「バキュームカーは臭い」という常識はすでに過去のものになりつつある? (※写真はイメージ)

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 先月末、チョコレート好きの間に激震が走った。衛生車(バキュームカー)製造の東邦車輛や紡績大手のシキボウなど4社がバキュームカーから出る不快な臭いを何とかしようと開発した潤滑油について、全国紙が「チョコレートのような甘い香りに」などと伝えたからだ。

〈チョコを食べるときバキュームカーを連想して、食べられなくなる〉〈なぜわざわざチョコの匂いに決めたのか〉

 などと、インターネット上では悲鳴や批判が沸き上がった。本当ならばゆゆしき問題だろう。真相を確かめるべく、まず製品の開発を担当したシキボウに尋ねた。なぜ、チョコの香りにしたのか。

「あくまでも糞便臭をどうしたら良い香りになるか試していった結果、いまの香りになりました」(広報)

 と、最初から意図して現在の香りを作ったわけではないと説明する。さらに続けてこう語る。

「私どもからチョコレートなどの具体的な食品名をあげて匂いを表現したことはありません。甘く芳ばしい香りです。ただ、匂いの感じ方は人それぞれですので、チョコの香りと感じる人の感覚まで否定できませんが……」(同)

 ならば、記者がその香りを体験しようと、製品の販売を担当する東邦車輛などの案内で、製品を使用する事業者のもとへ。まずは潤滑油だけの匂いを嗅ぐ。

「甘い!」

 ほのかにイチゴチョコレートのような香りがしなくもない。次にバキュームカーによる汲み取りをしてもらい、悪臭に製品を混ぜて排気。排気口の十数センチのところまで顔を近づけた。

「甘い!」

 が、甘い香りにキッチンの排水口から出る嫌な臭いが混じったような香りだ。実際は、バキュームカーの臭いがチョコレートのいい香りに変わったとは言い難かった。

 大手製菓会社でチョコレートの商品開発を担当する社員はこう明かす。

「チョコレートのカカオの香りを人工的につくることはすごく難しいのです。いろいろな調査で大半の人がチョコレート好きだったことがわかっていますから、各香料メーカーさんも人工的にチョコの香りをつくろうとかなり努力しています。それでも本物とは異なるのが現状です」

 安心してください。チョコレート好きの皆さん。バキュームカーとチョコの香りは結びつきそうにありませんよ。

週刊朝日 2016年10月21日号