患者がミイラ男でも、きっと大丈夫(イラスト・サカタルージ)

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虫に刺されたり、湿疹を起こしたりして猛烈にかゆくなる経験は誰にでもある。しかし、かきすぎると皮膚がボロボロになり、かえってひどいことになる場合が多い。

ところが、かゆい場所を直接かかなくてもかゆみが治まる魔法のような方法があるのをご存じだろうか。

鏡を見ながら、かゆい場所の反対側をかくと...

かかなくてもかゆみが和らぐ画期的な方法を発見したのは、ドイツ・リューベック大学の神経学者クリストフ・ヘルムヒェン博士だ。2016年9月22日に発表された、人々を笑わせ、考えさせる研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」医学賞を受賞した。「イグ・ノーベル賞」といえば、同じ日に立命館大学の東山篤規教授らが「股のぞき効果」で知覚賞を受賞し、話題になったばかりだ。

方法はとても簡単だ。「鏡を見ながら、かゆい場所の反対側をかくと、あたかもかゆい場所をかいているように錯覚し、かゆみが治まる」というもの。この研究は、2013年12月26日付の科学誌「プロスワン」(電子版)に発表された。その論文によると、ヘルムヒェン博士は対象者たちの右腕の前腕部に人工的にかゆみを起こさせ、2つの実験を行なった。

第1の実験では、右腕と左腕の間に鏡を垂直に立て、左腕が写るようにした。そして対象者に実際にはかゆくない左腕をかかせ、鏡を通して右腕をかいているように見えるようにした。すると、本当はかいていない右腕のかゆみが和らいだ。

第2の実験では、対象者の両腕をビデオカメラで撮影し、対象者に両腕がカメラの映像で見えるようにした。映像はリアルタイムで反転し、対象者には左右の腕がそのまま見えたり、逆に見えたりするようになっていた。そして、対象者に腕をかかせると、実際はかゆくない左腕をかいた場合でも、右腕をかいているように見える映像の時には、かゆみが軽くなった。

ギブスや包帯でかけない時に便利

いずれの実験でもかゆい場所をかいているように見える時は、かゆみが治まるように感じるのだ。これは、かゆみは脳が感じるためで、脳に視覚(かゆい個所をかいているように見える)と触覚(腕の表面をかく行為)の2つの錯覚が重なることによって起こる効果だという。

ヘルムヒェン博士は、この劇的な効果を「ミラー・スクラッチング(鏡のひっかき効果)」と名づけ、論文の中でこう語っている。

「脳に錯覚を起こさせると、かなりかゆみを緩和できることがわかりました。皮膚の病気でかゆみが長く続く場合や、かくと皮膚が傷つく場合などの代替治療として大きな効果を上げると思います」

かゆい部分を直接かかなくても、かゆくなくなるということは、例えば、ギブスや包帯で傷口が覆われ、かきたくてもかけない時などに便利かもしれない。