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アルコール依存症は個人の健康を損なうだけではなく、家族や友人とのつながりや社会の生産性などの観点からも、大きなデメリットとなる。一度依存症になってしまうと、そこから脱却することは非常に困難だが、その一助となりうる可能性を秘めた新薬がこのほど登場したようだ。

海外のさまざまなニュースを紹介する「Livescience」にこのほど、「アルコール依存症への効用が見込まれる新薬」に関する研究を紹介するコラムが掲載された。最新の研究によると、新たに開発された新薬が大きなストレスに悩まされているアルコール依存症の患者に効果があるかもしれないという。

今回の研究は、一日平均10杯のお酒を飲むアルコール依存症に陥っている144人を対象に実施。これら144人の参加者は「ABT-436」という新薬もしくは偽薬を12週間、毎日服用した。研究は「二重盲検法」という方式で研究者、参加者ともに新薬と偽薬のどちらを服用しているかはわからないようにして行った。

その結果、新薬を服用したグループは、12週間のうち平均51日間禁酒ができ、4〜5杯以上の大量の飲酒をする日が平均31日間だった。一方、偽薬を服用したグループでは禁酒期間が平均42日間、大量飲酒をする日が平均38日間だった。この結果から「新薬に飲酒を抑制させる効用があるとは言えない」と研究者グループは判断した。

ところが、大きなストレスに悩まされていた参加者の間では異なった結果が得られた。「新薬服用グループ」の参加者は大量飲酒をした日が27日間だったのに対し、「偽薬服用グループ」は46日間もあり、新薬の効果が示唆された。

ABT-436は「バソプレシン」と呼ばれる、ストレスを調整する役割を果たすと考えられている脳内の化学物質を遮ることによって効用を発揮する。禁酒中、バソプレシンはストレスの感情を高め、飲酒を誘発する。そのため、ABT-436でバソプレシンを遮れば、ストレスの影響が減るのかもしれない。「この推論が正しければ、大きなストレスに悩まされている人がこの新薬から最大の効用を得られるというのも納得できる」と研究グループは語る。

「今回の研究結果により、バソプレシンを遮ることを目的とした薬を将来開発するためには、アルコール依存症患者の中で大きなストレスに悩まされている人を対象とした研究をするべきです」と、国立アルコール乱用・アルコール依存症研究所 臨床プロジェクトマネージャーで今回の共同研究者であるメガン・ライアン氏は語る。

この新薬の副作用は下痢と吐き気だが、今回の研究で新薬を服用した人は、その副作用は大したものではないという人がほとんどだった。ただし、今回の研究では、4人が下痢または吐き気のために、途中で新薬の服用を止めている。現在、アルコール依存症の人に対する複数の薬があるが、すべての患者に効用があるわけではなく、さらに研究を進めることが奨励されている。

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○記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)

米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。

(杉田米行)