三江通訊市場のようにラオスでは中国語を目にする機会が多い

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 東南アジア唯一の内陸国、ラオス人民民主共和国(ラオス)。同国の首都・ビエンチャンでは2016年7月24日より東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会議が開催された。そこでは南シナ海問題が取り上げられたが、開催国・ラオスなどの反対により共同声明では南シナ海問題に言及することは見送られ、この件は日本でも多くの報道機関が報じた。

 南シナ海は領有権問題を抱えており、中国、フィリピン、ベトナムなどが領有権を主張している。フィリピンは中国の領有権主張や人工島建設は国際法に違反するとして中国を相手に提訴し、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は2016年7月12日に中国の主張には国際法上の根拠がないとの裁定を下した。

 常設仲裁裁判所の裁定後に開催されたASEAN関連外相会議では南シナ海問題も議論されており、フィリピンやベトナムは共同声明に南シナ海問題を盛り込むことを要求したが、ラオスとカンボジアが強く反対した。そのため、結果的に共同声明では南シナ海問題に直接言及しなかった。

◆ラオスやカンボジアが言及を避けた理由

 ラオスやカンボジアは中国から大規模な投資を受けており、南シナ海問題の言及を避けた背景には多額の支援を期待できる中国への配慮がある。ラオスには多くの中国系企業や中国人が進出しており、ビエンチャンを訪問すると街中には中国語が目立ち、中国は存在感を強めていることが実感できる。

 中国の存在感は携帯電話業界にも浸透しており、携帯電話小売に関してはラオス資本の小売チェーンもあるが、中国人が経営する個人商店や、中国系企業が建設した市場も確認できた。

 ラオスには多くの中国人移民が流入しており、中国人移民が経営する個人商店は少なくない。中国人が携帯電話の販売を手掛ける個人商店では、英語で話しても中国語で突き通されることがしばしばあったが、金額は電卓で示して、SIMカードのプランなどはパンフレットを見せてくれるため、中国語でなくとも最低限の意思疎通はできた。

 また、ワットタイ国際空港の近くにあるショッピングモールの三江国際商貿城は中国資本の企業が建設した。その一角には三江通訊市場が占めており、携帯電話を販売する個人商店などが集合している。中国資本の企業が建設しただけに中国語がいたるところに見られ、中国の地方都市にいるのではないかと錯覚しそうになるほどだった。ラオスでは様々な分野に中国系企業や中国人が入り込んでいるが、携帯電話小売の世界も例外ではないのだ。

◆ラオスの携帯電話業界に激震

 そんな中、2016年9月にラオスの携帯電話業界に大きな動きが起きた。

 中国の京信通信系統控股は、香港特別行政区の迦福控股がラオスの携帯電話事業者であるETLを買収することを正式に発表したのだ。

 京信通信系統控股によると迦福控股とラオス政府の間で、迦福控股がETLの株式51%を9,180万米ドルで取得することで合意したという。なお、迦福控股は京信通信系統控股の関連会社であり、京信通信系統控股が迦福控股の株式49%を保有する。京信通信系統控股は迦福控股がETLの株式を取得するために、5,000万米ドルを拠出することを明らかにしており、京信通信系統控股は積極的にETLの事業に参画する方針だという。

 ETLはラオスの国営企業であり、ラオス政府がETLの株式100%を保有しているが、迦福控股との取引完了後は49%に減少することになる。

◆純国営の通信会社が消滅

 ラオスの携帯電話事業者はStar Telecom、Lao Telecommunications(LTC)、VimpelCom Lao、そしてETLの4社である。

 Star TelecomにはLao Asia Telecom(LAT)が51%、ベトナムのViettel Global Investmentが49%の比率で出資している。Lao Asia Telecomはラオス政府が所有する企業で、Viettel Global Investmentはベトナム国防省が所有するViettel Groupの国際事業を管轄する企業であり、実質的にラオス政府とViettel Groupの共同出資となる。LTCにはラオス政府が51%、タイを拠点とするThaicomの子会社でシンガポールのShenington Investmentsが49%の比率で出資している。VimpelCom LaoにはオランダのVimpelComが78%、ラオス政府が22%の比率で出資している。