北朝鮮の石炭産業は、対中国輸出が大幅に減少したことから、昨年から青息吐息だった。

一方、平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、ここ最近、中国への石炭輸出が増加に転じたという。中国の国内事情から石炭価格が上昇しているからだ。

中国政府は、数年前から大気汚染対策として質の低い石炭の国内市場への流入を防ぐため規制を強化し、北朝鮮産石炭の中国への輸出は厳しくなっていた。

さらに、国際経済の冷え込み、中国の景気減速まで加わり、石炭価格は1トン40ドル(約4100円)まで暴落した。

炭鉱を運営する北朝鮮の貿易会社は、状況を打破するため中国側の要求通りに脱硫装置を設置したり、密輸でしのいできたが、採算性は悪化するばかりだった。

しかし、数ヶ月前から石炭の輸出量は増加に転じ、価格も上昇し始める。現在では1トン62ドル(約6400円)の価格で輸出されている。中国の需要が増えれば、1トン100ドル(約1万300円)まで上がるとの見方もある。ただし、情報筋は具体的な増加量については言及していない。

価格上昇の背景には、今年8月頃から、中国の北朝鮮産石炭に対する需要が増え、当局の品質検査が緩和されたことがある。

中国政府は、大気汚染防止だけでなく過剰生産抑制の目的で、北朝鮮から輸入する石炭だけでなく、国内の炭鉱への規制も強化していた。ところが、今年の6月から7月にかけて、貴州省と山西省の4つの炭鉱が水害の被害に遭い、生産量が減少したため、石炭価格が上昇していた。

そのため、中国の業者は比較的価格の安い北朝鮮産石炭に目をつけ、購入量を増やし、価格が上昇したというのだ。

冬が近づくにつれ、中国市場での石炭の需要は高まるため、短期的には北朝鮮の利益になると見られる。

平安南道の別の情報筋によると、南浦(ナンポ)港と松林(ソンリム)港に向かう高速道路には、1日に数百台の30トントラックが石炭を満載して往来しているという。

石炭需要の高まりに伴い、道内の炭鉱地帯には一攫千金を狙ったトンジュ(金主、進行富裕層)が集まり、彼らをターゲットにしたレストランやレジャー施設などでは料金の上昇が起きている。

石炭の輸出が順調に進めば、経済制裁で困難に直面していた北朝鮮当局の統治資金の調達も円滑になるとの見方がある。

しかし、その一方で石炭価格の上昇は北朝鮮庶民の懐を直撃している。一部の炭鉱は、採掘した石炭のすべてを輸出に回すため、国内需要を満たせなくなっているからだ。

庶民の間からは「越冬用の石炭を買おうにも高くて買えない」との声が上がっている。高騰する石炭の代わりに、薪を使う人が増えれば、北朝鮮で慢性的な問題となっている森林破壊へとつながりかねない。

このような状況はいつまで続くのだろうか。

中国政府は、石炭生産量の調整を一部緩和し、国内での供給量が落ち着きを見せたことから、石炭価格は下落に転じるとの見方が支配的だ。

一方で、中国政府は安全設備の整っていない炭鉱の閉鎖を進めており、中長期的には北朝鮮産の石炭の需要が増すとの見方もある。