無人自律航行が可能な船を開発したり、極小チップを脳に埋め込むPTSDのインプラント治療法の研究を進めたりしているアメリカの国防高等研究計画局(DARPA)が、四肢麻痺の人の脳にチップを埋め込みロボットアームと接続し、ロボットアームを触れると被験者も指に触られた感覚を感じるという実験を成功させました。

※以下のムービーおよび記事中には脳にマイクロチップを埋め込む手術の様子が映っています。苦手な人は注意が必要です。

Providing a Sense of Touch through a Brain-Machine Interface - YouTube

Intracortical microstimulation of human somatosensory cortex | Science Translational Medicine

http://stm.sciencemag.org/content/early/2016/10/12/scitranslmed.aaf8083

Brain chips let a paralyzed man feel touch through a robotic arm - The Verge

http://www.theverge.com/2016/10/13/13269824/brain-implant-chip-feel-touch-robot-arm-paralyzed-tetraplegia

今回の実験はDARPAが支援するピッツバーグ大学の研究チームによって行われました。



被験者のネイサン・コープランドさん。コープランドさんは交通事故により首を損傷し、両手両足が麻痺しています。



コープランドさんは脳にチップを埋め込むべく手術を敢行。これは完全なボランティアで行われたとのことです。



手術は大脳の外側面にある脳回の1つである中心後回に2つのマイクロチップを埋め込むというもの。中心後回は、体の部位から皮膚感覚といった体性感覚の入力を受け取る領域です。クリック後の画像はぼかしを入れていないので、脳にどのような状態でマイクロチップがうめこまれているのかがわかります。



中心後回に埋め込まれたマイクロチップはケーブルで直接ロボットアームに接続。ロボットアームの指先には触覚センサーが埋め込まれています。





コープランドさんが目隠しをした状態で実験開始。ロボットアームの親指を触ると、コープランドさんは「親指」と返答し、小指を触ると「小指」と答えていきます。20回のテストでコープランドさんは触られた指を全て正確に答えることができました。つまり、ロボットアームの指を触った感覚がマイクロチップを介してコープランドさんにも伝わっているということです。



触覚センサーが受け取った電気信号がケーブルを介してマイクロチップに伝えられ、それを中心後回が正確に受け取っているとのこと。



コープランドさんは今回の実験を承諾した理由を「なぜなら、私しかできないからです。そして誰かがする必要があります」と話しています。



「ネイサンは10年前の交通事故で首から下が麻痺してしまいました。肩を少しだけ動かせますが、手の指は全く動かすことができません」と語るのは、実験を率いたロバート・ゴーント博士。



「何かに触れる感覚というのはとても重要な感覚です。これがないと腕や足を動かすことは本当に難しい。特に手、指の感覚というのはありとあらゆる日常の場面で必要になります」



エリザベス・タイラー・カバラ博士は「私たちが一番心配していたのは『脳にマイクロチップを埋め込む』ということです。埋め込む手術をする前には長い間かけてさまざまなデータを集め、手術が成功するかどうかの研究や実験、ミーティングを数多く重ねました。手術の前には参加する医師全員が責任を負うための同意書にサインしました」と話しています。



「とても不思議な感覚です。触られた感覚は、電気的な刺激だったり、本当に皮膚が押されているいるような感じだったりしました」と実験後に語るコープランドさんはうれしそうな表情を見せていました。



DARPAとピッツバーグ大学は以前にも脳とロボットアームを接続して、アームを自在に動かす実験を成功させており、今回の実験はそれの延長線上にあるものです。