−273℃でも100℃でも死なない地球上最強の生物!?「クマムシ」の生態について専門家に聞いてみた!

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突然だが、皆さんはクマムシについてどのくらいご存じだろうか?クマムシは、「最強生物」と名高い動物。「教えて!goo」の「クマムシは一体、どんな生活をしているのでしょうか?」という質問には、「何をしても死なない虫となっていましたね。でも、2ヵ月くらいしか生きないそうです」(noname#17469さん)などの回答が投稿されている。余談だが、「あったかいんだからぁ♪」のリズムネタで一躍有名となった芸人「クマムシ」のコンビ名は、この耐性能力のスゴさにあやかって命名されたらしい。一体、なぜクマムシは最強生物と呼ばれているのだろうか? 専門家に解説していただこう。

■東大生物学者が解説するクマムシの生態とは

話を伺ったのは、東京大学助教・極限環境生物学者の國枝武和さん。「くまむし研究グループ」のメンバーで、クマムシに関する論文や講演、書籍など多くの活動をしている。

「クマムシ類は4対(8本)の脚を持つ小さい動物で、これまでに約1200種が知られています。クマムシだけで緩歩動物というグループを形成しており、昆虫やエビ・カニなどと近縁ですが、別のグループになります」(國枝さん)

ムシというからてっきり昆虫の仲間かと思っていたが、意外にも違うようだ。

「クマムシは卵から生まれます。卵から孵化した時から成体と同じ形で、脱皮しながら大きくなります。ある程度大きくなると卵を生みます。卵は脱皮する殻の中にまとめて産むタイプと、外にバラバラと産むタイプがいいます。卵は基本球形で直径はだいたい大人の横幅と同じくらい(40〜50ミクロン=0.04〜0.05mm)なので、大人のサイズの割に大きな卵を産みます。外に産むタイプの卵は表面に多数の突起をもち金平糖のような形をしていることが多いです」(國枝さん)

クマムシはとても小さく、大人でも体の横幅が0.04〜0.05mm、体長も1mmほどしかない。雄と雌の区別はあるのだろうか。

「人間と同じように雌と雄が分かれている種のほかに、両性具有(雌雄同体)や雌だけの種がいます。雌雄同体や雌だけの種は、1個体が生き残れば子孫を残せるので、過酷な環境に生息するのに適したシステムといえるかもしれません」(國枝さん)

単体でも子孫を残せるというクマムシ。いよいよ、その強さの秘密に迫ってみよう。

■“レンジでチン”しても死なない!?

すべてのクマムシは、基本的には水の中に棲んでいるという。

「陸生種と呼ばれる種類は、雨が降った時にできるコケの上の水膜や土の中の間隙水の中で生息しています。こうした環境は頻繁に乾燥してしまうため、陸生種の多くは自分自身が乾燥しても大丈夫な仕組み(乾眠)を備えています」(國枝さん)

この乾燥状態が、地球上最強と呼ばれる由縁。乾燥状態であれば、なんと−273℃から100℃、真空、超高圧(75,000気圧)、電子レンジ、ヒトの半致死量の1000倍の放射線照射に耐えた例が報告されているのだそうだ。まさに無双状態!

「一部の種は宇宙空間に10日間曝露されても問題ありませんでした。注意してほしいのは、こうした耐性は基本的には乾燥状態の時だけに限られるという点です。このため乾燥に耐える能力を持たないクマムシは耐えることができません」(國枝さん)

乾燥状態ではクマムシの生命活動は基本的にすべて止まっていて、まったく動きがないとのこと。

「さまざまな環境に耐えられはしますが、そのままでは成長もしませんし、繁殖することもありません。生命というよりはいわば物質の塊として極限的な環境に耐え、その後に水をかけることで生命活動を復活できると考えるのが妥当です。生命活動を一時的に止めることができるというのはそれだけでも驚きですけどね」(國枝さん)

そのため、乾燥している間は寿命にはカウントされないのだそうだ。

「寿命は種によって随分異なり、短いものでは1ヵ月程度、長いものでは1年を超える例も報告されています。おもしろいのは、乾燥している間は寿命に入らず、水の中で生きている期間が寿命に達すると死ぬという報告があります。乾燥している間はクマムシにとって何も起こっていないのと同じなのだと思われます」(國枝さん)

乾眠(乾燥)のメカニズムは謎が多く、解明することでヒトの耐性能力を向上させることも期待されているのだとか。生命活動を停止することで、どんな環境にも耐えうる能力を発揮する――。成長も退化もしない物質の塊は、果たして生きているのか死んでいるのか。クマムシの神秘的な生命力は、未だベールに包まれている。

(酒井理恵)

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)