金正恩氏

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北朝鮮当局が外貨を獲得するために、国際保険金詐欺を行っていたのではないかとの疑惑が浮上している。カモにされたのは、外国の再保険会社だ。

韓国のKBSによれば、英国政府は最近、対北朝鮮制裁の一環として自国内にある北朝鮮国営の保険会社の支社を閉鎖する措置を取り、職員2人を事実上国外追放した。

阿鼻叫喚の悲劇

閉鎖されたのは北朝鮮国営の「朝鮮民族保険総会社」(KNIC)のロンドン支社。同社は、金正恩政権の資金を管理する朝鮮労働党39号室との関連が指摘されており、核兵器やミサイル開発の資金源となっていたとの判断によるものだ。

KBSはさらに、KNICが詐欺的な手法で、海外の保険会社から保険金をだまし取っていたと報じている。

北朝鮮当局は、国内のすべての工場、企業所をKNICの保険に加入させ、外国の保険会社に再保険をかけた。同社はその上で、災害や事故による被害を報告し、保険金を請求を行った。

KBSが一例として挙げたのが、2006年7月に平安南道(ピョンアンナムド)で発生した水害だ。KNICは、この水害で多くの財産、人的被害が発生したとして外国の再保険会社に保険金を請求したという。

しかし、筆者も繰り返し指摘してきたことだが、北朝鮮の大規模事故や災害の深層には、必ずと言って良いほど「人災」が隠れており、それが阿鼻叫喚の悲劇を拡大させているのだ。

(参考記事:北朝鮮、橋崩壊で「500人死亡」現場の地獄絵図

だから本来は、再保険会社が保険金を負担せずとも良いケースもあったはずだ。

実際にこの再保険会社は、報告された被害規模に疑問を持ち、現地入りして調査を行うことを要求した。

ところが、北朝鮮当局がこれを拒否したため、保険金を払わざるを得なかった。被害の算定は北朝鮮の裁判所の判断に従うという契約条項があったためだ。2006年の一件でKNICが得た保険金は4230万ドル(約42億7000万円)に及ぶ。

それ以外にも、2006年には旅客船が沈没したとして600万ドル(約6億円)、2005年にはヘリコプターが墜落したとして5800万ドル(約58億6000万円)、1996年には渇水による被害が発生したとして1億3000万ドル(約131億3000万円)の保険金を得た。その総額はわかっているだけでも2億8000万ドル(約282億8000万円)に達するというのだ。

再保険会社は契約を結ぶ前に、脱北者情報などから、北朝鮮の災害・事故の実態をつぶさにリサーチすべきだった。

また、聯合ニュースによると、KNICは2008年、保険金の支払いを拒否したヨーロッパの再保険会社を相手取り訴訟を起こし、3920万ユーロ(約44億7000万円)を勝ち取っている。これが上記の2億8000万ドルに含まれるかどうかは定かではない。

北朝鮮は今年8月、台風10号(ライオンロック)の影響で北東部を中心に甚大な被害を被っている。しかしさすがに、外国の再保険会社も学習している。それにKNICのロンドン支社が閉鎖されたとあっては、今回の災害に関する保険金の獲得は困難になったと思われる。