14日、金燦榮・中国人民大学教授が日本記者クラブで会見。「台湾海峡」問題は2018年に危険な領域に入る可能性があると指摘した。また「南シナ海」に触れ、「日米合同部隊が共同行動すれば、中国は強く反発。(衝突すれば)中国の勝算が極めて大きい」と強調した。

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2016年10月14日、習近平政権の有力ブレーンとされる金燦榮・中国人民大学国際関係学院副院長が中国外交研究者グループの一員として来日、日本記者クラブで会見した。中国が直面する問題として、「台湾海峡」問題は2018年に危険な領域に入る可能性があると指摘した。また「南シナ海」問題に触れ、「日米合同部隊が共同行動すれば、中国は強く反発する」とした上で、「圧力や脅しをかければ悪い結果になる。(衝突すれば)中国の勝算が極めて大きい」と強調。さらに、「中国の技術力は既に強大であり、アメリカの優位性は消えつつある。日本は米国が頼りになるとの考えを捨て、行動を慎重に判断すべきだ}と警告した。発言要旨は次の通り。

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トウ小平氏の改革開放政策は(1)脱イデオロギー(2)経済優先(3)非同盟(4)国際社会に参画(5)グローバル化の歓迎―などが特徴だった。習近平国家主席は(1)世界の大国として新型関係を確立する(2)人類社会は運命共同体であり、共に未来に責任を持つ―ことを重視している。

習主席は「中国の夢」の実現を掲げ、「2つの100年」を目標としている。すなわち共産党創設100周年の2021年に、「ゆとりある社会」をつくるため、1人当たりGDPを現在の8000ドルから1万2000ドル(約125万円)に引き上げる。建国100年の2049年には3万ドル(312万円)に達し、先進国の仲間入りを果たす。経済規模で米国の3倍になる。中産階級が10億人に増加する。いずれも実現可能だ。経済の実勢を表す購買力平価方式ではIMF発表で既に米国を上回っている。

中国の外交の基本戦略は(1)米、露、EU、日本など大国と安定した関係を維持する(2)周辺国との外交の重視(3)開発途上国への援助拡大(4)国連PKOなど国連プラットフォームやグローバルガバナンスを活用(5)世界に500ある孔子学院の活用などによるソフトパワーを増強―など。特に米国と新型の外交関係を構築する。ハードパワーは強化されたが、ソフトパワーはまだぜい弱なので、強化する。

米中のグローバルガバナンスには違いがある。中国のスタンスは(1)国連中心(米国は同盟国中心)(2)開発・提供を優先(米国は安全保障)(3)各国平等の立場でグローバルネットワークのづくりを目指す(米国は“等級”分けされており、英語圏、アングロサクソン中心)(4)内政不干渉(米国は人権問題などに干渉)―などに特色がある。
習近平政権は「一帯一路(海と陸のシルクロード)」「FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)」づくりに力を入れている。

(金氏が、今夏に広州での講演で「2018年に米国との軍事衝突が起きる」と中国国民に警戒を呼びかけたことを問われて)台湾海峡問題は平和的に解決することを願っているが、一方で学者として冷静に状況を、分析しなければならない。その観点から18年に危険な領域に入る可能性があると言及した。中国インターネットサイトで「18年に戦争になる」とセンセーショナルなタイトルを付けられて報じられたが、誤報だ。戦争が起こるとは言っていない。確かに衝突の可能性を指摘したが、衝突すると言ったわけではない。

南シナ海問題で、トラブルを起こさないためには米国の自制が必要だ。長い年月にわたり南シナ海関係国間でトラブルがあったが、中国は抑制してきた。ところが15年以来米国が介入してきたため、当事国同士ではなく中米間の問題に変質した。米国は域外の国であり、自制し冷静に対応すべきだ。

稲田朋美防衛相が南シナ海での日米合同パトロールに言及したが、日米合同部隊が共同行動すれば、中国は強く反発することになる。圧力や脅しをかければ悪い結果になる。意外に思われるかもしれないが、(衝突すれば)中国の勝算が極めて大きい。中国の工業・軍事技術の発展は著しく、アメリカの優位性は消えつつある。南シナ海問題の解決は米国と日本の出方にかかっている。中国の技術力は既に強大であり、日本は米国が頼りになるとの考えを捨て、行動を慎重に判断すべきだ。(八牧浩行)