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婚約中の女性(26歳)が「入籍と式を待つだけの状態で婚約者が仕事を辞めてきた」ために婚約破棄をしたいと、ネットの掲示板に投稿した。

投稿者によれば、両親への挨拶もすませており、間もなく入籍、約1年後に結婚式を挙げる予定だ。ところが、「あとは住居を決め、入籍と式を待つだけの状態で婚約者が仕事を辞めてきました。理由は『前から専業主夫になりたいって言ってただろ? それにお前の方が収入が多い』」というものだ。

不安に感じているのは「家事が完璧に出来て任せられる人ならまだわかるのですが、婚約者はずっと実家住まいで家事なんてやったことない」ため。その点について聞くと、「ゴミ拾いなら(笑)お前家事も仕事も出来るしお前は今のままでいいんだよ」。つまり、相談者にとっては家事と支出が2倍になるだけで、まったく旨味のない話なのだ。

そこで婚約解消を考え始めたものの、気になるのは「この状態での婚約解消にも、一般的に慰謝料が発生するのか」という点だ。「頭の中がパーティー状態の婚約者に何といえば聞いてくれるのか」もわからないという。

合意もなく、勝手に仕事を辞め、家事も仕事もやる気のない婚約者に婚約解消を申し出た場合でも、女性が慰謝料を支払うことになるのだろうか。その場合は、どのくらいの金額が相場なのだろうか。加藤寛崇弁護士に聞いた。

●婚約破棄の正当な理由になる?

「婚約は、法律用語で言うと『婚姻する予約の合意』です。そこで、婚約が成立した以上は、当事者は婚姻を成立させる義務を相互に負うことになるので、婚約を破棄した者は慰謝料等の賠償責任を負うのが原則となります。

婚約破棄で賠償責任を負う場合、賠償するのは、無駄になった結婚式の費用(キャンセル料)や新居費用、婚約指輪代など様々な対象まで広がることもあります」

今回のケースでも、女性が、賠償責任を負うことになるのだろうか。

「正当な理由による婚約破棄であれば、賠償責任を負うことはありません。婚約相手による虐待、侮辱、行方不明など、将来における結婚生活に疑念を生じさせたりするような客観的理由があれば、問題なく正当な理由と認められます。

正当な理由があるかどうかは個別の判断になるのですが、ご質問の事実関係であれば、問題なく、『婚約を破棄する正当な理由がある』と評価されるでしょう。

男性は、合意もなく、勝手に仕事を辞めてしまった。しかも、男性側の言い分は要するに、自分は収入は得ないけれども、女性に家事もやってもらう『ヒモ』にしてくれというだけの話です。円満な結婚生活を営むことが困難となる事情であることは間違いありません」

投稿した女性は、損害賠償を支払う必要もなく、婚約破棄ができるようだ。

加藤弁護士は「今回の事例では、女性に賠償責任はないですが」と断った上で、婚約破棄にまつわる誤解について指摘した。

「弁護士に相談や依頼に来る事件としては、婚約破棄のケースは、離婚や不倫に比べて相当少ないです。婚約破棄をされても、それを引きずるよりも次の相手を見つけるのに労力を使う方が有意義と考えるためでしょうか。

それでも、婚約破棄で慰謝料請求に発展するケースは、それだけひどい目にあったという事情があるからだと思われます。しかし、婚約破棄で賠償責任が認められる場合でも、婚約破棄の慰謝料は、離婚の場合より、低額(数十万円程度)になる傾向にあります。

比較的高額(数百万円)な慰謝料が認められたものもありますが、それは、婚約によって退職を余儀なくされるなど、損害が大きく、破棄された側がいかにも気の毒なケースが多く、当然にそれだけの額が認められるとは言えません」

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
加藤 寛崇(かとう・ひろたか)弁護士
東京大学法学部卒。2008年弁護士登録(三重弁護士会)。労働者側で労働事件を扱うほか、離婚事件など家事事件も多数扱う。日本労働弁護団、東海労働弁護団に所属。
事務所名:三重合同法律事務所
事務所URL:http://miegodo.com/