連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第2週「しあわせの形」第12回 10月15日(土)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出:安達もじり


「なんかな、なんかな・・・」と主人公の口調がのんびりしているわりに、展開がめまぐるしくて圧倒された
朝ドラ「べっぴんさん」。
主人公の少女時代からはじまって、母の死、女学校入学、初恋、失恋、結婚、妊娠、夫の出征、出産とどんどん進み、12話では、昭和20年8月15日、ついに終戦を迎えてしまった。大河ドラマ「真田丸」といい、流行っているのだろうか、超高速展開が。
ここで1話の冒頭の画面に戻り、丘の上で主人公すみれ(芳根京子)が赤ちゃんを背負いながら、荒廃した神戸の町を見つめる。

全部失ってしまった世界で


すみれ住む豪邸も爆撃にあって焼失してしまった。
残ったのは、時々印象的に映っていた庭の、お魚の口から水が出てくる泉みたいなもの。ちょうどいいアイコンになっていたそこに立ち尽くすすみれ。地面から母の形見で結婚式に着たウエディングドレスが焼け焦げて出てきた。ボロボロでも残っていてよかったね。

そして、ナレーション。
「ほんとうに大変なのはここからなのです
それでもすみれは母として前に進んでいくのです」(菅野美穂)

そう、展開が速かったのではなく、本筋に入る前の説明が長かったのだ。
2週間かけてすみれのバックボーンをていねいに描いていたのだ。
というわけで、「べっぴんさん」は、戦争で何もかもが変わってしまった3週から本格的にはじまると考えていい。

これまでの朝ドラは、貧しい子か庶民の子が夢を叶えていく物語が多く、「べっぴんさん」のように裕福な女の子が主人公にはやや違和感があった。その点、「あさが来た」(15年)は主人公が豪商の娘とは言え、姉が極端に貧しい環境で生きることでバランスがとれていたが、今回はどうなるかと思ったら、一回、全部失ってしまうという流れだった。

今回は、恵まれた環境に生まれ育った主人公すみれがすっかり価値観の変わってしまった世界で、子供を守るために自立していく姿がこれから描かれていくのだろう。
「梅ちゃん先生」(12年)も終戦からはじまった物語だが、その後、いくつもの震災を経て日本が復興に向かう今描かれる「べっぴんさん」にはまた違った想いをもちそうだ。
ちなみに、2004年に神戸を舞台に描かれた「わかば」のヒロインは阪神・淡路大震災(95年)で父を亡くした設定で、ストレートに震災復興をテーマに掲げていた。

山村紅葉のいびり来るか?


近江の父の実家では、朝ドラ名物・いびりがはじまりそう。
祖母トク子(中村玉緒)、叔父・長太郎(本田博太郎)、長太郎の妻・節子(山村紅葉)、嫁・静子(三倉茉奈)と濃いメンツがずらり。長太郎のねっとりと嫌味な口調がたまらないし、それに輪をかけてこわそうなのが山村紅葉。いわずとしれたミステリー作家・山村美紗の娘で、ミステリードラマの常連だ。
山村紅葉が座って微笑んでいるだけで強烈。隣の三倉茉奈がうかない顔をしているから余計に。単純な嫁姑いびりというより殺人事件に発展しかねないと思えてくる。イメージっておそろしい。

三倉茉奈も朝ドラヒロイン(96年「ふたりっ子」では主人公の少女時代、08年「だんだん」ではヒロイン)だが、後に「赤い糸の女」(12年)という壮絶なドロドロ昼ドラをやって清純な印象を大きく塗り替えた。
そんなモンスター級の親戚たちのもと、慣れない畑仕事に悪戦苦闘するすみれとゆり(蓮佛美沙子)。さくらが夜泣きをするものだから寝不足になったと嫌味言われる。あんなに泣くなんてちょっとおかしいとまで。もういたたまれない。
でも、この激しい泣き方が、神戸の空襲を本能的に感じてた? と思わせるし、そこまでいかずとも、不安感を煽る助けになっていた。
安達もじり演出、時計といい、音の使い方がうまい。

3週の予告を見ると、実家生活も高速展開なのか? という気もしないではないが、玉緒、博太郎、紅葉、茉奈の攻撃は高速で終わらせず長期戦で楽しませてほしい。
(木俣冬)