9月24日にボスニア・ヘルツェゴビナのモスタルで行われた「レッドブル・クリフダイビング・ワールドシリーズ 2016」第7戦で、華麗にダイビングするミハル・ナヴラティル(チェコ)/Romina Amato/Red Bull Content Pool

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10月15日(土)・16日(日)の2日間、和歌山県にある三段壁でエクストリームスポーツ「レッドブル・クリフダイビング」が日本で初開催される。高さ約28mの飛び込み台から、海や川に向かってダイブする究極のハイダイビング競技だ。

【写真を見る】ど迫力!2013年のワールドシリーズ王者でワールドシリーズ最高得点記録保持者のアルテム・シルチェンコ(ロシア)のダイブ/Dean Treml/Red Bull Content Pool

想像してほしい。8階立てのビルの高さからダイバーたちが次々に水面へと飛び込む様を…ちょっとクレイジーなスポーツである。しかもただ飛び込むだけではない。例えば、直近7年間のワールドシリーズを5回制覇しているダイバー、ギャリー・ハント(イギリス)は、着水までのたった3秒間で、4回ひねり後方3回転のダイブを繰り出す。あまりに速すぎてすべての動きを目で追うことはほぼ不可能!

■ 奇想天外!世界遺産の橋からも迷わず飛び込む

日本大会を直前に控えた9月末、ボスニア・ヘルツェゴビナのモスタルでワールドシリーズ第7戦が開催された。この地では約450年間に渡って高所からダイブすることが伝統として受け継がれているそうで、同競技にうってつけの開催地だといえる。太陽の光を受け、エメラルド色にキラキラと輝くネレトヴァ川。「スタリ・モスト」(世界遺産に登録されている橋)から優雅に力強く飛び込むダイバーたちの姿に2万人を超える観客が酔いしれた。

43歳になった今もトップレベルで現役を続ける同競技の第一人者、オーランド・デュケ(コロンビア)はクリフダイビングの魅力についてこう語る。「とにかく高いところから落ちる爽快感がすばらしい。オレは幼少のころから落ちることが大好きだったんだ(笑)。さらにすべての大会でロケーションが異なるから、ものすごく調整が難しい。だからこそ、チャレンジしなければならないことに面白みがある。安定した環境のプールに飛び込むわけじゃないからね。常にある程度の恐怖心を持ちながら競技しているよ」。

■ 一瞬でも気を抜いたら全身あざだらけ!

着水時の衝撃は桁違い。最高速度90km/hに至るまでの加速度はなんと5G。その衝撃は人間が全速力でコンクリートの壁にぶつかるのとほぼ同等である。着水する瞬間に少しでも体勢を崩せば、全身にあざができてしまうほどの痛みが襲う。

前出のギャリーによれば、「ほんのわずかでも傾きがついた状態で着水すると、あざができて数日は痛みが取れない。キックボクサーが蹴られて耐性がついていくのと同じで、僕らもあざを作りながら強くなっているんだ。初めて失敗したときは全身あざだらけになって大変だったよ(笑)。でも、経験を積んで、垂直に正しい姿勢で着水できるようになるとほとんど衝撃を感じないんだ」とのこと。当たり前だが、ダイバーは一切の防具をつけていない。ダイビングの経験で培った自身の能力のみが、ケガを回避する唯一の術だという事が分かる。

アクロバティックなダイビングはもちろんだが、飛び込み台でのダイバーたちの立ち居振る舞いにも注目してほしい。観客を煽る者、自分の世界に入って静寂を作り出す者…飛び込む瞬間に向けて集中を高める方法はダイバーそれぞれ。単なる競技を超えたエンターテインメントとしての一面も感じられるはずだ。

■ 百戦錬磨のダイバーたちの夢。いつか飛び込んでみたいのは…えっ!!!

最後にオーランドとギャリーに同じ質問をぶつけてみた。「崖、城壁、橋…これまでにもあらゆる刺激的なロケーションで飛び込んできたと思うけど、いつかここで飛んでみたいなって場所はある?」。すると、「南極の崖!最高にクールだと思わない?」とまったく同じ答えが2人から返ってきた。やっぱりとんでもなくクレイジーな男たち…。

モスタルで行われた第7戦は男女合わせて22名のダイバーが競った結果、男子はミハル・ナヴラティル(チェコ)、女子はライザン・リチャード(カナダ)がともに今季2勝目を挙げて幕を閉じた。

来る10月15日(土)・16日(日)、和歌山県・三段壁で開催される日本大会で“王者”ギャリー・ハントの逆襲はあるのか?インターネットテレビ局「Red Bull TV」でも生放送されるので、その迫力をぜひ体感してほしい。【ウォーカープラス編集部】