シリアの子供たちに玩具を届ける男性(出典:http://www.telegraph.co.uk)

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シリアは今や世界で最も危険な国と言われているが、あながち過言ではないだろう。内戦が続き荒れる同国では、ペットを置き去りにして去っていく家族も多い。しかし、いまだ多くの人が危険と隣り合わせのなかで暮らしているのも事実だ。そんなシリアの子供たちに喜びを与えようと、命がけであるものを届け続けるひとりの男性がいる。

フィンランド人とシリア人を両親に持つラミ・アドハムさん(44)はシリアのアレッポで生まれ、1989年に家族でフィンランドに移住した。

2012年にシリア内戦が本格化した時、ラミさんはシリアの子供たちに何かしてあげることはないかと考え、国境近くに避難している人たちに食料や薬、飲み水を搬送することを思いついた。

その時は、玩具を持っていくことは頭になかったラミさんだったが、当時3歳だった娘のヤスミンちゃんが自分の玩具を「アレッポの子供たちにあげてほしい」と言ったことをきっかけに、25のテディベアと36体のバービー人形も持ってアレッポに向かった。

実際にアレッポの子供たちが玩具を手にした時の笑顔を見て、ラミさんは子供たちが玩具を欲しがっていることを痛感。それ以降シリアに玩具を運ぶことはラミさんの使命となり、この5年間に実に28回もフィンランドとシリアを往復して子供たちに玩具を届け続けている。

ラミさんは「シリアのサンタ」「玩具の密輸人」とも呼ばれている。1回の訪問でラミさんは80kgもの玩具を抱えトルコから国境を越えてシリアに入る。シリアに入る全ての国境が閉鎖された2年前から、ラミさんの行為は不正入国となり、危険なことは言うまでもない。

妻のマリアさんは、ラミさんのシリア入りを毎回心配しているものの「でも、私たちは6人の子供の親です。どういうことをしてあげたら子供たちが喜ぶのかは分かります」と夫ラミさんをサポートし続けている。

ラミさんの「シリアの子供たちの笑顔のために玩具を運び続ける」という使命は終わることがない。

「シリアの子供たちは、今不安定な状況で脅迫や死の危険と向きあっています。だからこそ、玩具は子供たちにとってとても大切なものなんです。」

いつ空爆に襲われるかわからない状況で暮らしている子供たちに、ラミさんができることはこうして玩具を運んで喜びをもたらすことだけだと話す。

ラミさんは現地の救済機関のスタッフと行動を共にしている。車は襲撃される危険があるので、今年の6月には8マイル(約12.8km)もの距離を重い玩具を持って支援している孤児院に向かったが、現地で子供6人が命を落とすという悲劇にも見舞われた。

イスラム教徒が神の恵みに感謝し断食を行う約1か月間の「ラマダン」の時期(今年は7月6日に終了)には、8万人が暮らすシリア北部アトメ近郊の難民キャンプに700もの玩具を運んだ。

ダーカッシュ難民キャンプにあるアル・ラマ学校ではラミさんが玩具の袋を開けると、およそ200人の子供たちが列を作ってラミさんの前に並んだという。ラミさんはアレッポにも足を運び、親を亡くした子供たちにも玩具を分け与えている。

最近、ラミさんは世界の各メディアから取り上げられるようになったが、彼の行為を偽善的だと報じるメディアもありストレスを感じているという。とはいえ「今後もこれまでと同じことを続けていくだけ」だと語っており、寄付金サイト「GoFundMe」でも子供たちのために支援を募っている。

目の前で繰り返される悲劇にも怯まず、これからも「シリアのサンタ」として子供たちに笑顔をもたらすことを使命とするラミさんは「子供たちは幸せになる権利や子供らしく生きる権利もあります。だから私はここに通い続けます」と語っている。

出典:http://www.telegraph.co.uk
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)