな事情でも受け付けないことにすればいいわけなんですよね。「じゃあ、その子たちは外で死んじゃうじゃないか」と言われますが、入れてしまえば100%処分されて死んでしまいます。だったら1%でも生き続けられる可能性があるほうがいいのではないか、と。

安易に「子猫拾いました」と保健所に持っていく人も、行政が「受け取らない」と言えば、「えー」と言いながらも里親を探してくれる可能性は出てきます。あくまで可能性の話ですが。なので、私たちは「保健所には持って行かないで、まずうちに相談をして」という呼びかけをしています。もちろん数的に全部を受け取れるわけではないですが、「殺さないで」という以上、民間で責任を取らなくてはいけないと思っています。

―保健所に持ち込まれているのはどういう子たちなんですか?

事情は様々です。そもそも人間に捕まるってことは、動けないとかノロいってことを意味しますよね。もしくは飼えなくなった家猫。子猫が持ち込まれるケースが多いのも、やっぱり捕まりやすいからです。

動物愛護法が改正されましたが、保健所も職員によって温度差があるのは事実です。「絶対に持ち込ませるもんか」という気で、説教してくれる人もいれば、安易に受け付ける人もいる。ただ、保健所も今は譲渡会をやっているので、「うちで引き取ったほうがましだ」と考えるケースもあり、ひとくくりにはできない難しさがあります。

保健所の「動物愛護相談センター」って名前がよくないですよね。「助けてくれるのかな?」と勘違いして行く人がいまだに本当に多いんです。職員さんは必ず「ここは育てたりケアしたりする場所ではありません」と説明しています。特に飼い主が自分の猫を持ち込んだ場合、迷い猫と違い、誰かがお迎えに来る可能性はゼロですよね。そうすると処分までの時間も早いんです。

―正直に「私が飼い主なんですけど」と言って持ち込む人もいるということですか…?

もちろんいますよ。行政はそういう飼い主に対して説得はしてくれると思いますが、「どうしてもお願いします」と言われればそれも受け取ってしまいます。

熊本市が有名ですが、「嫌われる行政になろう」というスローガンで「説教タイム」があったり、殺処分に立ち会わせたりすることもある。これはすごいことだと思います。要は「あなたのやろうとしてることは、人にやらせているだけで実際こういうことだよ」とわかっていただく、という試みですよね。

ただ行政は大体3年で交代になるので、メンバーが変わったらどうなるのか、という怖さはあります。エキスパートが育たないんですよね。なので、保護をして、ケアをして、譲渡会をする、というのは、行政がやるには適していない。民間委託をするべきなんです。新潟に成功例があって、そこのトップは行政ですが、働いているのは民間です。いろんな民間らしい手を使って、関心を持ってもらう工夫をしており、譲渡率もそこそこ高い。要するに「行政らしくない」運営なんです。東京は都知事も変わり、殺処分ゼロを掲げているので、まずは都議連に陳情書を提出して民間委託をお願いしています。

―2014年度の殺処分が7万9000匹。まだまだ多いですが、10年前と比べると4分の1ですね。

ゆるやかに減ってはいますよね。ただ殺処分が減っているということは、地域のボランティアさんなどが、その分保護したり里親探しをしたりしているということで、みんな悲鳴をあげている。ほとんど自腹ですし、保護猫カフェもビジネスにはならなりません。

普通の猫カフェはブランド猫を入れる傾向にあるので、初期投資にお金がかかりますし、全体的にじりっと高齢化する怖さがありますが、ある程度の年齢までいたら販売する事も可能ですし。ブランド猫なので売れるんです。保護猫の場合、高齢化したら貰い手がもっといなくなるだけ。ただし保護猫カフェには譲渡というチャネルがあり、うちは譲渡の数が勝っているので、全体的に高齢化せずに済んでいるんです。

―ペットショップの生体販売についてどうお考えですか?

うちでは「ねこねこ110番」という24時間365日の相談窓口をやっているんですが、立ち上げ当初からずーっと電話を受けている経験から言うと、日本人は動物大好きなんですよね。保健所に持っていく人も、「ほかにないから」という話で、ほかの方法があればそっちを取るんですね。

でも日本では生体販売がいまだ多く見受けられる。欧米は、保護団体が大人しくないし、個人も黙っていないですよね。「かわいそうじゃないかこれは」と堂々とデモをするし、そんなことされたら商売にはならない。でも日本ではそれがありません。

―大手メディアの猫特集ではブランド猫が紹介されたり、モデルや女優が血統書付きの高い猫を飼っていたりします。血統についてどう思われますか。

純血を守ってきている血統書付きの猫は、健康面から言うと確率からいって内臓疾患が非常に多いです。劣性遺伝子同士が何代もかけ合わさることで、弱い個体になります。犬の世界ではすでに「このままブリードし続けると、ある犬種は絶滅してしまう」という危機を迎えたこともあります。

純血の考え方に、ドッグショーやキャットショーがありますよね。あれは、種類ごとにひな形があって、いかにそれに近いかで得点が決まります。しっぽがこうで、耳がこうで…と人間の誰かが勝手に決めた「型」がすべてなんですよね。なにがしたいんだろう?という。

長年一緒に暮らすということは、その子の性格や魂みたいなものと一緒に過ごすということ。長い時間一緒に過ごすので、こういう開放型シェルターで実際に見てもらって、ビビリだ、とか、この表情がかわいい、とか。血統書ありきだと、そういうものがあまり介在していない感じがします。

―一度は一緒に暮らした動物を捨てる、という状況があまり想像できないのですが…

例えば「今日破産した。家も取られてしまう、猫が20匹いてどうしよう…」、「高齢の母親が亡くなり、母の猫が残された、うちはペット不可なので飼えない」という人、あちこち聞きまわったあげく、誰も貰い手がなくて仕方なく、という人もいます。

無責任な人もいるし、「引き取らないなら保健所にもってくぞ」と脅してくる人もいます。そういう電話を受けてよくキレませんね、と言われるのですが、うちに電話をかけてくるということは、殺したくないわけですよね。本当にどうでもいいと思っているなら保健所に持っていくか、その辺に放っているわけです。

うちも限りがあるので、全部受け入れられるわけではありませんが、うちの相談窓口「ねこねこ110番」は、東京にいながら地方の猫も助けられるように設置しました。「受け取ってくれ」と電話してきた人でも、説得1つで自分でどうにかしてくれる人もいるし、方法さえ教えれば、自分で子猫のケアができる人もいる。これは電話1本でできることですよね。

―里親希望の人は増えていますか?

そうですね、土日はご来場者数が100人を超えます。面談の予約もたくさん入っています。面談ではいろいろ質問しますが、最終判断は「自分の猫を譲渡できる相手か」で決めています。月100組以上は申し出がありますね。

猫シェルター

―苦労される部分はたくさんあるかと思うのですが、どういったことですか?

保健所だと、病気持ちの猫は「もうダメだから」と殺処分されますが、保護団体の場合はそうはいきません。末期医療まですべて負担することになります。費用はまだいいとしても、死にゆく子を看取るわけですからそれに関わるスタッフのメンタルは大変です。しかもそれが日々の作業になる。それにみんな耐えてくれています。苦労は多いですが、うちは笑い話のほうが多いですね。意外とへらへらやっています。

―今後の目標はありますか?

ここで年間700頭救えるわけですから、同じものをあちこちに作りたい。保護団体自体をフランチャイズしようと思っています。うちをマネてくれるところも増えてきたんですが、管理がずさんだったりして改善点が多く見受けられるところもたくさんあります。せっかくモチベーションと人がいるので、うちのノウハウをぜひ使って欲しいですね。

「猫を保護している自分」が好きなのか、純粋に猫を助けたいのか。後者なのであれば、既存のノウハウを使ったほうが効率的なことは明らかです。今日私が倒れても大丈夫なように、後継者を育てたいし、私より多くの猫を助けられる人がいれば、代表の座をおりるつもりでいます。私は代表をやりたいのではなく、猫を助けたいだけなので。

―最近では、殺処分ゼロキャンペーンなども増えてきましたが、どう思われますか?

個人的な見解ですが、実働していない団体が「殺処分ゼロ」を謳って啓蒙活動をし、寄付金をさらっていってしまうケースが多いんです。実働が少ないということは、その分、宣伝に回す余力があるということ。一方で、100頭の世話でいっぱいいっぱいで、ブログの更新も遅い、インスタもやってない、みたいな団体はたくさんあるんですね。

食うや食わずで、年金をつぎ込みながら世話をしている方には寄付金が集まらずに、啓蒙活動ばかりで年間に助けている猫は10頭のようなところに寄付金が集まるっていうのはダメだと思っています。実働している人に寄付が集まれば「殺処分ゼロ!」と高らかに言わなくても、殺処分ゼロにできますから。

東日本大震災のときには、日本獣医師会をはじめとする公益4団体の動物対策本部が、一気に全国から5億円の寄付金を集めました。「被災地の動物が死んじゃう」となれば、これだけの寄付が集まる国なんです、日本は。最終的にはこれが7億円に膨れ上がりました。ただ、この公益4団体、実働をしたことのない団体だったんです。ならばお金を集めるだけ集めて、実働団体に分配すればよかったんですが、しなかったんです。結果、5億円は塩漬けになり、大変多くの犬猫が餓死しました。その間、普通の人たちが、逮捕や被ばくを覚悟で規制地域に入り、自腹で保護活動をしました。

「なぜ寄付金を分配しないんだ」という非難をうけ、最終的に5億円は遅まきながら使われましたが、残った2億円は「もう分配しない」と言っている。これは詐欺です。

怒っているだけでは仕方ないので、これは保護団体として「相手を見極めて義援金を送ってください」と周知していくしかありません。見極めるポイントはやはり実働がある団体なのかどうかです。運営者のポリシーや過去の実績・評判はインターネット上に出ているので、それを見比べればわかります。

―保護が必要な猫と出会ったときのアドバイスはありますか?

動物を飼うのが大変なことなので、「飼う環境が整ってから」とみなさん言いますよね。これを外でヘタっている子には適用しないでほしい、と思っています。ふと猫に出会ってしまうことってありますよね。道で弱っていたり、知り合いが貰い手を探して困っていたり。そのときには「自分は完璧な親になれるか?」を考えずに、無謀に手を出して欲しい。

例えば、道で弱っている猫を保護したけど、結局大家さんの許可が降りず、飼うのは無理だったとします。一度助けられて病院へ連れていってもらえた猫は、そのあと自然に返されたとしても、最初から放置されるよりは何倍もマシです。野良猫に関しては、「マシ」という考え方をしてもらえるだけで、生存率がすごく上がります。

元気な子を拾ったけど、やっぱり事情で飼えなかった。でも避妊手術だけして、離そう。そうすると、その子が生んでしまうはずだった多くの不幸な命を救うことになります。それだけでも十分ありがたいんです。飼い方セミナーを行っている団体もたくさんありますし、ねこねこ110番はどんなことでも相談に応じます。

猫と暮らしてみたいな、と思っている方は、ペットショップに行く前に、ぜひシェルターや譲渡会を訪れたり、里親募集サイトをチェックしたりしてみてください。かわいい子猫もたくさんいますよ!

東京キャットガーディアン「里親さんを待っている猫たち」

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