映画『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』:ふたりの天才が築いた愛憎の絆

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作家トマス・ウルフと名声に迎合していく編集者の絆を描く。

それは、雨降る灰色のニューヨークの街に足を踏み鳴らしながら立つアメリカ南部文学者にして後のベストセラー作家トマス・ウルフ(ジュード・ロウ)が有名出版社スクリブナーズのビルを見つめている時かもしれない。わざとらしく暗いオフィスで原稿に赤ペンを走らせるマックス・パーキンズ(コリン・ファース)がデスクの上にドサッと置かれたやけに分厚い原稿を見つめる時だったかもしれない(ニューヨーク中の出版社でボツになった傑作で、イ世ユニークだイ犯爐亙垢される)。いや、多分それは、今のままでは価値を持たない紙の束の出版を引き受けた20世紀の出版業界の神が本のタイトルの重要性をウルフに説く時だ(イ劼蕕瓩い拭イ僚峇屬魘瓦鵑任凌靴靴ぅ織ぅ肇襦愿兄箸荼龍燭鮓よ』)。

しかし、俳優出身の監督マイケル・グランデージが描く、ふたりの巨匠の仕事上の関係の本質を露わにするドラマで、ここぞという瞬間を指摘できなくても心配無用だ。個人的にイ海海澄イ隼廚瞬間がなくても、いずれ動かしがたい事実に直面することになる。これは、ふたりの才能ある複雑な男たちを深く掘り下げる映画ではない。これは、ピュアでシンプルなblatant Shmoscarbait(見え透いたバカどものオスカー狙いの超大作)イ髪い鯑Г狢緤で、おもしろくなる前に嫌気が差してしまうだろう。

ご覧の通り、お膳立てはバッチリだ。スコット・バーグが全米図書賞を受賞したパーキンズの伝記を一流の脚本家(ジョン・ローガン)が脚色し、またとない大スターたちをキャスティングした。正しい材料を揃えたからといってレシピ通りうまいものができ上がるとは限らないが、ロウの気性の激しい田舎者の演技に嫌気が差す前に早くも失敗の足音が聞こえてくる。どのシーンもイ翰いただいているのは一流の時代映画ですイ閥んでいるようだ。どのやりとりを見ても本質を露わにしたりふたりの左脳と右脳のパートナー関係を掘り下げたりしていないし、くさいセリフと虚勢を吐く言い訳にすらなっていない。事あるごとに有名作家カラオケ大会じみてくる(F・スコット・フィッツジェラルドがガイ・ピアース!アーネスト・ヘミングウェイがドミニク・ウェスト!)。助演女優はみんな生焼けか血も滴るレアな状態だ(ローラ・リニー演じるパーキンズの愛すべき妻は優しい内助の妻をしているかセ劼匹發燭舛呂匹Δ覆襪痢!イ箸錣瓩い討い襪で、ウルフに振られる恋人で応援者であるニコール・キッドマンに要求されたのは激しさと冷淡さを身振り手振りで表現することだ。ふたりとももっとうまくやれたのに)。

映画が思いがけず劇的におもしろい展開を迎える時でさえも、そんな些細なことを葬り去ってしまいたいという誘惑に抗えそうにない。ウルフの長編第2作『時と川の』の長く説明的な一節に苛立ち、ウルフとパーキンズは何を残すべきか、何を削るかについて議論する。一方はすべての動詞が重要だと考え、一方はよりシンプルで明瞭な文体を求める。ファースとロウは結局ギブ・アンド・テイクの緊張感というリズムにはまり、交渉が成立し、そしてついに、映画はkill your darlings(愛するものを殺す)イ箸いΨ歃僉△垢覆錣訴埆犬鯊える。そして、友を乗せた電車が離れていく時、ロウが「愛してるぞ、マックス・パーキンズ!」と誇張されたノースカロライナ訛りで叫び、スコアのストリングスが流れる。これは、自己愛の混乱に埋もれた天才の発掘を描いた映画だそうだ。医者よ、汝自身を癒せ。(訳注:kill your darlingsイ蓮ソ颪ことは書き直すことイ箸いΠ嫐。作家ウィリアム・フォークナーの言葉とされる)

『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』

監督/マイケル・グランデージ(初監督)
脚本/ジョン・ローガン『007 スペクター』
出演/コリン・ファース、ジュード・ロウ、ニコール・キッドマン、ローラ・リニーほか
10月14日(金)より全国順次公開
http://best-seller.jp/