満腹御礼 ご当地肉グルメの旅 三つの意味がある上田市の「美味だれ焼き鳥」

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全国各地のウマい肉料理をお腹いっぱい食べ尽くしていく連載「満腹御礼 ご当地肉グルメの旅」。
今回やってきたのは長野県上田市です。

上田といえば、今年放送されている大河ドラマの主人公である真田信繁(幸村)で有名な真田氏が治めていた土地として話題です。その居城であった「上田城」の跡地は城址公園となっており、市民の憩いの場として、桜の名所として、多くの人でにぎわいます。ドラマも佳境に入る最近では、連日ツアーのお客さんが観光バスで押し寄せる盛況さを見せているようです。

そんな人気沸騰中の上田には、ご当地肉グルメとして少し変わった特徴を持った焼き鳥、その名も「美味(おい)だれ焼き鳥」があるのだとか。

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JR上田駅。駅舎の壁面にも真田家の家紋である六文銭が描かれていました。 JR上田駅。駅舎の壁面にも真田家の家紋である六文銭が描かれていました。

上田城東虎口櫓門。どっしりとした堅牢な姿が美しい。 上田城東虎口櫓門。どっしりとした堅牢な姿が美しい。

今回お邪魔するのは、上田に数多くある焼き鳥店の中でも老舗の「かわしま」さんです。

こちらのご主人の川島実さんは、焼き鳥に携わって50年以上の大ベテランで、美味だれ焼き鳥の応援団体の事務局「美味だれで委員会」の副委員長も歴任しています。さっそく川島さんに美味だれ焼き鳥に関してお話を伺いました。

こちらが「かわしま」さん。上田駅からは歩いて6〜7分です。 こちらが「かわしま」さん。上田駅からは歩いて6〜7分です。

お店の中は昭和の雰囲気漂う素敵な空間。カウンターと小上がりのテーブル席がある。 お店の中は昭和の雰囲気漂う素敵な空間。カウンターと小上がりのテーブル席がある。

こちらが店主の川島実さんです。笑顔で出迎えていただきました。 こちらが店主の川島実さんです。笑顔で出迎えていただきました。

川島さん「美味だれ焼き鳥は、焼きあがった焼き鳥に、にんにく醤油ベースのタレをつけて食べる上田特有の焼き鳥なんです。その歴史は、高度経済成長期の昭和30年代にさかのぼります。上田の産業が発展していく中、上田の焼き鳥店『鳥正』の初代店主の宮下正三さんが、『何か新しい名物を作ろう』と仲間内で相談しながら生み出したのがにんにく醤油ベースのタレ『美味だれ』でした。以降、その味が評判を呼び上田中に広がっていきました」

当時は『美味だれ』とは呼ばれておらず、この名前は2010年に委員会が発足した時に正式に命名されたのだとか。その定義とは?

川島さん「美味だれは、すりおろしたにんにくがたっぷりと入った醤油ベースのタレ。しかし、お店ごとにかなり味は違います。甘味とコクを加えるためリンゴやバナナなどのフルーツが入っていたり、にんにくをすりおろす前に醤油漬けにしていたり、店ごとにこだわりが違います」

お店ごとの個性が、美味だれに詰まっているんですね。地元の人々は、お気に入りの「美味だれ」が食べられる行きつけの店を必ず持っているとか! 観光で訪れるなら、何軒かハシゴして味比べを楽しむのも面白そうですね。

それでは、美味だれ焼き鳥を実際に焼いていただきましょう。今回は地元産の鶏と豚にこだわった「若どり」「カシラ」「白モツ」の3種類を焼いてもらいました。

全体に塩を振り、焼き台の上に乗せてからコショーを全体に振りかけます。 全体に塩を振り、焼き台の上に乗せてからコショーを全体に振りかけます。

絶妙な焼き加減を目指し、真剣な表情の川島さん 絶妙な焼き加減を目指し、真剣な表情の川島さん

全体に焼き色がつき、煙がたちのぼるころに焼き台から上げて完成です。

地元産の信州白鶏を使った「若どり」1本120円。 地元産の信州白鶏を使った「若どり」1本120円。

コショウのスパイシーな香りがして、このままでも塩味の焼き鳥として十分美味しそうですが、これで完成ではありません。満を持して美味だれの登場です。

こちらが「かわしま」さんの「美味だれ」です。 こちらが「かわしま」さんの「美味だれ」です。

川島さん「うちの美味だれは、長野県産のリンゴと青森県産にんにくがたっぷりと入ったタレで、リンゴもにんにくも一つひとつおろし金ですりおろして作っています。ミキサーを使うと細かくなりすぎてこの果肉を感じる舌触りは生まれません。昔はコップにタレを入れて、そこに串ごと入れて付けてもらっていたのですが、現在はこのような“かける”スタイルになっています」

こだわりの美味だれを焼き鳥にかけてみます。 こだわりの美味だれを焼き鳥にかけてみます。

「かけ過ぎかな?」と思うくらい、思い切りかけましょう! 「かけ過ぎかな?」と思うくらい、思い切りかけましょう!

美味だれをかけた瞬間ににんにくの力強い香りが広がり、食欲を刺激してきます! それでは、早速ひと口食べてみましょう。

第一印象は、にんにくのパンチの効いた風味です。そして同時にリンゴの爽やかな甘さも感じます。それが鶏肉の油と口の中で混ざり合い、思わずビールが欲しくなる魅力的な味わいです! にんにくの味は確かにかなり強いですが、後味はすっきりとしています。「うちの美味だれは、にんにく臭が次の日にあまり残らないのが特徴だね」と川島さんも語るほど。

表面はパリッと中はもちっとした食感の「白モツ」と美味だれとの相性も◎! 表面はパリッと中はもちっとした食感の「白モツ」と美味だれとの相性も◎!

3本の中で、美味だれと一番相性が良く感じたのは「カシラ」でした! 3本の中で、美味だれと一番相性が良く感じたのは「カシラ」でした!

白モツとカシラにも美味だれをかけて食べてみました。

それぞれ肉の持つ味も食感も違うので、同じタレでも食べたあとの印象が異なりますね。脂の乗った白モツにはタレの甘みがほどよくからみ、肉の味がしっかりしたカシラには、ニンニクのコクがバランスよくマッチしています。美味だれは、どのお肉とも相性抜群でそれぞれのお肉の良さを引き出していました。

この「美味だれ」という名称は、2010年に命名されたということですが、どんな由来があるのでしょうか?

川島さん「美味だれには、複数の意味が込められてるんです。一つは、そのままの『美味しいタレ』という意味。もう一つは、後から好みでつけるという意味の『追いダレ』。最後は上田の方言で慣れ親しんだ仲間につかう『お前たち』という意味の『おいだれ』。この三つの思いを合わせたのが、美味だれなんです」

そんな意味があったとは。三つの意味を聞くと、地元の仲間たちでお酒を飲みながら「美味だれ焼き鳥」を囲んでワイワイやっている風景が目に浮かんできますね。

先日、この上田では焼き鳥にまつわるビッグイベントが行われました。それが、10月1日と2日に上田城跡公園で開催された「やきとリンピック」。北は北海道から南は沖縄まで全国のご当地焼き鳥が一堂に会すイベントで、記念すべき10回目の開催地として美味だれ焼き鳥の里・上田が選ばれました。県内外から訪れた約7万5000人の焼き鳥ファンが、思い思いに焼き鳥を楽しんでいたそうです。

先日行われたやきとリンピックは、大盛況だったようです! 先日行われたやきとリンピックは、大盛況だったようです!

真田幸村とともに、いまや上田を代表する名物となった「美味だれ焼き鳥」。そのパンチの効いた味は、一度食べればクセになること間違いなしです!

施設情報
●かわしま
住所:長野県上田市中央3-9-16
電話:0268-24-2744
営業時間:17:00〜21:00、日曜日・祭日
取材協力:美味だれで委員会
http://www.oidareyakitori.jp/

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。