昨年はひとり1秒、合計タイムでわずか10秒差が明暗を分けた箱根への道。果たして、今年はどんなドラマが待ち受けているのか。

 第93回箱根駅伝予選会が10月15日(土)に東京・立川市で行なわれる。第92回大会で10位までに入った青山学院大、東洋大、駒澤大、早稲田大、東海大、順天堂大、日本体育大、山梨学院大、中央学院大、帝京大には本戦出場のシード権があり、残り10の出場校が今回の予選会で決定する。

 レースは例年通り、陸上自衛隊立川駐屯地から国営昭和記念公園までの20kmを、各校10名以上12名以下の選手が駆け抜ける。上位10位までに入った選手の合計タイムで出場権を争うことになるのだが、「今年は昨年以上に僅差の戦いになるのでは」と予想されている。

 トップ通過の候補は、有力な留学生を擁する日本大と拓殖大だ。

 日本大は、昨年の予選会と今年6月に行なわれた全日本大学駅伝の関東学連選考会をトップで通過。トラック種目で数々のタイトルをさらっているパトリック・ワンブィ(2年)をはじめ、前回の予選会経験者が8人も残っていることも大きい。9月上旬の日本インカレ5000mでは、ワンブィと主将の石川颯真(4年)がワン・ツーを飾っており、Wエースが大きな貯金をもたらす可能性は高い。

 拓殖大も、前回個人総合2位のワークナー・デレセ(2年)に安定感が増しており、主将の宇田朋史(4年)、馬場祐輔(2年)ら日本人選手も充実。ロードに滅法強いチームだが、今年は1万mで争われた全日本選考会を4位で突破するなど、トラックでも結果を残している。

 ほかにも、國學院大、大東文化大、神奈川大、城西大、明治大の5校は「通過濃厚」と見ていい。

 國學院大は前回の予選会でまさかの敗退となったが、今季は全日本選考会を6位で突破するなどチームを立て直してきた。選手層は厚く、予選会の戦いに不安は少ない。大東文化大も全日本選考会を8位で通過。トラックの持ちタイム以上に粘り強さを発揮するチームで、今回も堅実なレース運びを見せるだろう。

 予選会の走り方を熟知している神奈川大は、エース鈴木健吾(4年)がタイムを稼ぎ、ほかの選手は手堅くレースを進めるはずだ。城西大は前回の箱根駅伝で総合12位。そのチームから卒業したのは2人だけで、総合力は高い。明治大は藪下響大(4年)、坂口裕之(2年)ら有力選手がそろい、トラックの持ちタイムは予選会トップクラス。8年ぶりの予選会に戸惑うかもしれないが、戦力的には余裕がある。

 ここまで挙げた7校が順当に予選を通過すると仮定すれば、残りの枠は「3」。そこに、国士舘大、東京国際大、創価大、専修大、法政大、上武大、東京農業大、中央大、亜細亜大など、本戦を何度も経験している大学が「狭き門」を目指す。

 このなかで勢いがあるのは国士舘大。前回の予選会は10秒差の次点に泣いたが、今季は全日本選考会を6年ぶりに突破するなど、リベンジを果たす準備は整っている。

 一方、逆の意味で注目されているのは、箱根駅伝で最多14度の総合優勝を果たしている中央大だ。88回連続、91回目の本戦出場を目指す名門が、かつてないほど予選会敗退の危機に陥っている。

 その最大の理由は選手層の薄さにある。青山学院大、明治大などの台頭で選手勧誘が難しくなり、新入生のレベルが徐々に低下。そのうえ、スポーツ推薦で8人が入部した現在の3年生は、藤原正和駅伝監督が指揮を執ることになった今年3月までに4人が退部し、1人がマネージャーとなった。全日本選考会ではエース町澤大雅(4年)を欠いたこともあって、20チーム中17位。3組終了時まで予選通過圏内にいた神奈川大と創価大が最終4組で途中棄権したため、実質は19位と「過去ワースト順位」だった。

 前キャプテンがケガの影響でチームをうまく引っ張ることができず、上級生を中心に戦う意識も欠けていた。そこで藤原監督は、全日本選考会後に主将と副将に1年生の舟津彰馬と田母神一喜を大抜擢。チームに緊張感を与え、「2〜3年でシード権、5〜6年で3位以内、10年で優勝を目指したい」(藤原監督)という中長期的なプランを視野に、伝統校に改革をもたらしてきた。後輩たちにいいバトンを渡すため、予選会にエントリーした6人の4年生も意地を見せたいところだ。

 予選会突破のためには、エースがどれだけ貯金を作れるかがカギとなる。中央大でその役割を期待される、前回の予選会で個人総合15位(59分55秒)に入った町澤にとっては、同じく60分を切った同2位のデレセ(拓殖大)、同3位のシテキ・スタンレイ(東京国際大・3年)、同9位の鈴木(神奈川大)、同12位の足羽純実(法政大・4年)の4名がターゲットとなる。スピードはワンブィ(日大)がナンバー1で、ほかにもムソニ・ムイル(創価大・1年)、サイモン・カリウキ(日本薬科大・2年)ら出場が有力視される留学生の爆発力にも注意しなくてはならない。

 もちろん、上位の選手だけでなく、各校8〜10番目にフィニッシュする選手の順位も大きなポイントになる。集団走など「チーム戦略」で勝負する大学もあり、箱根駅伝の予選会は独特の戦いが展開される。大混戦の予感漂う今回は、どんな結末が待っているのか。学生ランナーたちの「もうひとつの箱根駅伝」から目が離せない。

酒井政人●取材・文 text by Sakai Masato