写真家の小暮徹さん(右)とイラストレーターの、こぐれひでこさん夫妻(撮影/写真部・小暮誠)

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 イラストレーターの妻・こぐれひでこさんと、写真家の夫・小暮徹さんのお二人。大学時代に知り合い結婚して51年。いまも夫婦円満だが、その秘訣はどこにあるのだろう?

 夫は写真、妻は洋服のデザインのために渡ったパリで、その後の人生を決める転機を迎えたという。そして……。

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 1971年から4年のパリ暮らしを経て75年に妻は日本に戻ることを決める。夫は1年遅れて、76年に帰国。フリーのカメラマンとして雑誌や広告の世界で活躍するようになる。

妻:私が「もうそろそろ飽きちゃったな。帰ろうかな」って言ったら、徹くんは「オレはまだいる」って。「そう。じゃあね」って私は先に日本に帰って、デザイナー兼オーナーとして洋服の会社を始めたんです。

夫:うちはいつもそういう感じです。別に仲が悪くなったわけじゃなく、それぞれやりたいことがあるだけ。僕はもう1年パリで写真をやりたかった。

妻:日本とパリで1年間、手紙のやりとりをしてたね。最終的に徹くんが帰ってきたのは……私が先に帰ってたからだよね。

夫:そうかな(笑)。

妻:そのときは「くっつく」ときだった。「二人で一緒に育っていこう」と思えたからだと思います。

妻:洋服の会社は10年続けたけど、85年にやめたんです。借金があったとかではないけど、あんまりもうからないし、ここで区切りをつけようと全部やめました。

夫:オレが「流行通信」でバンバン仕事してたころだ。

妻:そう、そちらは売れっ子でしたよ。徹くんの仕事はそんなに浮き沈みなかったよね。

夫:まあね。ほぼ順調に終われそうな感じになってきた。写真家なんて人気商売だから、人気があれば仕事が来るし、なくなったらじっとしてるだけだし。

妻:徹くんは何事にもあまり動じないというか、淡々としてる。

夫:僕の仕事ってね、クライアントがあっての仕事だし、「絶対にこうしなきゃ!」とかいう思いはそんなにない。うまくいかないときがあっても「捨てる神あれば……」で、拾う神がたまに来てくれる。拾われたときにうまくいけば、次に続いていくんです。

妻:徹くんのおかげで私も「やめても大丈夫かな」って思えた。そこは結婚しててよかったと思います。1年くらいは有閑マダムをさせてもらいました(笑)。

夫:でも、絵を描いたり、いろいろしてたよね。

――家に打ち合わせにくる夫の仕事仲間に、妻が食事を作ることも度々あった。

妻:キッチンがオープンだったから、お茶をいれる流れで「ごはん食べてく?」ってなって。

夫:サササッと作って大皿に「どーん!」って感じで出すと、みんな「もうできちゃったの? おいしい!」ってびっくりして。

妻:そんなことがきっかけで、「『流行通信』でコラムをやらないか」って話がきたんです。それから、ごはん関連のイラストと文章の仕事が始まって、今に至ります。

夫:たまたまだけど、そうやって仕事になることもある。でもこういうとき、男の人って意外とコネクションがないんだよね。女の人のコネクションのほうが知り合う人の幅がずっと広くなる。このことは夫婦の関係のなかで、すごく生きてきた気がします。

週刊朝日  2016年10月21日号より抜粋