連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第2週「しあわせの形」第11回 10月14日(金)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出:安達もじり


11話はざっとこんな感じ


紀夫(永山絢斗)が出征した後、すみれ(芳根京子)は女の子を出産。紀夫の希望どおり「さくら」と名付けた。ある日、すみれが戦争中の子育てに奮闘していたところ、元使用人の娘・明美(谷村美月)と再会して・・・。

日本の育児は遅れていた


はじまって11回でもうお母さんになってしまったヒロイン。でも見た目がまだまだお嬢さんだし華奢なので赤ちゃんを背負っている姿がなんだかいたましく、応援したい気持ちになる。
とくに戦争中で物資も不足しているから、いくらお金持ちといえども大変らしい。すみれは、近所の外国人女性から欧米流のおしめの存在を知る。
外国人女性は「日本は育児は遅れている」と言う。
ときに昭和19年。このだいぶあと、昭和41年に、「とと姉ちゃん」でおなじみの暮しの手帖社から「スポック博士の育児書」という本が翻訳され100万部を超えるベストセラーになることを、このときすみれは知るよしもない。

ロケの強さ


不器用な愛情表現で人気急上昇の紀夫。
11話でも、寝室ですみれと子供の名前の話をする流れから、学生時代、さくらの花びらが舞うなかでそっとすみれを想っていたことを告白する場面はキュンもの。こんな想いを聞かされたら、6月生まれで「さくら」でも全然気にならない。

11話は、放送後、SNSでは「画がきれい」という感想が散見された。やっぱりロケは強い。でも、朝ドラは予算の都合もあり、基本「ホームドラマなので、家のセットの中で撮れるものを書くことが大前提としてある」と「あさが来た」の脚本家・大森美香が言っていた(「白岡あさ・新次郎語録」扶桑社)。だから炭鉱もセットだったし、五代友厚が海外で活躍するような広がりのあるシーンはそもそも出せないのだと。そんな中で、和歌山のみかん畑、最終回の丘など、ここぞ! というところでロケをする、それも制作者のセンスだろう。「とと姉ちゃん」も、最初の常子と星野の別れのロケシーンは叙情的だった。
限られたロケをやり、あとはセットでいかに効果的に見せるかがスタッフの腕の見せどころ。
11話は、ふたりが語る部屋の中も柔らかい照明で、いい感じ。お母さん(菅野美穂)の話をしていると後ろにタペストリーが映りこむのも。

紀夫くんの近況


出世先から手紙も届かなくなった紀夫くん。現在、永山絢斗は、映画「真田十勇士」に豊臣秀頼と根津甚八の2役で出演中、大阪の陣を戦っているところである。秀頼の上品さと根津甚八のやんちゃさをみごとに演じ分けている。
あともう一作、10月22日公開「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル」にはウシジマくんの幼馴染役で出演。こちらでは、どんなにひどい目にあっても殺伐としない柔らかい佇まいが、闇の深さを感じさせるウシジマくんとはっきり対称的で、天使と悪魔みたいになっていた。
役をそれぞれしっかり演じ分けているにもかかわらず、なぜか癒しのパワーを発する永山絢斗。まるで、11話で舞っていた桜の花びらのようだ。早くすみれのもとに帰ってきてあげて。
(木俣冬)