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●戦前の時代劇スターゆかりの庭園は抹茶とともに味わうべし
紅葉を見るなら京都へ出掛けたいという人は多いと思う。単に色付いた木々を楽しむのみならず、趣深い古都ならではの情景に溶け込むような紅葉の美にひたりたいからだ。今回は、観光地京都の中でも特に人気の高い嵐山・嵯峨野エリアへ、王朝時代の風流人たちも愛した、美しい紅葉を愛でに出掛けよう。

○嵐電の車窓風景を楽しみながらいざ嵐山へ!

まず、京都の紅葉は多くの場所で11月中旬〜下旬にかけて見頃を迎える。嵐山・嵯峨野と言えば、古くから貴族や文人達の別荘地とされた風光明媚の地だけに、京都市街から距離があるように思うが、電車に乗れば実はさほどの距離ではない。嵐山へは、JR山陰本線、阪急電車、そして「嵐電」の愛称で親しまれる京福電車の3線が利用できるが、今回は一部に路面電車区間もあり、車窓風景も楽しい嵐電で向かうことにする。

以前は嵐電に乗るには、京都駅からだと地下鉄を2路線乗り継がなければならず、やや不便だった。しかし、2016年4月に山陰本線の「太秦(うずまさ)」駅から徒歩約3分の場所に新駅「撮影所前」駅が開業。乗り換えも楽々だ。

○嵐山を"借景"とする庭園の紅葉

嵐山駅の改札を出ると、通りの反対側には「天龍寺」の広大な境内が広がっている。天龍寺は室町幕府を開いた武将の足利尊氏が、南北朝の争いで対立した後醍醐天皇の菩提(ぼだい)を弔うために創建した寺院で、京都五山の第一位に列せられた由緒ある寺院だ。

天龍寺で何と言っても有名なのは、鎌倉時代末から室町時代初期にかけて政治や作庭に活躍した禅僧の夢窓疎石(1275〜1351年)が造営した、嵐山を"借景(しゃっけい)"とする曹源池庭園だ。借景とは、外の景色をあたかも庭園の一部のように取り込む作庭手法を言う。天龍寺は、参道から曹源池庭園、さらに北門にかけても、多くの紅葉が植えられており、紅葉の名所としてオススメ度が高い。

●information
天龍寺
京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68
アクセス: 嵐電「嵐山」駅下車、徒歩1分

○竹林の道を歩き、大河内山荘へ

天龍寺北門を出ると、そこに広がるのは竹林の世界だ。青々と天高く伸びた竹林を見ると、とてもすがすがしい気分になる。この竹林の道を200mほど歩くと、間もなく「大河内山荘庭園」と看板が掲げられた立派な門が現れる。

ここは、戦前の時代劇スター・大河内傳次郎(おおこうちでんじろう、1898〜1962年)の別荘跡。傳次郎自身が64歳で亡くなるまで、約30年もの歳月をかけて造営したという見事な庭園を鑑賞できる。

庭園は回遊式になっており、ぐるっと一周する間に、西から北にかけては保津峡や小倉山、東から南にかけては、比叡山や衣笠山、大文字山、京都タワーまでをも一望する絶景が楽しめるのだ。庭園の拝観料(中高生以上1,000円、小学生500円)には抹茶とお菓子の料金も含まれており、庭園の鑑賞を終えた後は、秋の風情を楽しみながらのんびり休憩しよう。

●information
大河内山荘
右京区嵯峨小倉山田淵山町8
アクセス: 嵐電「嵐山」駅下車、徒歩約15分

大河内山荘から北へ歩を進めれば、程なく右手にトロッコ列車の嵐山駅が見える。今回はトロッコ列車は眺めるだけ。歩いて北嵯峨を巡ってみよう。

●紅葉ライトアップは東山"永観堂禅林寺"派? それとも嵯峨"獅子吼の庭"派?
○洛西ナンバーワンの紅葉の名所、常寂光寺へ

トロッコ嵐山駅の目の前の池のほとりには、日本で唯一「髪」をお護りするという「御髪神社(みかみじんじゃ)」がまつられている。この池の先に、小倉山の山懐に抱かれるようにたたずむのが、藤原定家が『小倉百人一首』を編さんした「時雨亭」の旧跡とされる「常寂光寺(じょうじゃっこうじ)」という寺院だ。

仏の世界である「常寂光土」に由来するという寺の名前さながらに、秋の深まりとともに、赤、黄、橙(だいだい)とさまざまな色合いに染まる境内の木々の美しさは、"この世"のものとは思えないほど。嵐山・嵯峨野で、どこか1カ所紅葉の名所を教えてほしいと言われたなら、間違いなく常寂光寺を選ぶと思う。その代わり、紅葉シーズンは混雑も相当なものなので覚悟が必要だ。

●information
常寂光寺
京都市右京区嵯峨小倉山小倉町3
アクセス: 嵐電「嵐山」駅下車、徒歩約20分

○北嵯峨の静かな風情を楽しみながら

さて、ここから先は芭蕉の弟子の向井去来(むかいきょらい)の草庵跡「落柿舎(らくししゃ)」や、参道が「紅葉の馬場」の別名で呼ばれる紅葉の名所になっている「二尊院」などを巡りながら、しっとりとした嵯峨野の情緒がより一層深まる、奥嵯峨の地を歩くのもいい。

奥嵯峨には、祇王(ぎおう)という白拍子が平清盛の寵愛(ちょうあい)を受けたものの、別の女性に気持ちが移ったことから世をはかなみ、若くして隠棲した場所とされる祇王寺や、隠れた紅葉の名所、化野念仏寺(あだしのねんぶつじ)などがある。さらに、やや場所は離れているものの北嵯峨の直指庵(じきしあん)まで足をのばすのもオススメだ。嵯峨で最も北に位置するという竹林に囲まれた静かな境内を彩る紅葉に、心が洗われる思いがする。

●information
直指庵
京都市右京区北嵯峨北ノ段町3
アクセス: 「大覚寺」バス停から、徒歩約15分

○東山「永観堂禅林寺」にも負けない輝き

秋の行楽シーズンの京都ではあちこちで夜間ライトアップが行われるが、中でも天龍寺の塔頭(たっちゅう)のひとつである「宝厳院」のライトアップは見応えがある。「獅子吼(ししく)の庭」と名付けられた回遊式庭園はかなり広く、紅葉の本数も多い。同庭園のライトアップの鑑賞満足度は、「モミジの永観堂」として広く知られる京都を代表する紅葉の名所、東山の「永観堂禅林寺」のライトアップにも匹敵すると思う。

●information
宝厳院
京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町36(天龍寺境内)
アクセス: 嵐電「嵐山」駅下車、徒歩約3分

さて、嵐山・嵯峨野の紅葉散歩、いかがだっただろうか。人気観光地だけに秋の京都は人も多く、なかなか昔の風流人のように優雅に紅葉狩りというのは難しいかもしれない。しかし、京都ではさまざまな紅葉の楽しみ方ができるので、ぜひ記事を参考に秋の京都でお気に入り紅葉スポットを見つけてほしい。

※記事中の価格・情報は2016年10月取材時のもの。価格は税込
※記事中の写真は2015年11月25日に撮影したもの

○筆者プロフィール: 森川 孝郎(もりかわ たかお)

旅行コラムニスト、オールアバウト公式国内旅行ガイド。京都・奈良・鎌倉など歴史ある街を中心に取材・撮影を行い、「楽しいだけではなく上質な旅の情報」をメディアにて発信。観光庁が中心となって行っている外国人旅行者の訪日促進活動「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の公式サイトにも寄稿している。鎌倉の観光情報は、自身で運営する「鎌倉紀行」で更新。

(森川孝郎)