プレシーズンゲームが始まり、新シーズン開幕の足音も聞こえてきたNBA。今年のオフは、今後の各チームの盛衰を左右しそうな「大きな変更点」があった。それが、サラリーキャップの大幅アップだ。

 昨シーズンの7000万ドル(約72億5000万円)から9400万ドル(約97億3000万円)に上限が拡大され、それにともない今オフにFAや契約更新のタイミングだった選手は、軒並み高額契約を結んでいる。実に、今季の年俸が2000万ドル(約20億7000万円)を超える選手は29選手。そこには、意外な選手の名前も......。そこで、今季の高額年棒ベスト10を紹介したい。

 栄えある1位は、クリーブランド・キャバリアーズの「キング」ことレブロン・ジェームズ(SF)の約3100万ドル(約32億円)。NBAの顔であり、昨年のNBAファイナルでは平均29.7得点・11.3リバウンド・8.9アシスト・2.6スティール・2.3ブロックという圧倒的な活躍でキャブスを優勝に導いた。レブロンが最高額を手にすることに、誰も異論はないだろう。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 ただ、実はレブロンが最高年棒選手となったのは、今シーズンが初めて。マイアミ・ヒート時代はチームメイトにクリス・ボッシュ(PF)やドウェイン・ウェイド(シカゴ・ブルズ/SG)がいたため、戦力維持のために自身の年俸を抑え、その実力と人気からすれば控えめな額を受け取っていた。

 今シーズンのレブロンは、マイケル・ジョーダン、コービー・ブライアントに次いで史上3人目の「年俸3000万ドル超え選手」となった。また、キャブスと3年1億ドル(103億5000万円)の大型契約を結んだため、来シーズンは1997−98シーズンのジョーダンの年俸3314万ドル(約34億3000万円)を上回るNBA歴代最高年俸になるとみられている。

 レブロンに次ぐ2位は、約2650万ドル(約27億4000万円)で6選手が並ぶ。まずは、今オフにゴールデンステート・ウォリアーズに移籍したケビン・デュラント(SF)。昨シーズンは平均28.2得点(リーグ3位)・8.2リバウンド・5.0アシストを記録し、現在リーグでもっとも止めるのが難しいスコアラーのひとりだ。ステファン・カリー(PG)やクレイ・トンプソン(SG)とチームメイトになったことで、今シーズンの個人成績は下がることも予想されるが、リーグ屈指のプレーヤーの年俸としては相応しい額だろう。

 2人目はヒューストン・ロケッツのジェームス・ハーデン(SG)。昨シーズンは平均29.0得点(2位)・6.1リバウンド・7.5アシストを記録。レブロン・ジェームズ、マイケル・ジョーダン、オスカー・ロバートソンに次いでNBA史上4人目となる「1シーズン平均29.0得点・6.0リバウンド・7.0アシスト以上」を達成した選手となった。

 3人目はオクラホマシティ・サンダーのラッセル・ウェストブルック(PG)。平均23.5得点(8位)・7.8リバウンド・10.4アシストを記録した昨シーズンは、キャリア初となるオールNBAファーストチームに選出され、2年連続でオールスターMVPも獲得した。過去50年において、マジック・ジョンソンに並ぶ最多タイの「1シーズン18回のトリプルダブル」も記録している。デュラントなきサンダーを背負うエースの年俸としては、決して高くない金額だろう。

 4人目は今オフにボストン・セルティックスに移籍したアル・ホーフォード(C)。昨シーズンは平均15.2得点・7.3リバウンド・3.2アシストを記録している。上記3選手と比べれば爆発力は落ちるものの、4度のオールスター出場経験があり、インサイドはもちろん、アウトサイドもこなすリーグ屈指のオールラウンドなビッグマンだ。同レベルの活躍が計算できるビッグマンはリーグ広しといえども、そうはいない。

 5人目はトロント・ラプターズのデマー・デローザン(SG)。昨シーズンはキャリアハイとなる平均23.5得点(9位)を記録し、2度目となるオールスターにも出場した。チームを史上初のカンファレンス・ファイナル進出に導き、さらにアメリカ代表としてリオ五輪でも活躍するなど、リーグトップクラスの選手であることは間違いない。だが、この年俸が妥当かと聞かれれば、異論もあるだろう。ちなみに、ラプターズでバックコートコンビを組む相棒のカイル・ロウリー(PG)の今シーズンの年俸は、1200万ドル(約12億4000万円)でリーグ86位だ。

 そして最後の6人目、リーグ2位の高額契約を結んだ選手のなかで、もっとも疑問符がつくと言わざるを得ないのが、メンフィス・グリズリーズのマイク・コンリー(PG)だ。コンリーが今オフにチームと結んだ契約内容は、5年1億5300万ドル(約158億5000万円)。総額はNBA歴代でもトップとなる。

 ちなみにコンリーは昨シーズン、56試合の出場で平均15.3得点・2.9リバウンド・6.1アシスト・1.2スティールを記録している。今年3月中盤に左アキレス腱の負傷で残りシーズン全休となり、プレーオフにも出場できなかった。FA交渉解禁初日にコンリーがダラス・マーベリックスとも面談したため、グリズリーズは引き留めるために高額契約を結んだとのこと。悪い選手ではもちろんないが、オールスター出場経験すらない選手と超高額&長期の契約とは......。

 さらにグリズリーズは今オフ、チャンドラー・パーソンズ(SF)とも4年9400万ドル(約97億4000万円)の高額契約を結んでいる。パーソンズの今シーズンの年俸はリーグ15位の約2200万ドル(約22億8000万円)。パーソンズもいい選手ではあるが、「リーグトップ15の選手か?」といえば首を縦に振るファンは少ないだろう。グリズリーズは、この2選手の契約が将来的に大きな足かせとなりそうだ。

 続いて、年俸ランキング8位に入ったのが、ダラス・マーベリックスのダーク・ノビツキー(PF)の2500万ドル(約25億9000万円)。これは、昨シーズン年俸ランキング1位のコービーと同額。マブスひと筋のノビツキーは昨シーズン、通算得点でシャキール・オニールを抜いて得点ランキングNBA歴代6位となった。

 ノビツキーは過去に2度FAとなっているが、「優勝するためのメンバーを揃えてくれ」とチームに頼み、エースの自身は低額で契約。今オフの高額契約は、38歳となって引退も視野に入るノビツキーのこれまでの功績に対する、ボーナス的な意味合いが含まれていると言われている。

 昨シーズン年俸4位だったニューヨーク・ニックスのカーメロ・アンソニー(SF)は、今シーズンは年俸約2460万ドル(約25億5000万円)でランキング9位。NBA優勝の経験がなく、「チームを勝たせることができない」と言われ続けるが、32歳となった今なおリーグトップクラスのスコアラーなのは間違いない。アメリカ代表として男子バスケ最多の金メダル3つを獲得している人気選手であることからも、この年俸は安いくらいかもしれない。

 そして10位は、ポートランド・トレイルブレイザーズのデイミアン・リラード(PG)で約2430万ドル(約25億2000万円)。昨シーズンはチームの2枚看板のひとりだったラマーカス・オルドリッジ(PF)がサンアントニオ・スパーズに移籍し、戦力不足を指摘されながらも、絶対的エースとしてチームをカンファレンス・セミファイナルまで牽引。オールスターにも2度出場しており、まだ26歳と若い。さらなる成長も見込める選手なだけに、妥当な額ではないだろうか。

 以上、トップ10を発表したものの、あの男の名前が挙がっていないことに気づいた読者も多いはずだ。昨シーズン平均30.1得点で得点王に輝き、シーズンMVPも獲得したステファン・カリーの名前がランクインしていない。今シーズンのカリーの年俸は、なんとリーグ82位の約1210万ドル(約12億5000万円)。今オフにブルックリン・ネッツと契約したジェレミー・リン(PG)がリーグ92位で約1150万ドル(約11億9000万円)であることを考えれば、いかに格安かがわかる。

 その理由は、まだブレイク前だったカリーが2012年に4年4400万ドル(約45億5000万円)という契約を結んでいるため。今シーズンが契約最終年なので、来シーズンはカリーの年俸が倍増するのは間違いないだろう。

 ほかにも、オールスター選手のアイザイア・トーマス(ボストン・セルティックス/PG)が約660万ドル(約6億8000万円)で154位。ベテランのビンス・カーター(メンフィス・グリズリーズ/SG)は約430万ドル(約4億4000万円)で216位。今シーズン限りでの引退を宣言しているポール・ピアース(ロサンゼルス・クリッパーズ/SF)が約350万ドル(約3億6000万円)で237位となっていて、割安感がある。

 当然、「年俸」と「実力」がイコールで結ばれるわけではない。選手にとっては年俸が高いに越したことはないだろうが、見合う成績が残せなければ、ファンからの風当たりはより強くなる。高額年俸は、モチベーションにもプレッシャーにもなり得る。新シーズン、高額契約を勝ち取った選手に注目しながら試合を見るのも、ひとつの楽しみ方かもしれない。

水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro