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世界中を虜にした『ハリー・ポッター』の新シリーズの映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が、11月23日に公開される。この『ファンタビ』は、原作者J.K.ローリング自らが脚本を手がけた気合十分な1作で、また新たな大旋風を巻き起こしそうな予感! すでに世界中のファンが色めき立つ中、本作の重要な小道具を手がけた造形美術監督、ピエール・ボハナが来日し、インタビューに答えてくれた。

『ファンタビ』は、ホグワーツ魔法魔術学校の指定教科書「幻の動物とその生息地」の編纂者である魔法動物学者ニュート・スキャマンダーの冒険を描くファンタジー。『博士と彼女のセオリー』(14)のアカデミー賞俳優、エディ・レッドメインが主演を務める。

ピエールは、『ハリー・ポッター』全シリーズをはじめ、『ダークナイト』(08)や『スター・ウォーズ フォースの覚醒』(15)など、さまざまな話題作の小道具に関わってきたが、『ファンタビ』でもニュートのトランクや杖、繭などの重要なアイテムを手がけている。インタビューでは、彼が持参した貴重な小道具を見ながら説明もしてくれた。

――まずは、『ファンタビ』の仕事のオファーが入った時の感想から聞かせてください。

「仕事がいただけただけでワクワクしました。『ハリー・ポッター』のスタッフが再集結し、またみんなと一緒に仕事ができるってことで、脚本を読む前から胸が躍りました。しかもJ.K.ローリングさんが書いたということで、期待して読みましたが、想像していた以上の素晴らしいストーリーになっていました。

――ストーリーのどんな点が素晴らしかったのでしょう?

僕が非常にうまいと思ったのは、1926年のNYを舞台にしているところです。なぜなら当時のNYは世界恐慌前で、みんながせめぎ合いながら頑張っている時代だったから。強い人たちが集まった街に、ちょっと風変わりな英国の魔法使いニュートがやってくるんです。彼が少し浮いている感じがいいんですよ。J.K.ローリングさんは映画の脚本を初めて手がけたのに、素晴らしい出来だと思いました。

――小道具はいつもどういう手順を踏んで作り上げていくのですか?

必ずしも僕が直接監督からあれこれ支持をもらってやるのではなく、いろんな部門で話し合いながら進めていきます。今回はプロダクションデザイナーのスチュアート・クレイグさんがリーダーを務めているから、主要な大道具やキーとなるアイテムに関しては、彼がまず監督やプロデューサーと話し合い、イラストやスケッチでコンセプトデザインを作ろうとします。我々はそれを受けて造形部門を担うんです。どういう素材を使うか、また使い勝手をよくするためにはどういう形がいいか、実に多くの人が頭を突き合わせて考えていくんです。

――今回一番苦労したのはどんな小道具ですか?

やはりニュートのトランクですね。シーンによっていろんなカットやアングルがあったりするので。実際、複雑な過程を経て作られました。

――例えばこのトランク1つを手がけるのに、どのくらいの時間がかかるのですか?

約6カ月です。このトランクはストーリーを牽引していく重要なものなので、いろんなことを考慮して作っていきました。当時出回っていた既製品をいろいろと調達し、みんなで話し合って外見を決めていきました。

次に、どういうふうに撮影をしていくのか、実用面を考えないといけません。アクションシーンもあるので、あまりごつくてデカイものだと扱いきれないから、コンパクトで小さいものにしようとします。でも、エディ(・レッドメイン)が中に入ったりするシーンもあるから、体がすっぽり入るくらいのサイズ感でなければいけない。カットごとにいろんな状況を考えて合計で17個のトランクを作りました。

――杖の種類もいろいろとありますね。ニュートの杖についてはどんなこだわりがあったのですか?

杖は一人一人のキャラクターに合わせて作りましたが、ニュートの杖はとにかく丈夫なものにしました。ニュートは少しズボラなところがあり、あまり持ち物の手入れをしない人だから、傷だらけになっていて使い込んでる感じのデザインになっています。また、彼は動物が大好きな人だから、柄の部分は動物の骨や皮ではなく、貝殻を使ったものにしました。

クィーニー(ファイン・フレンジージ)はとてもファッショナブルな人なので、杖の継ぎ目がアールデコ調になっているし、マホガニーでできています。また、ティナ(キャサリン・ウォーターストン)は地味なキャラクターで洒落っ気がないので、実用的なデザインになっています。

――撮影にあたり、大幅な変更や微調整をする場合はありますか?

そうですね。撮影当日も小道具担当がつきます。例えばグラスだったら反射しすぎだとラッカーを塗ってマットな仕上がりにしたりと、当日調整を入れたりもします。とにかくこういう大作映画はオンタイムで進めていかないと莫大な予算がかかるので、当日多少のずれがあってもいろんなスタッフが手を加えて撮影を進めていきます。もともと、撮影前に数ヶ月間を費やして作ったものなので、それほどやっかいな事態にはなりません。

――造形美術監督という仕事の一番の醍醐味について教えてください。

いろんな人と共有しながら作っていく過程こそが醍醐味です。今回来日して、その過程の結晶をみなさんにお見せできたことがとてもうれしかったです。

■プロフィール
ピエール・ボハナ
1969年、イギリス・オックスフォードシャー生まれ。造形美術監督。『ハリー・ポッター』全シリーズに関わり、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』では小道具模型制作の室長を務める。その他、『タイタニック』(97)や『スター・ウォーズ』シリーズ、『ダークナイト』(08)、『ゼロ・グラビティ』(13)、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(14)など、数多くの話題作の小道具を手掛けている。
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(山崎伸子)