自在に折り曲げることができる。30万人の男性に移植され、90%以上が満足している(写真提供:東邦大学永尾教授)

 年をとっても病気になってもセックスをしたい──。医療の進歩は、そんな人びとの夢をすでにかなえてくれるようだ。

 性機能障害に悩む人は少なくない。中でも国内で1130万人の患者がいるとされるのが、勃起障害(ED)だ。だが、「ほぼ100%治ります」と東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンター長の永尾光一教授は言う。

 まずは、バイアグラ、レビトラ、シアリスといったED治療薬を使う。

「ほぼ7割の患者さんに効果があります。中には、持っているだけで安心すると言う人もいますよ」(永尾教授)

 ED治療薬が効かない、使えない場合は、「プロスタグランジンE1」の海綿体注射などがある。プロスタグランジンE1は血管を拡張する薬で、陰茎海綿体に注射することで勃起を促す。東邦大学などの研究では、ED治療薬が効かなかったり使えなかったりする23〜84歳の患者64人の77%で効果があった。

 自己注射は残念ながら、国内では未承認。一部の医療機関が研究などとして実施している。

●器具を埋め込む

 最後の手段は、「陰茎プロステーシス移植手術」だ。陰茎にプロステーシスと呼ぶ、シリコンなどでできた器具を埋め込む。プロステーシスは自在に折り曲げることができる。70歳以上の高齢者でも手術可能で、ほぼ100%セックスができるようになるという。

「不妊治療で来る患者さんの中には感情的になって治療を受けない人もいますが、EDはエビデンスに基づいた適切な治療を受ければほぼ治るようになりました」(永尾教授)

 ただし、このプロステーシスも国内では承認されておらず、医師の個人輸入などに頼っており、治療を受けられる医療機関は限られている。手術を受けるには、例えば東邦大大森病院では自由診療で約70万円だ。

 医療は進歩しているにもかかわらず、性機能障害となると、国内で承認されていない治療が多く、海外と比べて受けにくい。最新の治療薬も同様だ。

 もともと向精神薬などとして発売され、脳の神経伝達に働きかける薬も最近は登場している。男性の早漏の治療薬「プリリジー」、女性の性欲障害を改善する「フリバンセリン」などだ。だが、これらも国内未承認。ネット通販では偽造薬などの懸念があるので気をつけたほうがいいだろう。

 一方で女性の性機能障害の治療はまだまだ課題があると、日本性科学会理事長で産婦人科医の大川玲子医師は言う。

「女性の性機能不全である挿入障害(膣けいれん)には、心理的な治療が必要です」

 日本性科学会では、行動療法を中心としたセックスセラピーに取り組んでいる。(編集部・長倉克枝)

AERA 2016年10月24日号